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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第五章「赤の旅路」

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二十三話「赤の工場」

工場の入り口には誰の気配もない。

扉は開いていた。


アリスは堂々と工場の中に入った。


ガシャン、ガシャン。

ギィーコ、プシュー。


錆びている歯車が回り、蒸気が勢いよく吹き出す。

機械の動作音が工場のいたるところで鳴り響いていた。


耳障りの音を嫌って、アリスは耳を塞いだ。

工場の中をずかずかと進んでいった。


歯車を回し、装置を動かしている赤い鎧を着た兵士を見つけた。


アリスは大きな声で、

「こんにちは! こちらの工場では、なにを作っているのかしら?」


返事は返って来ない。


「す、い、ま、せん!聞こえますか?」

アリスはさらに大きくハッキリと言った。


……。

兵士はもくもくと作業に没頭していた。


アリスは他にも作業する兵士を見つけて話しかけた。

しかし、答えてくれる者は誰もいなかった。


諦めて、工場がどんな物を製造しているのか探すことにした。


工場はとても広く、アリスはさらに奥へ進んだ。


ガッコン、ガタガタ、プシュー。

機械音が響く。


アリスの額に汗が浮かんでいた。

「蒸し暑くて苦しいわ。」

奥へ進むほど熱気が増していった。


人の気配は消え、機械だけが動いていた。


錆び付いたコンベアが工場の奥まで続いていた。

棒状の機械が上下に動き、コンベアの上の何かを何度も押しつぶしていた。


アリスはコンベアにさらに近づいた。


コンベアにはハート型の金型が並んでいた。

その型に赤い液体が注がれていく。

液体は棒状の機械で何度も圧縮される。

圧縮されるたび、少しずつハートの形になっていった。


「ここは、お菓子の工場だわ!」

アリスは赤いハートのお菓子を見て叫んだ。


流れていくハートのお菓子を必死で追いかけた。


コンベアは壁に開いた穴へ続いていた。

アリスもお菓子を追い、そのまま穴の中へ入っていった。

穴は工場の外に繋がっていた。


外では、赤い鎧を着た兵士達がハートのお菓子を紙で包み、箱に入れていた。

その箱を他の兵士が荷車に積んでいた。


「速く運ばなければ、女王様がまた機嫌を損ねる。」

荷物を運ぼうとする兵士が忙しそうに不満を言った。


アリスは我慢できずに工場から流れてくる、お菓子を手に取った。


「熱い!」

お菓子は焼けるように熱く、思わず手を離しそうになった。

指先は赤く腫れていた。


驚くことに、お菓子は溶けていない。

それどころか、固まっている。


フーフーとお菓子に息を吹きかけた。

ガリ!

アリスはお菓子をひと口食べた。


ガリ。

またひと口。

手が止まらない。


「なにをしているんだ。それは、女王様のものだぞ!」

兵士の怒りの声が響く。


アリスは驚き、思わず手を上に掲げる。

手に持っているお菓子は離さないように、しっかりと握った。


「決まった個数を納品できなければ、過ちを起こした我々のみそぎが……。」

兵士はガックと膝を落とした。


「これ以上の罰は…罰は、打ち首…。」

「さらに、投獄になるんだぞ!」

兵士は怒りにまかせて地面を叩いた。


兵士達の視線がアリスに集まる。

皆が一斉に怒りの声を上げる。


工場の機械音と兵士たちの怒号が重なった。

アリスの耳が壊れそうなほど響いた。


「ごめんなさい。」

アリスはハートのお菓子を手に持ったまま、急いでその場から逃げた。


兵士の怒りの声は、鳴り止まない。



遠くまで走ったアリスは立ち止まった。

兵士たちが追ってくる様子はない。


アリスは夢中でお菓子を食べた。


その後、城を目指して歩いた。

笑顔を浮かべながら。


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