第1-3話
それから数日が経ち、一行は旅路の途中村に立ち寄った。
首都アルフレイム迄はもう少しかかるため必需品の補充も兼ねての骨休めだ。
「うーーーん。今日は久しぶりのベッドだ!」
一人喜ぶリーヴァ。
当たり前だが馬にはベッドなんてものは必要無い。
『どうする?オレ達は村の外で放牧されててもいいけど』
リーヴァ一人を置いていくのは少し心配なダバ。
リーヴァはしっかりしているが、そこまで戦闘が強くない。女性一人だとこんな時に不安になる。
「大丈夫よ。宿の防犯もしっかりしてるし、他の女性客も多いし」
ダバの馬面を撫でながら答える。
「よく懐いている馬だね。主人が心配なのかい?」
その傍ら、宿の女将らしき人が声を掛ける。
「あ、はい。離れるのが心配なようで…」
「大丈夫だよ!わたしの宿で不埒な事はさせないから!」
ドン!と胸を貼る女将。
(んー…フラグ臭いからなぁ…)
『とりあえずオレだけ残るわ。あとの三頭は自由にさせて』
「あらー!しっかり喋れるのねアンタ!魔獣の一種かい?」
「ええ、ジアンス種のダバって名前なの」
『よろしくな、女将さん』
「ジアンスなのかい!これはまた…どおりで立派な体格してるわけだ。任せなさい!主人の安全はわたしが保証するから!アンタにも良いご飯食べさせてやるわよ!」
カッカッカッと笑いながら去って行く女将。
『大丈夫かなぁ…』
「心配性だねー。そんなに私一人になるのが不安なの?」
『だってお前そんなに強くないだろ?側にいなきゃ守れないじゃん』
「……コイツはホントに…」
『まぁ、オレは馬房に泊まるわ。リーヴァは部屋で休んでなよ。
セツラーーン。今日は明日まで自由時間な。外で遊んで来なよ。明日、朝になったら外で待ってるからさ』
『じゃあ荷物預けまふね』
ドサドサと背負ってた荷物を下ろす。主にエルくんのだが。それでも鞍などを載せていた分軽くなり気分は爽快だ!
『ヒャッハー!遊びに行こうぜ!』
『『ヒャッハー!!!』』
変な掛け声とともに消えていく三頭。
「アンタは良いのね?」
『クドい』
「ん。わかったわ。じゃあ荷物を預けたら出掛けましょ?」
『え?どこに?』
「換金とお買い物よ!!!」
村とはいえ、首都への道沿い。それなりに旅人相手の商売は行っており、ある種の道の駅状態だ。
村の大通りには地場野菜や食材、その他旅の必需品等が露店で売られている。
『寂れた感が無いなぁ』
「何を期待してんのよ!首都への道程で寂れてたらダメじゃない!」
軽くツッコまれるダバ。
『宿場町と言った所かな?』
「良くわかんないけど、そんな感じかな?ココは首都に向かう人達がよく泊まる場所なの。大体ここから二、三日間で首都に着くわ」
『英気を養う所だな。温泉とかあったら良い場所に成るだろうに…ってあんの?』
「あるわよ?」
宿の看板には、例のあのマークが付いてある。何故この世界でも一緒なのか?謎だ…
『温泉とかもいいよなぁ。馬用あるかな?』
「流石にそれは無いでしょうね。人用だけじゃないかな?」
前世での世界では、競走馬の滋養の為に温泉施設はある。疲労回復には効果的だとか。
『もしかしたらセツラン達が見つけてるかもな』
「フフッ、ありうるね」
二人で笑いながら換金所を目指す。
一方その頃、噂をされたセツラン達は…
『あっっっつい!!!なにコレ!水が熱いし変な臭い!』
予想通り温泉の源泉を探し当てていた。
『危ないれふよー。そこヤバい臭いがするれふから』
温泉を見つけたのはぺんちゃんだ。どうやら妙な臭いに引き付けられた模様。
『なになにー?くっっさ!』
鼻を歪めてしかめっ面はエルくん。匂いを嗅いでは『くっっさ!』を繰り返していた。
ぺんちゃんは脚を入れては抜き、入れては抜きを繰り返し遊んでいた。
『次はどこに向うれふかねー』
マイペースで辺りを見渡すセツラン。良い羽休めになっている様だ。
舞台は再び、ダバとリーヴァの二人に戻る。
都合良く換金所を見つけ、売れる素材を売っていく。
エンテロドンの素材は高く買ってもらったが、牙は少し値下がった様だ。まぁ仕方がない。
『んで、いくらぐらいだったんだ?』
「うん?十万程かな?毛皮と牙ならそんなもんじゃない?」
『相場がわからんからなぁ…しゃーないか』
「特別価格って訳でも無いしね。さて、買い物よ!」
鼻息荒く意気込むリーヴァ。何処の世界でも女と言う種族は同じだ。
『やれやれ…』
ため息一つ吐きながら今日は長くなりそうだと覚悟を決めるダバだった。
その頃セツラン達は…
『競走れふよー!!』
『『ヒャッハー!』』
仲良く草原を爆走。
元々大きな体格をしているジアンス種の中でも、最大級の大きさのエルくん。体高(前脚から肩の高さ)は既に二mを越え圧倒的な馬格を誇っていた…が、
『くそー待ってよー』
身体が大きくなり過ぎ、スピードが出にくくなってきたのだ。
一方、先頭を走るのはぺんちゃんだ。
『ヒャッハー!僕が一番だぜ!』
風を切り、低い重心で走る。一本の槍が翔ぶが如くの走りだ。その気になれば羽が生えそうだ。
『ぺんちゃん速いれふね。エルくんガンバー』
おっとり屋のセツランはまだまだ余裕があるが、生来の気質なのか間をとりもとうとする。だが、キレた時は一番だ怖そうだ。
そんな彼等を遠目で見る集団があった。
「アレって馬だよな?」
「多分…」
「デカすぎだし、速すぎだし…」
「魔獣の一種じゃねーの?討伐依頼か捕獲依頼ってあったっけ?」
「いや、聞いて無いし、見ても無い」
「どーする?」
悩む集団。彼等は冒険者ギルドのハンターなのだが、走っているセツラン達を見て戸惑っていた。
「事前準備無しだと無理だな。無茶はしない方がいいだろう」
リーダーらしき人が方針を決める。
「少し勿体無い気もあるが…」
自身の騎乗用か、素材としてか。どちらかはわからないが、手を出さなくて良かっただろう。セツラン達も大きくなり、戦闘力もある。下手に手出しをすれば怪我だけですまない可能性も高い。
「ほら行くぞ、お前達」
彼等が向かうのは先程の村。何が起きるかはわからないが、人の業を考えると…良い予感はしない。
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