↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第六章「城」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/34

二十八話「城の客人」

アリスは深く呼吸をして、考えを巡らせた。

前にも、薔薇の色が変わった時があったわ。


あの時は確か、紳士そうで狂っている帽子屋に……。

そう、白色と言われた。

あのときは、いろいろあって髪飾りのことなんて忘れていた。


そもそも、この髪飾りと出会ったときからおかしかったわ。

薔薇の壁が行く手を阻んで、アリスの血を吸って髪飾りに形を変えた。

拾ったときの髪飾りの薔薇は、確か赤色だったはず。


あの時は、奇麗な髪飾りだと思っていたけど、やっぱりおかしいよね?


もう少しで、答えにたどり着けそうなのに閃かない。

このもやもやする感覚がアリスをいらつかせた。


アリスは意地になり、答えが出るまで考え込んだ。


血を吸った。

そう……だから、つまり?

血が何かと繋がっているのかな?


いろいろな考えを思い浮かべては捨て、答えを探した。


そうだわ!

アリスの顔に笑顔が広がった。


この髪飾りは血を取り込んだの。

だから、繋がっているのよね。

感情と!


黒は怒ったときの色ね。

うん、きっとそうだわ!

白色は……。


アリスは考えるのをやめた。

疲れたのだ。

心なしか体温が上がり、額に熱を帯びた気がする。


アリスは顔を上げ、手に持った髪飾りを付けた。

薔薇は、まだ黒かった。


そして、城の廊下をさらに進んだ。

廊下を進むと右側に扉を見つけた。

アリスは迷わずに扉を開けた。


部屋は客室だろう。

大きな窓があり、その近くに化粧台と鏡が置かれていた。

豪華なベッドが部屋の隅に二つ並べられ、

他にもクローゼットや机、椅子などの家具が置かれている。


部屋に客人はいなかった。


アリスは鏡に映っている姿を見た。

髪飾りがまがっていたので、しっかりと付け直した。


やっぱり、薔薇は黒に染まっている。

赤色に戻らないことを不思議に思った。

しかし、わからないことは考えても仕方ないと思い、部屋から出た。


廊下をさらに進むと、また同じような扉があった。

アリスはその扉も開けてみた。

部屋の家具とつくりは同じで、置かれている花瓶や絵画が違うだけだった。


アリスは部屋を出て廊下を進み、いくつもの扉を開けていった。

どの部屋を開けても変わらない景色に、アリスはまたいらついた。


だんだんと歩く速度が上がり、扉を力強く開けていく。


気がつけば、広間が見えないほど遠くまで来ていた。

次の扉も勢いよく開けた。

強く開けすぎたのか、扉が壁にぶつかり、バーンと大きな音が響いた。


扉の先の客室は、他の部屋と違っていた。

生活感が溢れている部屋で、所々に服や物が散らばっている。


部屋の奥には、揺り椅子に座っている老人がいた。


「こんにちは!」

アリスは老人を驚かさないように、ゆっくりと落ち着いた声であいさつをした。


老人には声が届いていないのか、ギーコ、ギーコと椅子を揺らしていた。


「こんにちは!」

さらに大きな声を出した。


老人は体をびくつかせて、ゆっくりと声のした方を見た。

アリスは老人にさらに近づいて、目線を合わせるように腰をかがめた。


老人は頭頂部の髪が抜け落ち、後頭部には長い白髪が残っている。

着ている服もボロボロだった。


「この城に来て長いですか?

書庫に行きたいのですが、場所はわかりますか?」

アリスは老人に大きな声ではっきりと聞いた。


「ダツヤニナ?」


「え?なんて言ったの?」

アリスは老人に聞き返した。


「ラカダ、ャジレダ?タキテッイハニロシテッヤウド?」

老人は低い声で早口に答えた。


アリスは戸惑った。

この世界で変わった生き物はたくさん見てきた。

あの小汚い三月兎ですら言葉は通じた。

内容は意味不明だったけど。


この老人の言葉は理解できなかった。


異国の言葉なの?

いや、違う?

なんとなく、発音は同じだと感じた。


「もう一度、ゆっくりと言ってみてください。」

アリスは老人に丁寧に聞いた。


「レサチタグスマイ。ゾヌシバレイニロシノコ。」

「ャジンケキハマサウオウョジ、ヨゲニ。」

老人はさきほどよりも、さらに早口で言った。


「えっとー、あの……。」

「書庫の場所は、わかりますか?」

アリスはもう一度聞いた。

もし、今回も意味がわからなかったら、部屋から出て行こうと決めた。


老人は黙って部屋の奥を指した。


「言葉は通じているみたいね!」

アリスは老人が指した部屋の奥を見た。


「ウガチ!」

老人は大きな声でアリスを叱った。


アリスは体をびくつかせて、思わず老人の方を見た。


老人はドアを指してから、部屋の奥を指した。


「あぁー、そういうことね!」

「つまり、この部屋を出て城の奥に書庫があるっていうこと?」

アリスは老人に尋ねた。


老人はゆっくりと大きく頷いた。


「ありがとう!助かったわ。」

アリスはそう言い、部屋を出ようとした。


その時、いきなり腕を掴まれた。

「痛い。」

アリスは思わず叫んだ。

掴む力は、老人の長細い腕からは想像できないほど強かった。


「ナャジコノンゲヨルスウユサヲイメンウノイカセノコ。」

「キトタッシヲツジンシラカムレソブア・ンラアノシムオア、ルアガウヨツヒルスンダツケハタナソ。」

長々と呪文のように唱えた。

アリスは一言も理解できず、頭の中が真っ白になった。


老人は唾をごくりと飲み込んだ。

「生まれた世界に帰れ!」


そう言った直後、老人はアリスの腕を離した。

そして、いきなり床に倒れた。

体を痙攣させ、苦しそうにもがく。


老人はまたアリスを掴んだ。

今度は足だった。

アリスを見上げ、血を吐いた。


気が付けば老人の目玉は床の上に転がっていた。


アリスを掴んだ手の肉は腐り落ちて、やがて骨だけになった。

骨になった手から力が抜け、アリスの足を離す。


老人の肉体は腐って剥がれ落ち、全身が骸骨となった。


あまりの出来事に、アリスは茫然とその場に立ち尽くす。


骸骨になった老人はまだ、アリスを見ていた。

そして、歯をガタガタと動かした。


「ギャーー!」

アリスは絶叫し、慌てて逃げた。


ガシャ、ガシャ。

丸いドアノブに手をかけたが、焦ってうまく回せなかった。

何度か試して、やっと扉を開けることができた。


外に出たアリスは、走り出した。

扉を閉める余裕もないほど焦っていた。


決して後ろを振り向かず、とにかく走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。