(軽度に)破天荒極まるローカルな戦い!
「やってきました! 夢の国「デスティニーランド」♪」
バァァァン♪(ディオがジョースター家にやって来た時の音)
「……」
「どったの?」
「なにやってるんだ、子音?」
「なにって……観光?」
「片道三時間もするデスティニーランドに人が気を失ってるうちに連行しての観光か?」
「相変わらず、簡単にオチる人だよねぇ……玄ちゃん♪」
「殴っていいか?」
「だぁめ♪」
ニッコリ♪
「糠に釘、暖簾に腕押し、蛙の面に小便って感じだな」
「鼠だけどね、私は……♪」
なにが面白いのかケラケラ笑う子音に頭が痛くなる。
それにしても……
「どったしたの、玄ちゃん……人の胸をじろじろ見てぇ?」
「あ、いや……」
思わず目をそらしてしまうほど、今の子音はかわいらしく輝いて見えた。
なんせ……
(可愛い服じゃねぇかオイ……)
今の子音は文字通り夢の国のマスコットさながらのお姫様そのものであった。(ねずみの国だし、当人も子だしね)
白を基調とした桃色のワンピース。
腰には真っ赤で可愛く大きなリボンを背中に背負った形で巻き。
首や手首の袖にはこれまた上品なヒラヒラがいくつもついており。
頭にはいつも着けてるイカしたホームズの帽子はなく、ティアラをイメージしたようなカワイイ帽子であった。(どっちにしろ帽子に変わりないけど)
これで中身がふざけた鼠でなければ完璧なのに……
「玄ちゃん、もしかいてボクの可愛い姿にテレちゃった?」
「……」
言葉もない……
「なははは♪」
締めてやりたい……
「えへへ♪ せっかくだから今日は楽しもうよ」
「ッ……」
子音の小さな手がオレのきったない手を握りしめ、自分でも顔を赤くしてるのが分かった。
「て、ちょっと待て!」
慌てて握られた手を放そうと腕を振る。が……
「イデデデデデ……手の力を抜け!」
はぁ……
「オマエ、今度のローカルバトルの主役だぞ! こんなところで遊んでていいのか?」
「部活動生活の最後の思い出作り……ってやつ?」
「諦めるなよ! 努力しろよ!」
「努力ぅ~~……」
子音の目が死んだ。(普段はキラキラしてるくせに)
「嫌いなんだよね……努力・友情・勝利の三本柱」
「ふざけるな!」
「膝蹴るな?」
ゲシッ!
「いっでぇぇえぇ!」
弁慶の泣き所を容赦なくけりやがったよ、このドブネズミ……
「いい鳴き声♪」
「鬼かお前は……」(涙声)
「鼠だよ♪」
「だったな……」
ティアラ型の帽子をかぶり直し、ニヤッと笑う。本当にいい性格だ。
「本当にアイドル部を辞めるつもりなのか?」
「犬養くんの言葉には逆らえないからね……
見事に諦めきってる。なんとかしないと……
「そ、そうだ! 今度のバトル、勝ったらご褒美をやろう!」
我ながら幼稚な手段だ。
「言えば貰えるもん」
「それは奪ってるだけだ!」
「オールオアナッシングだよ!」
「オマエっていうか……オマエ達ってやつは」
頭が痛くってしょうがない……うん?
「あれ……秤じゃないか?」
「はかり……?」
目に映る楽しそうにソフトクリームを食べる男と女。少女のようにかわいらしい男の子にどこか底の見えない闇を抱えた少女。
見るのも嫌な天敵。秤天音と織姫彦星だ。
「うん、いきなり手を握ってどうした子音?」
「す、すぐに別の場所に行こう! あの二人というか……針の狂った天秤とかかわるといいことなんて一つもないから!」
「お、おう……引っ張るな」
前回の敗北が見事にトラウマになってるみたいだ。ちょっとだけ安心した。(負けて悔しいんだな)
で、しばらく夢の国を散策して……
さすが夢の国だなと感嘆している。
乗り物だけじゃない。あっちこっちに夢の国の住人がたくさんいて、露店すら華やいだ輝きをもって。お金を必要としない写真を撮ることを許された彫像やちょっとした仕掛け。
入場料だけ払ってなにも乗らなくとも十分楽しめる。まさに夢の国。ずっといたいと思えるから不思議だ。
でも……
「ここは龍脈が悪い。別を行こう!」
メリーゴーランドを見ようと足を運べば楽しそうにお馬さんに乗る秤と乙姫を見つけ。
「ここはダメだ! レイラインが悪い!」
空中ブランコを見に行けば無邪気に空を飛ぶ秤と織姫がおり。
「ここは風水が悪い! よそに行こう!」
水上ジェットコースターで喚いて落ちる秤と乙姫がいた。
次も……
次も……
次も次も次も……
どこ行ってもまるで先回りしてるように針の狂った天秤と女男がオレ達の前に立ちはだかり楽しそうに遊んでいる。
まるで質の悪いコントだ。
「なんで……」
オレの手を握りながら子音の澄んだ目がぐるぐると回っている。
「なんで……」
ぶるぶるぶるぶる……まるでバイブレーションだ。
「なんでボク達の行くところ全てに保証対象外の欠陥品がいるんだあぁぁぁぁぁぁ!」
少女Nの叫びだった。
「すさまじいエンカウント率だったな……呪われてるようだ」
メタルスライムのように経験値を高く貰えればラッキーなのに出会ってるのは益のない故障品じゃ怒鳴りたくもなるわな。
「って、玄ちゃん、隠れて!」
「え……!?」
口を押える形で身体を羽交い絞めにし子音の身がトイレの陰へと引っ込む。(当然オレも)
(う、こ、これは……!?)
バスト88センチある巨乳がオレの小さな背中にムニュ~~と当たる感触が広がる。
「……動かないで」
耳に息が吹きかけられ、ゾクゾクと背筋が妖しく気持ちよくなる。
(って、また秤がいやがる!)
楽しそうにスキップ踏みながら織姫と道を歩く二人にさすがのオレもちょっとうんざりした。
「……はぁ、ようやく去ったか?」
口を解放される。
「はぁぁ……」
子音の腰がリングに入る前のプロレスラーのように中腰になりオレの狭い肩を掴む。
「……」
中腰になることでわかる子音の大きな乳房にオレは思わず見惚れてしまう。
(相変わらず……でかいな)
体型をごまかすようなヒラヒラの多い服の上からもわかる大きく柔らかく揺れる乳房。
それでいて形のいいロケット型。先がほんのり突起してるのが分からい思わず喉が渇く。
「ね、ねぇ……」
ポヨンと揺れるように子音の腰がまっすぐ立ち上がりオレの目を見上げる。
「天音ちゃんって……殺していいかな?」
「返り討ちに会うだけだぞ」
秤の強さはウチのアイドル部の連中の軽く三倍ある。
しかも一人で三倍でなく全員で三倍だ。勝てるわけがない。(犬養なら勝てるが)
「うぅ~~……悔しい悔しい悔しいよぉ」
地団太踏む姿も恐らくブラをつけてない乳房が揺れ、余計にエロイ。
「せっかく最後のデートなのに」
「次もやればいいだろう」
「部活を追い出されたらボクと君の接点なくなるじゃない!」
「次の大会で勝てばいい。繋がりは続くし、次のデートくらいオレが(金を全部)出してやる」
「そうやってボクを乗せる気?」
「乗せるもなにもそれ以外オマエに先はない」
「……」
「……」
子音の猫目(鼠のくせに)がオレの濁った眼を捕らえる。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……前払いして!」
「前払い?」
どういうことだ……
「こういうこと……」
「え……?」
チュッ……
「……?」
思わず呆然としてしまう。
「……ふふっ♪」
淑女のように可愛らしく口を隠す子音に思わずドキッとしてしまう。
「日も沈みだしたし、最後にパレードを見て帰ろうか……?」
「お、おう……」
子音の細く長い指がオレの短く太い指に絡まりまるで恋人のよう握りしめられる。
「……えへへ♪」
子音もテレてるのか赤く笑う姿はすごくかわいかった。
で、パレードなんだが……
「……」
「……」
「……」
「……」
ついにオレと子音はラスボス。秤天音と織姫彦星と出会っていた。頭の中はRPGのバトルBGMがすごい速さで流れ込んでくる。
「亀さん、なんで君は私たちのデートに普通に加わってるの?」
秤の棘のある声に子音も自分の声を針のように鋭くする。
「ボク達のデートに加わってるのそっちでしょう!」
「私は彦くんと休日を楽しんでるの! 邪魔だから帰ってくれない?」
「男をとっかえひっかえなんていい御身分で。羽のもがれた星馬が泣くよ」
「一人の男の子を複数にで輪姦して楽しい?」
「ああぁ!?」
「えぇぇ!?」
「おいやめろ……みんなが観てる」
「うぅ……」
「それ以前に聞いたよ……」
「な、なにを……」
戦えば負けるとわかりきってるせいか子音の態度が少し弱弱しい。
「私たちに負けて部費を減らされたらしいね……」
「ぐはぁ……!?」
痛いところを突きやがって。だから嫌いなんだこの天秤は……
「ふふっ……」
長いポニーテイルをかきあげ、秤の目が意地悪に細まる。本当に締め上げたいくらい憎らしい。
「たかが知れてるとはいえライバルが一人減ってこっちはいい勝負させてもらったよ」
「部長……」
オレと子音と同じように恋人握りで秤と手を繋いでいる織姫の呆れた声が聞こえる。
「本当に性格悪いね」
「誉め言葉よ」
オッドアイの目が嬉しそうにニヤニヤし、オレと子音の左手と右手が繋がったように同じ動きでワキワキとしびれる。
「で、今年は諦めて遊び通すの?」
「やめなよ部長……かわいそうでしょう」
「部費のことなら大丈夫だよ!」
「うん? それって、ローカルバトルのチラシ?」
どこから取り出したのか子音の細い指に挟まれたチラシを見て、秤の目が細くなる。
「へぇ~~……」
なんか、目が冷たくなってる?
「これに参戦するんだ?」
「そうだよ!」
えっへんとどこか偉そうに胸を張るドブネズミ。
「……」
顔を横に向けると秤の黒目がこっちを向き、口もちを隠す。
「せいぜい頑張ってね……」
「あれ……?」
彦星の手を引っ張って秤の足がオレ達から離れていく。どこに行く気だ?
「いい結果を残すんだね。優勝は絶対に不可能だけど」
「ッッッ……」
全身から悪寒が走った!
「……」
子音の目も怖い形で細くなっている。なんで女ってこんなに顔の表情を変えるのがうまいんだ。
「帰る!」
「え、パレードは観ないのか?」
「家に帰ってローカルバトルの調査でもしよう!」
「ちょ、調査?」
「ネットで調べればある程度は事前情報くらいは手に入るでしょう!」
まぁ、そこそこデカイ大会らしいからな。今回のローカルバトル。
===
家に帰ると子音は当たり前のようにオレの部屋のパソコンをこれまた当たり前の動作でスイッチを入れ、当たり前のように椅子に座り、当たり前のようにモニター用メガネをつける。コイツ、何様のつもりだ。
「うわ、起動おそっ! 新しいの買ったほうがいいよ……このパソコン」
「そんな金あるか……」
父さんのおさがりなのに……
「貧乏ってやだねぇ……」
そう思うなら人の家のジュースを当たり前のように飲むのをやめてくれ。それだってオレの小遣いで買ってるんだからな。
「あったよ、今度のバトルの情報が……」
「うん、どれどれ?」
大会の審査員たちの情報にモニター用の眼鏡をずり上げる。よく見たらオレのアゴ、コイツの肩に乗ってるな……
「へぇ……結構レベルの高い審査員が来てるね」
「地方と言っても主催者は全国区みたいだからな」
一番際どく目立つ名前が去年のアイドルインターハイの特別審査員阿部。学生アイドル評論家の五十嵐、今ネットで大活躍中の批評家内村までいる。まるでボスラッシュのようなスーパースターの数々だな。
笑いたくなるほど重鎮の数々だな。一人くらい色物がいればいいのに……お笑い芸人とか。
「でも、この人たちってアドリブとか咄嗟の起点とか好きな審査員ばかりだね」
とくに内村のネット評論はリアルタイムを売りにしてるだけによりアドリブが求められる。頭が痛い。胃が痛い。関節が痛い。風邪を引いたかも。
「ふむふむぅ……」
子音の丸い顎が小さな手で隠され口の口角がニヤァと吊り上がる。
「さて、どうするかなぁ……」
「この年で胆石が出来そうだ……」
「それ、年と関係ないらしいよ」
===
で、なんだかんだでローカルバトルの日。早いよなもうそろそろ夏休みだ。出来れば自由と権利のある夏を過ごしたい。
「さておき……」とオレは少し感慨に更ける。なんせ今日ほど友情って素晴らしいなって思ったことがない。本当にねぇ……笑えるくらいに。だって……
「犬養……ケダモノ共はどうした?」
「ケダモノ……キワモノの間違いでしょう」
今ここにいるメンバーはこのリーダーの亀梨玄斗さまと主役の子音ナカネ。獣字学院の番犬こと犬養けんすけの三人しかいない。
オレ達以外も待機組がひしめく楽屋裏でオレはエスケープを決め込んだスズメ、マオ、龍子、ネミに苛立ちを覚える。どうせ面倒くさいという理由で来てないのだろう。本当に友情って素晴らしい。
「なはは♪」
なのにこの女は楽しそうに笑っている。
「これだからいいんだよ、ウチの部は……ね?」
ウィンクする子音に犬養も口角を上げ、クスッと笑う。
「仲間を応援するほど義理堅いならとっくにうちの部は潰れてますよ……友情も努力も勝利もすべて否定して蹂躙するキワモノどもですからね」
協調性のない一点ものばかり。だからうちの部もある意味やっていけるんだが……
これで和気あいあいとしたチームならとっくに自滅してるか破滅してるか……なんか因果だ。
「それよりも子音」
犬養の切れ長な目が子音の猫目に向く。
「今回の大会、どうやって勝つつもりですか? 任せっきりだったので興味がありますね」
心なしかオレへの視線が厳しい……
そんなオレの心の冷える気持ちを無視するように子音の細く長い指がぷりっとした唇を触る。
「刮目して待たれよって……やつ?」
「呆れますね……」
犬養もこのネズミに関しては扱いきれない何かがあるみたいだ。
「うん?」と犬養の目が外を向き、オレは「どうした?」と犬養の目の先を追う。
「外から聞いたことのある声が……」
耳のいい犬養の言葉にオレも子音も揃うように楽屋を出ると見たくもない二つの顔がオレ達をゲンナリさせる。
「は、秤天音……」
いやらしい顔で笑う針の狂った天秤こと秤天音と夜空の美麗男織姫彦星が楽しそうに談笑している。
見た目はサッパリしてるのに中身はこれ以上ない程クドイ組み合わせだ。
「出ないと言ってたはずなのに……どうしてここに?」と犬養の細い眉がひそまると子音が「ナハハ」と笑う。
「ボク達を潰しに来たんだろうね……あの天秤、性格悪いから」
「はぁ……」
妙に色っぽい溜息を吐くと犬養は両腕を組み、子音を見て「で」と口を開く。
「あの二人に勝つ自信はありますか? 勝てませんよ正攻法では……」
「まぁ、なんとかなるよ」と子音の顔に狂気が混じる。
「天馬くんでなく織姫くんが相手なのは怖いけど……多分勝てる」
「信じてますよ」と肩を掴まれ、子音の顔がゾッとしたように青くなる。
「犬養くんに信じられるってなんか怖いっす……」
「同感だな」
ゴツンゴツンゴツン!
と、脳天にゲンコツを受けるオレと子音。
「なんでオレだけ二回……」
「頭がチカチカするぅ……」
「さぁ、始まりますよ」
パァンッと花火の鳴る音が聞こえ、会場の騒ぐ音が聞こえ、オレも子音も戦いののろしが上がったと気合を入れる。
ライブが始まると犬養の「ほほぅ……」という艶のある声が聞こえる。
「なかなかですねぇ……」という犬養にオレも首を縦に振る。
ローカルでありながら出てくるアイドルたちは全員レベルが高く明らかに子音では足元にも及ばない強豪ぞろいだ。
その中でも……
「ほっほっほっ♪」
アクロバティックにバック転を繰り返し器用に歌を歌う織姫彦星の派手で華やかなダンスにオレと犬養は息を飲んだ。
「レベルが高いですね……」犬養の達観した声がオレの耳を打つ。
「身体の軽い織姫だからこその演出のくせに歌も踊りもキレがすごくブレがない。極めるとはこのことでしょうね」
涼しい声。涼しいだけに余計、焦らせてくれる、この麗人。(男だけど)
「で、子音は……」
眠そうにしている子音を睨めつけながら犬養は「勝てないならそれまでですよ」と脅しつける。
「ま、まぁ大丈夫じゃないかな……なははは♪」
実は今回も演出は全部子音に任せている。理由は単純にオレが絡むと絶対に内容が拗れて参加を辞退することになるかもしれないと言われたからだ。だからオレも子音がなにをするのかわからない。というかわかりたくない。怖いから……
今更だけどなんか胃が痛くなってきた。キリキリキリと……胃薬持ってくればよかった。
「話してる子音の番が来ましたね。行ってきなさい」バシンッと背中を叩かれ子音も「いってきまぁす」と気の抜けた返事でステージへと上がっていった。
「神様……どうか奇跡を」
「名前が四神の一人のくせに神頼みですか?」
「黙れ忠犬」「うるさい亀ですね」と罵りあうと「バァァン!」。
「なぬ!?」
突然の爆音にオレも犬養も目を向いて顔を上げる。「なんだ?」「何事ですか!?」と思わず声を荒げてしまう。
「芸術は……爆発だぁぁぁぁぁ!」
「なに持ってるんだあの馬鹿は!?」と思わず喉が腫れるほどの怒鳴り声をあげてしまう。
「あれは……」
犬養の目が細くなる。
「ひゃっはぁぁぁぁ♪」
クラッカーをバズーカにしたような派手な音を出す大砲にオレと犬養はお互いに目を合わせる。
「帰りますか?」「いや、残ろう」と落胆する。
「うん……?」
犬養の形のいい耳がピクッと動いた。
「ちょっと静かにしてください」と「シッ」と人差し指が口の前に立てる。
「うん……?」
バン……ババン……バンバンバババン!
「これって……」
「爆音で音楽を作ってますね」と犬養の高い鼻が上を向く。
「ヒャッハァァァァ♪」
爆音だけで器用にリズムを作り、足でステップを踏む狂気にオレと犬養は胃を押さえる。
「あいつ……」「どうするかですね……」思わず拳が握られる。
「ひゃっはぁぁぁあぁ♪」
ミュージカル映画のように軽快に踊りながら大砲を撃って爆音をとどろかせる。
打てば打つほど激しくそして会場が狂気に満ちていくライブにオレ達は帰りたくなっていく。
狂気と狂喜が形になった地獄の浮世絵離れした世界に爆音が響く。
「いええぇぇぇぇぇい♪」
ドッカァァン!
っとすさまじい爆音が天井のない青空に響く。時間差で真っ白な花火が筒の口から飛び出す。ていうか本物かよそれ!?
「ヒャッハァアアァァァァァァ♪」
「ね、子音さん!」と審査員の一人が慌ててステージへと駆け出す。
「特別規約違反! 反則負け!」
当然かつ無慈悲な宣告に「えぇぇ!?」と子音の不満に満ちた声が大砲以上の大きさにステージに響く。
急遽作られたと思う規約違反に子音だけでなくなぜか会場まで納得のいかない悲鳴が上がる。
が……
審査員の目が「ですが特別ステージ賞を授与します! だから帰って!」と涙目だった。
「……」
金一封を受け取り「おおおおぉぉぉ♪」と大きな声が出る。
「やったぜ兄貴ぃ♪」と大砲の筒を青空へと向ける。
「大砲を撃ったら賞を没収しますからね」と釘打たる。
「ウッ」と引き金にかかった指が止まる。
「……残念。火薬が切れた」
大砲を背中に背負うように引っ込めるとオレは慌てて会場に走りだし子音の顔面を殴り飛ばす。
「あべし」と子音の軽い身体が飛ぶ。
「いったぁ……」
「オマエに任せたオレがバカだったよ!」
「ようやくわかった?」というものだから思わず首を絞めてしまった。
「……で、犬養。子音の処遇は?」
一層のこと切ってくれたほうがオレのためになるんだが……
「まったく」と犬養は諦めた顔で「目的は金です」とため息を漏らす。
「金が手に入れば特にいう気はありません。長い目で許してあげましょう……」だが、「次はないですよ」と怖い目をする。
「念のため聞くが金が手に入らなければ本当にこいつを追い出すつもりだったのか?」と聞いてみた。
「……」
犬養の切れ長の目が開く。
「それだけの勢いがないならいても辛いだけです」
「は、はぁ……」
子音が怯えた顔でオレの背中に抱き着いてきてオレも思わず振り返って抱きしめ返してしまった。
マジで怖い。狂犬マジ怖い。
「ま、まぁ、そんなことよりも……」慌ててステージから降り、オレ達は逃げるように賞金を持って去っていった。
本当に心臓に悪い連中ばかりだここは……はぁ。
===
そのまま部室に帰ると「パァン」と凄まじい爆音が聞こえ、オレ達は目をしばたかせる。
「祝! 部費の確保成功♪」
頭にかかる糸くずを払い、オレ(と犬養と子音)の目が「〇_〇」になる。
そんな態度に龍子は手に持ったタブレットを弄る。
「ネット配信されてますよ」
タブレットからヤーチューブが展開するとさっきまでのオレ達の姿が公式配信で流れている。
「いい友情でしょ」と龍子の小さな胸が張られ思わず哀れに思ってしまう。
「まったく……」
心配していたのかそれとも出不精なのか……こいつらは。
部室の扉が「ガラッ」と開くと元気のいい「やっほー」が飛び交う。
「いるかね、皆の衆♪」
振り返り「あ、麟道」と入ってきた女の子に思わず「どうしたんだよ」と聞く。
「えへへ……実はね」
指をさし「刮目せよ」と叫ぶ。
「アイドルインターハイの地区予選出場権が届いたよ!」
麟道の言葉にオレ達は「……」と一瞬言葉を探し、犬養を見る。
「締まらないメンバーですね」
クスッと笑い犬養は「インターハイは夏休み入ってすぐです」と口を開き、サディスティックに「覚悟はいいですね」と笑うのであった。
「お、おう……」
誰が口にしたか虚を突かれた声にインターハイまでの練習に覚悟を持っていかれる。
本当に怖い……




