二十四話「真っ赤な嘘」
アリスは立派な城がそびえ立つ丘の下までたどり着いた。
「やっと着いた!長い道のりだったわ。」
額に流れる汗を拭った。
城壁の色は白色で、ハートに斧の印の旗が掲げられていた。
「赤色の工場と比べて地味な城だわ。」
アリスは城壁をじっくりと観察した。
ドカドカと、大勢の足音が後ろから響いてきた。
足音はアリスに近づいてきている。
アリスは慎重に後ろを振り返った。
数十人の赤い鎧の兵士が武器を構えていた。
アリスの額には冷たい汗が浮かんだ。
汗はゆっくりと頬を伝い、地面にポツリと落ちた。
気づかれないように、すり足でそっと後ろに下がる。
「貴様は盗人か?」
先頭の兵士がアリスに冷淡な声で聞いた。
「え?」
アリスの声は上ずっていた。
「女王様のハートを盗んだのかと聞いておるのだ!」
兵士は怒鳴り、喉元へ剣先を突き付けた。
アリスの額から汗があふれ出す。
「な、何も盗んでいないわ。」
弱々しく言葉を返した。
「そうか。それならいいだろう。」
兵士は武器を降ろした。
それに続いて、他の兵士たちも武器をしまった。
風がアリスの汗をさらっていく。
「武器をしまっていただいて感謝します。」
アリスはスカートをたくし上げ、軽く頭を下げた。
少し落ち着きを取り戻したアリスは、
「盗まれたハートとは、どんなものなのですか?」
「お菓子だ!」
「よりにもよって、女王様の大好物のお菓子を盗んだ愚か者が出たんだ。」
兵士が答えた。
ゴクリ。
アリスは唾をのみ込んだ。
額から、また汗が流れた。
汗を見た兵士が、
「お嬢さんは、普段からよく汗をおかきになるのかね?」
兵士はゆっくりと剣を構え直した。
アリスの鼓動が早くなる。
「そ、そうなのよ……。」
「母が何かの病気だと言っていたわ。本当に暑い日は大変なの。」
アリスは思いつくままに嘘を並べた。
「ところで、誰が盗んだのかわかっているのかしら?」
兵士が何か言う前に、アリスはすかさず聞いた。
「それが……わからないんだ。」
兵士は、大きなため息を付いた。
「工場の間抜けな連中の情報が錯綜しているからな。」
「鳥が咥えて逃げたとか、小娘が食べたとか。」
「お菓子が勝手に飛んで行ったなんて、バカげたことを抜かすヤツもいる。」
兵士はあきれたように空を仰ぎ答えた。
「あ!」
わざとらしい言葉がアリスの口から出た。
「そういえば、大きな鳥がハートらしい形のものを咥えて飛んで行ったわ。」
アリスは城と反対の方向を指しながら答えた。
「ありがとう。行くぞ、お前たち。」
兵士たちがアリスの示した方向に急いで向かった。
「ふぅ……。」
「何とかなったわね。」
アリスの表情に自然と笑顔が浮かんだ。
「あんなに大量にあるのに、一つ食べたくらいで大騒ぎするなんて。」
「傲慢な女王様ね。」
アリスは丘を登り始めた。




