(軽度に)猟奇的なあの娘に好きだと言われ逃げるオレ【最終回】
夏休みがようやく中盤を終えるころ。オレ達アイドル部はと~~っても大切なイベントを迎えていた。
「うへぇ……すごい人と肉の大海原だねぇ?」
子音の皮肉にも愉快にも聞こえるその声にオレは被っていた日よけ帽子のツバを上げる。
太陽の日差しをはるかに超すような暑っ苦しい肉。
その肉が肉同士でぶつかり合い肉のおしくらまんじゅうを繰り返しそれでもめげず進軍する肉の塊たち。
こともあろうかその肉は首から肩にかけて汗をぬぐうタオルをかけ、手にポキッと折ると綺麗に輝くサイリウムたる兵器を持ち。メガネをかけた下には星よりも綺麗にキラキラ光る……もどこか殺気立った感情すら籠る「生きた瞳」をもち、重い身体を器用に動かしている。
まるで怪物の口に自分から入り込むように男たちは吸い込まれながらドームに入り騒がしい雑音を立てている。
吸い込まれる肉どもを認めるように数人の男が手をメガホンの形にし叫んでいる。
「アイドルインターハイの会場の列はこちらです。落ち着いて入場してください」
ドームの入り口で列を整理する男の声に肉の塊と言える男たちは躾のされたライオンのように殺気を抑え、静かな足取りでドームの胃袋へと自ら食料として入っていった。
百鬼夜行もビックリな光景にオレとスズメ、マオと龍子、ネミと子音は当たり前の顔ですぐ隣の特設会場へと足を運ぶ。
そう、ここがオレ達の戦場前の待機室。俗にいう楽屋裏というやつだ。
「ついに始まったねぇ……」
気の抜けた子音の「始まったねぇ」の言葉に龍子が「そうですね」と頷く。
「この前まで廃部寸前の騒ぎだった気がしたのにもう夏休みに入って大会って感じですね……なんだか打ち切り前の野球漫画的な展開です」
うるせぇ。
「でも私たちにしてはちゃんとまじめに練習してたし」
スズメの目が遠くなるのをオレは気づく。
「結構自信あるよね?」
「ヤルからには勝ち犯す!」
(なんだよその宣言?)と思うオレにマオの細い指がオレの鼻っ柱を押さえる。
「それだけよ!」
と、勇ましいというより恐ろしいオーラとして発する。
こいつは戦場を「戦う場」でなく「蹂躙する場所」としかとらえてない節があるな。いいのか悪いのか知らないが。
「いい気合ですね。皆さん……」
犬養の無邪気で美少女みたいな笑顔とブラックジャックのような渋い声にオレは思わず「……」と顔を背ける。
「まぁ……いいか」
両頬をパンッと叩く。
「古いですね」
黙れ忠犬。
「やるぞ、オマエら!」
「「「「「おう!」」」」」
意外と気合の入った返事にオレは思わず呆気にとられ「あ、やる気なんだ」と思わず口にしてしまった。
「いっでええぇぇええぇぇぇぇ!?」
痣ができるほどの一撃を受けちゃったよ、本当に……
大会が始まった。
そしてオレは呆気にとられ言葉を失っていた。
なんせ今年の大会は恐ろしい程オレの目には現実味を失っていた。
「勝ててるよ……」
我らが獣字学院は驚くほど気持ちのいい快進撃を続けていた。迫りくる強豪。実力の上の学生アイドル。歌も踊りも一流の猛者ぞろい。それを全てその場の勢いだけで倒していくケダモノども……
正直実力はあってもカリスマ性のない奴らだ。一回戦勝てれば御の字と思っていたがあてがいい方向に外れている。勢いは弾丸のごとく続き気づいたらオレ達は準決勝のステージを勝ち抜き決勝戦への舞台へと駒を進めていた。
心の中で「なぜだ?」と突っ込み内心、心の中で焦る。
このまま勝ち進んで果たしていいことがあるのかどうか……
だって実力はあっても人気のないやつらだ。今回の快進撃、正直予想外過ぎて逆に怖い。
なにこれ、死ぬの? 殺されるの? ケダモノどもに蹂躙されて折に入れられるの。
悪夢のような夢の展開だ。どうかいい夢で終わりますように……
「お……ついに来たか?」
「え……」
違うブロックの決勝組を認め、オレは口をポカンとさせてしまう。
「せ、星字学院……」
余裕のある笑顔を浮かべる星字学院のアイドル部とそれを支える不良品の姿に思わず息をのむ。
「まさか獣字のケダモノどもが上がってくるとはねぇ……」
意外な顔をする星字学院の不良品の勝気な笑顔にマオが「当然の帰結よ」と豊満な乳房をタプンと揺らし胸を張る。
「そう……」
手に持った「狂い針」と書かれた扇子で口を隠し嫌な笑顔を浮かべる。
「ただ単に運がいいだけだと思うけど?」
あからさまな安い挑発に思わず「うん」と頷いてしまった。
「うぐぅ!?」
子音にチョークスリーパーで首を絞められ目の前が真っ暗になる。
「ここまできたら勝つしかないね」
背中で柔らかく当たる乳房と甘い声にオレは意識が遠くなりながら手をバンバンと叩く。マジで苦しい、でも気持ちいい……
「じゃあ、行ってきますね……」
ふざけているオレ達に龍子が先頭に立ち、みんなを引っ張る。子音もオレを解放し、走っていく。
「勝利を君に」
指で拳銃を撃つポーズを取ると子音たちはステージに上がり決勝へ……
勝っても負けてもなにかが残るといいなぁ……
インターハイが終えるとオレは陽が沈みかけ東の空が暗くなり始める夕暮れの遊歩道で小さな「盾」を抱え歩いている。
「負けた」
と重々しい言葉を吐くオレに犬養も遠くの目で「ですね」と頷いてくれた。こいつなりに気を使てくれてるんだろう。普段からそれくらい気を使ってくれると助かるのに……
マオが「接戦だったけどね……」と漏らすと龍子も「僅差で負けましたね」と答える。
「審査員の……差?」
ネミの小首をかしげた儚い声に子音が「言い訳はよそうよ」と笑いながら腰に手を当てる。
「準優勝だったんだからよかったよかったでよかったじゃん♪」
前を歩くスズメが「……」と静かにオレの横顔を覗き込んでくる。
「また来年も頑張れるね♪」
「え……」
一瞬、耳を疑う。
「来年?」
スズメの可愛い顔がニコッと微笑む。
「勝ったら終わりだけど負けたなら次は勝とうと思うよ!」と背中を叩いてくる。
「だから……」
「だから……?」
頭を抱きかかえられる。
「え……?」
オレの無駄にデカイ頭がスズメの豊満な乳房に顔をうずめられる。
「来年も私たちを導いてよ……」
柔らかくいい匂いのするスズメのむにゅむにゅした乳房の中で耳に心地いい振動が震える。
「私のプロデューサーさん♪」
気分のいいむにゅむにゅとした感触に思わずホッとするオレに……
「こら、凶つ鳥!」
「え……?」
身体を引かれる。
「それは私の亀よ!」
「おっ……!?」
スズメの胸から無理やり身体を引きはがされると今度はマオの豊満な胸にに後頭部を埋められるように抱きしめられる。
「こら、私の亀を取らないでください!」
「うぶぅ!?」
今度は龍子の小さな胸がマオの胸とプレスするようにオレの頭を抱きしめる。
「こらぁ!」
スズメも「泥棒」と声を荒げオレの身体を抱きしめてくる。やべぇいい匂い過ぎる。
「センパイは……ネミ……のもの」
「や、やめ……」
空いてる場所を的確に見つけ抱き着いてくるネミに子音も腕を引っ張るように乳房のあいだに細く短い腕を押し付けてくる。
「ボクも混ぜてもらうよ♪」
「なら、私も混ぜてもらいましょう」
まるで漁夫の利を得るように渋い声と固い筋肉がオレの身体に抱き着いてくる。
「玄斗くんは」
「玄斗は」
「玄斗くんは」
「玄ちゃんは」
「センパイは……」
「ふふっ……亀梨は」
「私(ボク)(私)のもの(ですよ)!」
なぜか犬養まで争奪戦に加わり声を上げる。
五人の美少女(と美丈夫)にもみくちゃにされながらオレは不思議な多幸感に包まれながら気が遠くなっていった。
アイドルインターハイの終わったドームの前で静かに夕日が沈みオレ達の夏が終わった。
かくしてオレの今年のアイドル部の活動はいったん幕を閉じた。
正直、なにもしてない気もするがまぁそれもいい。
だって、こいつらとなにかをしてなにかを得る。それが楽しいから。
いつまで楽しく過ごせるかわからない。
もしかしたら明日、急に楽しいは終わるかもしれない。
でも、その時はまた新しく「楽しい」を作ればいい。
この猟奇的で愛くるしいバカ共と一緒にいる時間をずっと楽しんで生きていた。
だからあえて言おう。
「(軽度に)猟奇的なあの娘に好きだと言われ逃げるオレ」
お後がよろしいようで……
終姦




