第1-5話
翌朝…
『結局なんにもなかった…眠い…』
欠伸をしながら朝ごはんのキューブを食べるダバ。
傍らには厩務員の女の子が居る。
「え?アンタ寝てないの?」
『少しは寝たよ。でも気になって熟睡は出来なかったよ』
女将らしき人の言葉でフラグが立ったと勘違いし、夜通し警戒していたのだ。
「呆れた忠誠心ね。そこまでホレたの?」
『そんなんじゃねーけど、やっぱ心配だろ?女性一人だと』
「馬にしとくのは勿体無いね…でも少しはウチの宿を信用して貰いたいな」
暗に安全性に欠けると捉えられた。
『や、これで安心したよ。また使う時は熟睡出来るよ』
今日だけかも知れないが、とりあえず安全な宿だと確信できた。この世界の治安もそこまで悪くない。
「その時はよろしくね♪そうなると…また来てもらうために、少しサービスしてあげよっか!」
『ん?サービス?』
なんスかなんスか!?エロいサービスッスカ?馬にもしてもらえるんスカ?
wktkなダバを尻目に、女の子はニマニマと笑顔で道具を取りに行く。
「ジャーン!!!」
ドヤ顔で効果音を口で出しながら、両手に持つのはブラシ。
『毛繕い?エロエロサービスじゃなくて?』
心底ガッカリな顔をして気落ちするダバ。
「顔がキモい!アンタ馬でしょ!人型になれるなら…ね♪」
呆れた顔から一転照れ顔。免疫ない男なら堕ちるぞこれ。
『お、おぉ…』
若干戸惑うダバ。『いやしかし…だが…恥をかかす…』と言い訳をブツブツ言っている。
「ほら、大人しくして。ブラッシングしてあげるから」
先ずは固めのブラシで表皮の汚れを落とす。少し強めにやっても問題ない。
『あぁ〜気持ちえぇ〜♪』
だらしない顔になっている。
「手入れされてないわねー。折角の毛並みが勿体無いわよ?」
ジアンス種は鬣の毛並みが半端なく良いのだ。中でもエルくんはスキルで長さ、強度を調整出来るが、他の馬は基本そのままだ。馬同士の集団では手入れも出来ない。厩務員が言うのは、飼っている馬の事だ。
『リーヴァに頼むかなぁ…それにしてもこんなに気持ちいいなんて』
まさに至福のマッサージだ。
「それだけ喜んでもらえたら、何よりだわ。さて、仕上げよ!」
今度は柔らかめのブラシで仕上げていく。不要な体毛は固めのブラシで排除してあり、艶のある体毛を柔らかめのブラシで整える。
「うわっ…凄っ!」
『え?』
正に黄金色に輝く体毛。以前の栗毛の色より遥かに輝きを増している。その毛色は思わず見とれてしまうほどだ。決してだらしなく出ているアレを見た訳では無い。
「素晴らしい毛色と毛並みだね。惚れ惚れするわ♪」
『ありがと。君のおかげだよ』
顔を寄せてスリスリしてみる。女の子も嬉しいようで朗らかな時が流れる…が、その空間をぶち壊すかの如く、リーヴァが仁王立ちしていた。
「ほぉ〜、一晩離れただけで浮気ですかこの野郎!」
鬼の形相のリーヴァ。
『え?いや、違うから、これはなんて言うか…お返し?』
焦りまくるダバ。
「あ、お客さん。この仔良い馬ですね」
うっとり顔の女厩務員。火に油を注ぐとはこの事だ。
「こ〜〜〜〜の女ったらしが!!!!」
リーヴァの右パンチが炸裂!しかもグーパン!
『ごっ!』
誤解だ!と、言いたかったのだろうが、言い訳も虚しく鉄拳制裁。
「悪かったわよ…ごめん」
頭を下げるリーヴァ。事情は女厩務員が説明してくれた。
「お客さんも手が速いですね」
フフッと笑顔を見せる女の子。ダバが殴られた後、手当もしていた。
『ありがとな。助かるよ』
少し口を切ったようだが、問題はなさそうだ。それにしてもリーヴァの嫉妬?気性は、かなり沸点が低そうだ。以前にも気絶させられた事を思い出す。
(怒らさない様気をつけよう…)
「何よ!?」
『何でもないよ。それより一晩大丈夫…だな』
会うなりグーパン出来るぐらい元気なのだから、問題ないだろう。
「ふぅー、何もなかったわよ。心配しすぎじゃない?少しは信頼してもらいたいわね」
「そーよねー。ウチの宿ってそんなに不安なのかしら…」
『いや、宿に不安があるって言うか、何かあって後で後悔するのが嫌だからさ……出来ることはしておきたいんだ。人型では無いオレに出来ることって少ないだろ?』
「はぁ〜〜、お客さんにベタ惚れですな〜。妬けまね〜。はいはい。わかりました!邪魔なのは私ね。邪魔者は去りますから後はご自由に♪」
失礼しましたーとばかりに去って行く厩務員。
「まったく…」
ブツブツ言いながらも悪い気はしていないリーヴァ。大事にされていると思えば気分もいいものなのだ。
「それにしても、こんなに綺麗な毛色してたのね…確かにこれは勿体無いわ」
マジマジと鬣と毛色を見る。
『親父達も確か綺麗だったなぁ。どうやって維持してんだろ?』
馬同士で毛繕いも無いだろうし、謎だ。
『ま、毛並みの事は置いといて、出発の準備は出来たのか?アイツら迎えに行かなきゃな』
「そうね。準備の方は出来てるわ。会計済ましたら出ましょうか。あ、でも荷物が多いか…」
エルくんが運んでた荷物が多分にある。
『じゃー、先に迎えにいくか?』
「そうね。女将さんに言っている」
暫くして、ダバ達は村の外へ出ていた。
『そろそろかな?』
セツラン達を迎えに来たのだが、まだ姿が見えない。
「あ、アレ……なの?」
『ん?…………んんんん???』
果たして二人が見たものは?
読んで頂き感謝(´・∀・`)




