第1-2話
ダバ達が戻って来ると、セツラン達が先に戻っていた。
『おー……お?なんだこの状況?』
鬣で巨大な肉の塊を縛っているエルくんはまだ良いとして、問題は牙を咥えて遊んでいる二頭だ。
口から牙を前面に出し、お互い突撃して遊んでいる。
『ダバさんダバさん、必殺技!!』
『ししょー、どうコレ?』
苦笑いしか出ないこの状況。
『あ、うん。売り物だからね…扱いには注意して下さい』
『『ハッ!!?』』
『忘れてただろ…』
『『ごめんなさい…』』
『まーいいさ。んで、エルくんはまだ縛ってんの?』
何やら怪しげな縛り方に見える。
『うん。キンバーグに教えてもらったやつを試してるの』
嬉しそうに答えるエルくん。楽しそうでなによりだ。
『血抜きは…縛られてある程度出てるかな?リーヴァ、出来るか?』
「あ、うん。呆気にとられてたわ…。大丈夫。やるわ」
解体作業に入るリーヴァ。流石に馬の脚では無理がある。
「うーん、コレってエンテロドンだよね…よくこんなの仕留めたわね」
リーヴァ曰くかなりの大物だとか。
肉は塩漬けと乾燥させる分に解体。持ちきれないのは今夜の食事に使う。毛皮も売れそうなので丁寧に剥いでいく。牙は遊ばれていたが、売れそうだ。
「よし、こんなもんかな?内臓関係は危ないし捨てるわよ。穴掘ってくれる?水は…出すとしますかね」
『ちょいまち。オレに出させてくれ』
『ダバさん、変なの出したらダメれふよ?』
『出すか!見てろよー【水よ、出ろ】!』
冒険者にとって水は欠かせない。当たり前だが野生に水飲み場はそれ程ない。そこでダバは考えた。
(結露で水出せんじゃね?)
空気中にある水分を集め、飲用水として使おうという事だ。
マソを使い、理屈抜きで結果を出す。便利な世界だ。結果を想像できれば過程をすっ飛ばせるんだから。
『おぉー!』
空中に水が集まり下に落ちる。それをリーヴァが使い、手と道具を洗っていく。
「へぇー、やるじゃない」
感心感心と褒めるリーヴァ。
『だろ?まだまだ色々出来そうだ』
「期待してるわよ?」
『任された!』
チョロい主役である。
その後、余った肉は夕食として焼肉にして美味しく頂いた。塩味のシンプルなモノだが、やはりシチュエーションが加味してより美味しくなる。
『うめ〜なぁ…』
『焼肉って美味しいれふねー』
『草よりこっちかなぁ』
『肉食になりそうだよ』
「ちょっと硬めだけど美味しいわね」
美味しく堪能した【無邪気な尻尾】一行は、一先ずこの地で野営をする事にした。
「初日としては良いできだよね。薬草や木の実も採取出来たし、エンテロドンも狩猟出来たし!セツラン組のおかげよ!」
ニコニコ顔のリーヴァ。
『どの程度の金額になるんだろうな?』
「さぁね。相場によるものでしょね」
希少性が高けりゃ高く売れるのはどの世界でも変わりない。だが、草と肉と毛皮だと数千〜数万と言ったとこか。
『金はギルドに加入してからだな。依頼で稼ぐか、移動しながら採取すれば何とかなるだろ』
「せめて泊まる所は宿屋が良いわ。か弱い女性だし」
『現実的に考えてその方が良い。野生で生きるのは人には無理だ』
「……まともな返答ね。なんか意外」
『あのなぁー、お前はオレのパートナーだぞ?大切にするのは当然だ』
「………ありがと」
赤面しながら馬に返事をする。茶化されるものだと思っていたら真剣な答え。不意打ちを食らうとはこの事だ。
「も、もう寝る!警戒は頼んだわよ!」
一人テントの中に入るリーヴァ。
『あぁ、任せろ』
周囲を警戒するダバ。
馬は元々睡眠時間が短く、3~4時間寝れば問題ない。襲撃された時にすぐに起きれるよう睡眠も浅いとか。
『さて、二交替でやるか。オレと…ぺんちゃん。セツランとエルくんで警戒するとしよう』
ダバとセツランはある程度応用が利くが、エルくん、ぺんちゃんは能力的に少し尖っている。
指揮官がいた方が活躍できるのだ。
『どっちが休みまふか?』
『セツラン達が先に休んでいいよ。良いよなぺんちゃん?』
『良いよー。ししょーには話があるし』
『なんだよ…怖ぇな』
『んじゃお休みー』
テントの周りで休みはじめるエルくん、セツラン。
『じゃ、ちと離れて警戒な』
『あーい』
それから少し経った時…
『ねー、ししょー』
『んー、なんだ?』
『さっきの事だけどね』
『ああ、話ってやつか。なんだ?』
神妙な面持ちで語るぺんちゃんに対し、真摯に対応しようとするダバ。
『…………』
『なんだよ。溜まってるならはっきり言ったほうがいいぞ?』
『……僕も個性が欲しい!!』
『へ?』
『だってみんな個性豊かじゃん!前世の記憶持ってるししょー。カビちゃん付きのセツラン。緊縛好きのエルくん。…僕だけペンギンカラー。光るだけ…そんなのつまんないよ!』
だいぶ拗らした様だ。
『そうは言っても、個性なんて後付けみたいなもんだし…ぺんちゃんモフ好きだろ?パートナーが出来たらキャラ立ちするんじゃないかなぁ?』
それぞれ好きなジャンルが違う様に教育してある。被ると喧嘩の元だ。
『それだと何時になるかわかんないし、戦闘でも役に立たないもん…』
『フム…』
ぺんちゃんのスキルは【ペンギンフラッシュ】所謂目くらましだ。
『すると何か?戦闘でも役に立つ様なスキルと個性が欲しいのか?』
『うん…』
『ふーむ…』
無個性って訳でも無いのに拗らせ始めたぺんちゃん。周りが濃すぎるのも原因の一つだ。
『具体的にはどんなのが良いんだ?』
『わかんない。だからししょーに聞きたかったんだ』
『ふーむ…』
困った。キャラ立ちをしたいがイメージが無い。どうありたいかも決まって無い。でも個性が欲しい。
『むむむ…』
『ししょーでも無理?』
泣きそうになっているぺんちゃん。
無理と言われるとムキになっていくのが男ってもんだ。
『ぺんちゃん。個性ってのは他人に付けてもらうもんじゃない。自分で付けるもんだ。セツランとエルくんは、たまたま外的要因があったが、ぺんちゃんがソレを羨ましがる事は無い。確かにぺんちゃんは目立った個性が無いのかもしれん。だが考えようによっては、これから自分で付けることも可能だ。この差はデカいぞ?』
『どゆこと?』
『自分で選べるってことだ。スキルを強化したり、新たに習得したり、ケモナーとして確立したり。流石にキノコは生えないだろうけど。まだまだこれから!チャンスはあるって事だよ』
『そんなもんかなぁ?』
『そんなもんさ。焦っても仕方ないし、オレ達はまだ若いんだぜ?』
『うーん……うん、わかった。しばらくは成り行きに任せる。旅立ったばっかりだもんね』
『そだぞ?色んな物や世界を見ていけば、自ずと方向性も見えてくるよ。焦らず行こうぜ!』
ダバも自身に言い聞かせるように答える。強さという面では、遥かに超える人達を見て少し焦る気持ちもあったのだ。だが、ぺんちゃんと話す事により、心の整理もつき、ゆっくり成長しようと思うようになったのである。
『でも必殺技欲しい!』
『技なぁ…ペンギンフラッシュだけだと今後も不安だよね。フラッシュからの〜技を考えようか』
二匹の会合は続く…
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