(軽度に)天秤の針は狂っても欲望だけは落ちず
in星字学院
ふぅ……
勝利の後の天馬くんの膝枕は格別ねぇ……
でも……
(首の引っ込んだ亀もなかなかヤルじゃない……)
軽快な歌と音楽に魅せる踊り……
さらに自分の学園だという強みを活かしたナイスなギミック……
全てが一流だったけどさすがにウチのほうが一枚も二枚も上手だったようね。
ぐふふぅ……
だけど……
「なに考えてるんだ。天音……」
「うん?」
あぁ……髪を磨ぐように撫でないでぇ……癖になりそう♪
「天馬くん……」
「あんだ?」
「顎のあたりとかくすぐるように撫でてくれない?」
「猫かなにかか……」
猫になりたい……
「で、なにを考えてたんだ?」
考えてた?
ああ、そういえば考えてったけ……
馬の膝枕は気持ちいいから忘れてた。
「昨日のライブ、なんで勝てたのかと思ってね」
それ以上に馬の膝枕ってなんでこんなに気持ちいいんだろう。
うん、天馬くんの顔がムッとなった?
「不思議なことはないだろう。オレ達のほうが実力が上だった……それだけだ」
これだけシンプルな思考だと世の中、楽しくってしょうがないだろうなぁ……
まぁ、私も今は膝枕の余韻で楽しみまくってるけど。
コホン……
「本当に実力で勝てたと思ってる?」
「他になにがある?」
天馬くんの揺るがない目って本当に頼りになるけど少しは思考を回してほしいなぁ……
でも、せっかく膝枕してもらってるし余計なことは言わないでおこう。
「……」
でも、思い出すなぁ……
昨日のステージ、明らかに第三者の意思が介在していた気がする。
どんな手段を使ったかはわからないけど昨日のライブはいつもの天馬くん達の以上の実力を発揮していた。
それは恐らく亀梨くんが関与してない力……
麟道キキ……
獣字学院中等部の生徒会長らしいけど、不思議とあの娘、油断ならないんだよねぇ……
私もたいてい、油断のできない天秤とは言われるけどあっちはそれ以上ね……
私たちが勝てた理由って絶対にあの娘が絡んでる気がする。
そう思うと……
「なにかイライラすることでもあるのか?」
「うん?」
「髪のときが悪くなってるな……イライラしてると髪質も悪くなる。なにがあったか聞かせろ」
「考えても無駄よ無駄。無駄なことを考えるより次のステージを考えるわよ」
どっちにしても勝ったのはこっちだし、本当に過去のことを思い出すなんて無駄の骨頂。
ああ、膝枕の余韻が覚める。あぁ~~やだやだ。
「そういえば地域アイドルバトルが行われるらしいが出るのか?」
「うん?」
そういえばそんな話し合ったわね。
地方から遠征してやってきたイベントでこっちのほうの地方学生アイドルのアイドルバトルだって。
楽しそうだけど……
「必要ないわ」
キッパリ言ってやったわ。
「むしろアイドルインターハイに向けて準備を始めたいしね。余計なことはしたくない」
なによりも余った時間でみんなとイチャイチャしたいしね。あぁプロデューサーってやめられない。
「そうかよ……」
あ、天馬くんの息が鼻に入った。
口臭なのになんでこんな甘い香りなんだろう。
やっぱり口臭を変えるガムでも食べてるなかなぁ……キスしたい♪
でもこれ以上の贅沢は良くないし、この駄馬の気持ちのいい膝枕を楽しもう。
ああ、勝利の膝枕って本当に気持ちいい……
バタンッ!
「うん?」
あれ、誰か部室に入ってきた?
って、彦(彦星)くんだ……
「どうしたの?」
自分でもびっくりするぐらい緊張感のない声だなぁ。
だって気持ちいいんだもん。
「ねぇねぇ、部長♪」
彦くんの女の子のような顔が近い……近すぎて蕩けるぅ♪
「今度の休み、ボクとデートしよう?」
「ええぇぇ!?」
ゴチンッ!
「あぐぅ!?」
「あ、ごめん、天馬くん」
ああ、目を回してかわいそうに……
で、でも……
「ねぇ、部長?」
そんな無邪気に笑われると断れないじゃない。
「いいわよ」
「やっりぃ♪」
「おおぉ♪」
男の子に抱き着かれるってこんなに気持ちいいんだ♪
本当に星字学院アイドル部サイコー♪
でも、私は気づくべきだった。
この時、ちょっとしたトラブルの扉を開けてることを……




