第4-2話
ーー頭が痛い。
二日酔いだろうか?
馬も飲みすぎると二日酔いになるか……
オレは今どこにいるんだ?
辺りを見渡してもわからない。
ーーあれ?コレってもしかして……
「やっほー、お久しぶりー。ダバさん。D田中です」
「田中さん。って事は夢の中?」
「ですです。どお?楽しんでる?前回は素っ気なく対応されたから、なんか怒ってるのかなって」
「いや、そんな事は無いけど…またなんか用なの?情報収集?」
「無い訳じゃないけど、ご機嫌伺いだよ」
「ホントですかー?ま、私は楽しんでますよ」
「なら良かった。顔色悪そうだから少し心配なんですけど、大丈夫な様ですね」
「顔色?」
ふと自分を見ると馬ではなく人…転生する前の形だった。
「あら?人に戻ってる…なんだか懐かしい」
「夢の中なんで、魂の記憶を元に構築されてますからね。まだ人型の方が強いんでしょう」
「ふーん…つーか、やけに丁寧な対応じゃないですか?田中さん。何かあったの?」
「ギクッ!?え…?い、いや、べべ、別に?ふ、普段どどおりですよ??」
(困惑しすぎだろ…)
「ふーーーん……まー、何でもいいですけどね。で、用件は?」
「で、ですからご機嫌伺いです、はい」
「じゃあ、ご機嫌です。以上」
「ーーーえ?」
「いや、ご機嫌伺いでしょ?私はご機嫌です」
「や、それじゃ困るんです。内情聞いてこなきゃチャチャに虐められるんです!ネチネチネチネチ攻撃されるです!助けてくださいよ!ダバさん!」
(知らんがな……)
同じ獄卒でも上下関係があるらしく、チャチャの方がD田中より力がある様だ。
「めんどくさいなぁ…そんな人だったっけ?」
「こっちも必死なんです……お願いします!」
嘘か本当かわからんが、必死さは伝わってきた。
「はぁ、んで。何が聞きたいんです?」
「ありがとうございます!良かったー。近況を教えて下さい」
大雑把に説明する。ヴィヴィアンの里に着き、オークの襲来を退け帰宅した事を。
「あ、バンドーBって生霊に遭遇したなぁ…以前の転移者なの?」
「バンドーB…?B……なんか引っかかるな…」
「?」
何やら考え出すD田中。
「おーい、田中さん?」
田中の表情が暗い…
「失礼しました。何か引っかかるものがあったんですが、勘違いの様です」
一転スッキリした表情になる。
「ホントに?大丈夫?」
「ダバさんにはご迷惑を掛けました。この場で謝罪させて頂きます」
深々と頭を下げる田中。
「ちょ、どうしたの?田中さん」
訳の分からないダバ。
悩んでたと思えばキリッとした表情に戻る…と言うか別人のようだ。
「なんか…変わった?別人みたいな顔してるよ?」
「そうですか?普段通りだと思いますが」
クックックッと怪しい笑みを浮かべる田中。
(やべぇ、田中さんが壊れたか?)
「あ、あの、そろそろ起きないと…ね?」
「そうですね。わかりました。また、会いましょう…」
田中の様子がおかしいので、会話を早めに切り上げていくダバ。
「じゃあ、また」
「失礼します」
ーーーやがて世界は暗転し再び落ちていく。
『おーい』
『そろそろ起きないと…』
『姉御が怒るよー』
「誰が姉御よ!ほら起きなさいダバ!」
ペチペチとダバを叩く。
『んーーー?リーヴァ?おはよー』
「ほら、シャキッと起きなさい」
急かされ伸びをしつつ立ち上がるダバ。
『んで、リーヴァどうした?』
「旅支度もだけど、馴致の話もしてたでしょ?調教出来る人聞いてきたから行くわよ」
『おー!流石リーヴァだな。ありがとな』
「中々アンタ達動かないでしょ?じゃあ私がやらないとね」
すっかり良い姉御だ。
「すいませーん、リトヴァの娘リーヴァと言います。テシヲさんいます?」
ここは中心街から離れた外縁部にある牧場。
そこに住む里一番の調教師、テシヲ。色んな馬達を仕上げてきたのだ。
「はいはい〜。リーヴァさん?リトヴァの娘なの?綺麗になったね!」
出てきたのは普通のエルフのおっちゃん。
「はじめまして…じゃないのかな?私来たことありました?」
「ちっちゃい頃にね。ま、そんな事より、どうしたの?」
「えっと…この子達と旅に出るつもりなんです。で、馴致と、装備を整えたいと」
「へぇー、この子達とねぇ…」
ジロジロとダバ達を見るテシヲ。
対してずっと黙って様子を見ていたダバ達。
『何見てんだコラ!?』
ガン!!!!!
リーヴァからの一撃。
「なに喧嘩売ってんのよ!」
『や、ジロジロ見てくるから…つい』
「ほう、ジアンスか。しかもしっかり喋れるのか」
『あ!?』
ガンガン!!!!!!!
再びリーヴァの一撃。いや、二撃。
『痛てーよ!』
「生意気な態度取るんじゃないわよ!」
「はは、いいコンビだな。
で、依頼は馴致と装備だな?馴致はいいとして装備は、頭絡、鞍一式と…蹄鉄か?」
「そうね。旅の道具を運ぶのに適したヤツがあればいいんだけど」
「わかった。見繕っておくよ。
で、お前達の名は?」
『ダバ』『セツラン』『エルくん』『ペンちゃん』
「ん、わかった。リーヴァ、どの程度で仕上げるんだ?」
「そうね…どうするダバ」
『そだな…七日あれば…かな?』
「ふむ、七日…ま、話せるし大丈夫だろ」
簡単な指示を理解できればいいんだし、そこまで難しいものでは無いだろ…と思ってた時期が私にもありました。
「おら!ダラダラ走ってんじゃねぇ!」
頭絡と鞍を付けた状態で口元に長いロープがあり、それをテシヲが持ち、鞭で尻を叩く。良くある円運動だ。
「スピードアップ!」
鞭を一閃!足元に良い音が鳴る。
『チッ!』
常歩から駈歩へ。
「はい、ダウン!」
駈歩から速歩へ。
「更にダウン!」
『なぁー、全力で走らしてよ?』
「お前ら蹄鉄無いのに、全力で走ると蹄痛めるぞ?」
蹄とは脚の爪だ。そこに付けるのが蹄鉄と呼ばれる馬用の靴だ。
「裸足で全力疾走してたら裂蹄や挫石、そこから蹄葉炎になっちまうぞ?まー、普通の馬じゃねーから大丈夫かもしれんが」
『オヤジらも付けてなかったしなぁ…』
「言っても野生だろ?人の世界を旅するなら準備は必要だろ?」
『うーん…まーなぁ…オレはともかく、他の仲間が心配だわ』
「とにかく準備は怠るなってこった。出来ることしておけば安心だろ?」
『そだな。んでさー、テシヲさんよーものは相談なんだが…』
「なんだいきなり?」
『ごにょごにょ……』
笑い出すテシヲ。
「良いぜ!やってやるわ!」
ニヤリと白い歯を見せるテシヲ。
なにを企んだのかダバからテシヲにお願いだ。
その様子をセツラン達は『また良からぬ事を考えたな』と呆れ顔で見つめていた…。




