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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第五章「赤の旅路」

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二十五話「赤の巨像」

丘を登り始めたアリスの前には赤いチューリップの花壇が広がる。

心地よいお花の香りが漂う。


長い坂道を一時間ほど登り続け、ようやく城にたどり着いた。


「なんて、大きな門なの!」

黒鉄でできた格子状の立派な城門に圧倒されていた。


城門の両脇には赤みがかった光沢を放つ茶色の大剣を構えた、

巨大な銅像が二体そびえ立っていた。

銅像からの威圧感は凄まじく、アリスの歩みを止めた。


「まさか、動かないよね?」

この像が襲ってきたらアリスの体なんて簡単に斬られてしまう。


アリスは手を振って銅像に反応がないか確かめてみた。

銅像は動かない。


「城の中に入ってもいいかしら?」

大声で赤い像に聞いてみた。


……。

やはり銅像は動かない。


アリスは城の門に近づいた。


父からもらった銀の首飾りが胸元で揺れた。

中央には澄み切った青い宝石がはめ込まれていた。

宝石を囲む銀細工は、花や葉を思わせる繊細な曲線で美しいハートを形作っている。


「え……光った?」

宝石が一瞬だけ赤く瞬いたように見えた。

アリスは首飾りを見つめる。


しかし、宝石は何事もなかったかのように青く澄んだ輝きを放っていた。


「光の反射かな?」

不思議に思いながらも、アリスは顔を上げて門をじっくりと見た。


格子の隙間は人ひとりが通れそうなほど広かった。


「立派だけど、お粗末な門だわ!」

アリスはそう言い放つと、門をくぐろうと一歩踏み出した。


その時、

「招待状がなければ通さない。」

赤い銅像がアリスの方に顔を向けて告げた。


……。

アリスは銅像のように固まった。


銅像はそんなアリスを見つめたまま動かない。


一歩、二歩とアリスは後ろに下がった。

短い沈黙が流れる。


「招待状は持ってないわ。必要なの?」

アリスは震える声で尋ねた。


「招待状がなければ通さない。」

銅像は、さきほどと同じ言葉を繰り返した。


「わかったわ。城の中に入らないわ。」

「青虫について知りたいの。何か知っているかしら?」

アリスはしぶしぶ城を諦め、銅像へ尋ねた。


……。

銅像はなにも答えない。


「図書館があれば入りたいんだけど、案内してもらえないかしら?」

「できないなら、地図でもいいわ。頂けないかしら?」

アリスは矢継ぎ早に質問を投げかけた。


……。


「お話できるんでしょ!」

「いいかげん、銅像みたいに振る舞うのやめていただけないかしら!」

アリスの声はいらだっていた。


……。


「もういいわ。何も教えてくれないなら……。」

アリスはそう言うと、さらに一歩、二歩と後ろに下がった。

そして、思いっきり走り出した。


ドーーン。

銅像の剣が地面に打ち付けられる音が響いた。


アリスは間一髪で足を止めた。

巨大な剣が目の前へ突き刺さる。


地響きが起こり、振動が足元から全身へ伝わった。


ドーーン。

もう一体の銅像も同じように剣を振り下ろした。


アリスは体制を崩してその場に倒れ込んだ。

それほどまでに激しい衝撃だった。


「招待状がなければ通さない。」

二体の銅像が言い放った。


アリスは圧倒されて立ち上がれない。


突然、

首から下げていた銀の首飾りが眩く輝き始めた。

中央の青い宝石は、内側から滲むように真紅へ染まっていく。

赤い光は周囲を照らし、アリスは思わず目を見開いた。


「お帰りなさいませ。女王様!」

巨大な銅像は剣を足元に刺して、片膝をついて頭を下げた。


ギーーイ、ドシャン。

格子状の黒い門はゆっくりと開いた。


銀の首飾りは城へ導くように、アリスを引っ張り始めた。

アリスは立ち上がり、促されるように門に近づいた。


「痛っ!」

城へ入るのを拒むように、髪飾りがアリスの髪を引っ張っていた。

不意に襲った痛みに、アリスは思わず声を上げた。


互いに反対方向へ引っ張り合い、首飾りは首の後ろへ食い込んだ。

苦痛の表情が浮かび、目から大粒の涙が出た。


アリスは首飾りを必死で掴んで抵抗した。


「引っ張らないで、城の中に入りたいの!」

アリスは声を絞り出して本気で叫んだ。

叫びが届いたのか、髪飾りも首飾りも力を失ったように静かになった。


光は静かに消え、宝石は元の青い輝きを取り戻した。


「お父様からもらった首飾りが、どうして反応したの?」

「もしかして、お父様もこの世界に来たことがあるのかしら?」


城の中に答えがあるかもしれない。

そう願いながら、アリスは開かれた門をくぐった。

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