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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第二章「館」

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六話「鍵」

「鍵はもってないわ」

「ここは室内なのだから、鍵は必要ないでしょ」

アリスは、驚いた様子もなく言い返した。


「鍵がなきゃ開かない」ドアノブは、先ほどとまったく同じ声で言った。


「鍵は、どこにあるの?」

アリスは、語尾を強くして言い放った。


「鍵がなきゃ開かない」

ドアノブと、アリスの声が重なった。


アリスは、ドアノブを睨みつけ、

あきれて後ろを向いた。


アリスの視線の先に蠟燭の炎が集まる。

眩しさに耐えきれず、目を瞑った。


虫を振り払うように腕を大きく払い、光をどかした。


突如、

「ドスン」と鈍い音が部屋の中央で鳴り響いた。


アリスは目を開いて、部屋の中央に視線を移した。


先ほどまで何もなかった部屋に、黒鉄の装飾で縁取られた丸いガラス製の机が置かれていた。


机は、アリスの腰ほどの高さだった。

アリスが近づくと、机の上に白硝子の瓶が置かれていた。

瓶をよく見ると、

古びて黄ばんだ紙札が貼られていた。

そこには、黒い文字で「私を飲んで」と書かれていた。


アリスは瓶の中身を見て、

「見つけた」と声を弾ませる。


透明な液体の底に、鍵が沈んでいた。


鍵は黄金の輝きを放ち、柄の部分に精巧な赤い宝石があしらわれていた。


アリスは、鍵に不思議と魅力を感じた。


都合がいいことに、瓶は開いていた。


瓶を逆さにした。

だが、

液体も鍵も落ちない。

振っても、指を入れても同じだった。


アリスは瓶を元の場所に戻した。


「私を飲んで」の文字が太くなっている気がする。


アリスは、家なら絶対に怒られる遊びを思いついた。


瓶の飲み口を持ち、力いっぱいに壁に投げつけた。

飛んでくる、破片から顔を守るため、腕で顔を覆った。


瓶は壁にぶつかった。

鈍い音を立て、跳ね返ってきた。

時が戻ったかの如く、机の上に静止した。


アリスは口と目を大きく開いた。


古びた紙札の文字が、赤く「私を飲みなさい!!」と怒った。


「わかったわ、飲めばいいんでしょ。」アリスは諦めて液体を飲むことにした。


瓶を持ち上げアリスは、口を付けた。

液体はするすると上昇し、口の中に少し流れ込んできた。


「ゴクリ」

アリスは液体を飲み込んだ。

味は甘みを帯び、喉を通過するとほのかな酸味が香る。


「美味しい!!すごくおいしい」

アリスは、瓶を傾け中身を一気に飲み干した。


胃の中に液体が溜まり、とても気持ち悪かった。

アリスは「グゥフ」とげっぷを出し、泡がいくつか飛び出た。


瓶に亀裂が入った。

アリスはとっさに、瓶を落とした。


瓶は割れてガラス片があたりに散らばった。

金色の鍵は床に落ちた。


アリスはガラス片を避けて鍵を拾う。

拾われた鍵は突然、白色の羽が生え動き出した。


鍵はアリスの頭を二周して、ドアノブに向かった。


ドアノブは口を開け、鍵を丸のみにした。


ガチャと音が鳴り、扉が開いた。


アリスは喜びより先に、強い吐き気が込み上げてきた。


とりあえず、扉へ向かって歩いた。


何かが、足元に垂れる。

それは血だった。


赤いアリスの血だった。


突然、鼻や口から大量にあふれ出す。


全身から、寒気と同時に痛みも感じる。


眩暈で、床に倒れ。

叫びもあげられないまま、意識が途絶えていく。


「残念、、バイバイ」とドアノブは淡々と言った。


アリスの意識は完全に途絶えた。


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