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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第五章「赤の旅路」

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二十一話「赤の芸術」

感覚も、視界もなにもない世界。

アリスは、彼女が来るのを待っていた。


そして現れた。


女「あらら、また来たのね。お帰り。」


「お帰りじゃないわよ。

あなたが、騒がしい場所へ行けって言ったから!

また、ここに来る羽目になったのよ!

しかも、今回は食べられた。帽子。帽子によ!」


アリスは、ありったけの怒りをぶつけた。


「あらまあ、それは大変だったね。ご苦労様。」

女は、人ごとの様に言った。


「そんなことよりも、青虫の情報を頂戴!」

アリスは女の態度にさらにイラつき、怒鳴った。


「うーん、そうねー、青虫は頭がいいの、とてもね。」


「それと、本が好き。でね、さらに本よりも好きなものがあるの。

それは、水煙草みずたばこよ!」


女はいつものようにゆっくりと話した。


「居、場、所、は! ドコ!!」

アリスは吠えた。


「怒鳴るから、教えないよー。」

女はアリスを茶化すように呟く。


「ふざけないで!!」

アリスは空に向かって吠えた。

けれど、叫びは届かない。

気が付くと、元の世界にいた。


「なんで、いつもいいところで戻されるのよ。」

アリスは地面を蹴った。


地面に八つ当たりしたアリスは、少し落ち着きを取り戻した。


改めて、体を確認した。


食べられたのに体に異常がない。

服も新品そのもののように綺麗だった。


この世界は、謎が多過ぎる。


謎の中でも生き返ること、これだけは本当に理解ができない。


「この世界の住民も生き返るのかしら?

……さっきの兎も?」


「うーん、考えれば考えるほど疑問が湧いてくる。

まるで、うーん、まるで……何も思いつかないわ。」


「きっと、お茶会で変な物を食べたからだわ。」


しばらく、その場で行ったり来たりした。


アリスは大きく深呼吸した。


「疑問を解き明かすには、情報が足りなすぎるわ。」


「それじゃあ、行きますか。」

アリスはまっすぐ目の前の道を進み始めた。



しばらく歩くと、気になる木を見つけた。


その木には、鋭利な何かで抉られた文字が刻まれていた。

「赤で装飾された芸術の木、この先。」


さらに歩くと、別の木には、

「作品の名は、『映病贄』。驚くほどに完璧。」


アリスは首をかしげた。

「映…病…贄……?」

「なんて読むのかしら。」


その隣の木に、

「時間喰う者、我なり。天才、即ち我なり。」

と刻まれていた。


「また、時間喰い。しかも芸術家?」

アリスは酸っぱいものを食べたときの様な表情を浮かべた。


木には、不穏なことに赤い血が付いていた。

生々しい血の匂いがする。


血は地面にも点々と続いていた。

痕跡を辿ると、千切れた腕が落ちていた。


アリスは顔を背け、口を塞ぐ。


「た、たすけ…て。」

弱々しい、声が聞こえる。


アリスは見たくないものを見てしまった。

残酷な芸術を。


大きな木に赤い色の鎧を着ている兵士が、木の枝に刺さるように吊るされていた。


一人や二人ではない、数人が飾られていた。


兵士は、血だらけで腕や足が欠損していた。

鎧の胸にはハートの中に処刑人の斧の紋章が示されている。


処刑人が、木に飾られていた。


これの何が芸術なのか理解できない。


アリスは何とか助け出そうと考えた。


近くに、兵士の物だろうか、剣が落ちていた。


剣を拾う。

思っていたよりも重い。


アリスは木を倒そうと、剣を掲げて思いっきり薙ぎ払った。


ゴォン。

鈍い感触がアリスの腕に伝わる。


「痛い!」

アリスは思わず悲鳴を上げた。


剣は木の幹に命中していた。

しかし、幹は少し抉れるだけだった。


アリスは何度か切りかかる。

指から血がにじんでいた。


木に傷がついているが、倒れる気配がない。


「ハァー、ハァー。」

アリスは剣を地面に突き立て、息を整えていた。


突然、幹がミシミシと音を立てた。


木が勝手に揺れる。

揺れはどんどん大きくなり、兵士たちが枝から落ちていった。


アリスはその光景をただ茫然と眺めた。


「ウゥゥ……。」

兵士の呻き声でアリスは我に返った。


「何があったの?」

アリスは比較的に軽傷な兵士に聞いた。


百舌鳥もずに作品にされちまった。

しかも作品名は、『はやにえ』だとよ。」


「まったく、俺らを何だと思ってるんだか。

 これだから時間喰いのやつらは、恐ろしい。」

兵士はアリスに感謝しながら言った。


「それから、頼む!俺たちにとどめを刺してくれ。」

男がアリスの腕にしがみつき懇願した。


アリスは腕を振りほどいた。

「嫌よ、人も生き物も殺したことなんかない。」

「殺したくもない。」


それを聞いた男は、

「死んでも生き返るんだから、殺してくれ。」

「早くしないと、奴が戻ってくる。」

男の顔に恐怖の表情が広がる。


「無理よ!できないわ!」

「本当に生き返るなら、自分でとどめを刺して。」

アリスは男に剣を渡した。


「できるわけないだろ。自分の命を奪うなんて、怖い!」

男は堂々と主張した。


「兵士でしょ! 勇気を出しなさいよ!」

「できないなら、他の人を助けたら。」

アリスは冷たく言い放つ。


「そうだな、お嬢さん、ありがとう。」

男は頭を下げた。


「それから、早く逃げたほうがいい。」

「百舌鳥は危険すぎる。」


「しかもここら一帯は、時間喰いの縄張りだ。

少し行けば、女王様の領地にたどり着く。」


男はそれだけ言い残して、他の兵士のもとへ剣を引きずりながら向かう。


アリスは決して振り向かないと覚悟を決め、急いでその場を過ぎ去った。


後ろから、剣を振るうような音がした。

その直後、ドシ、と重いものが落ちた音も聞こえてきた。



どれくらい時間が経過したか、ふと疑問が浮かんだ。


「あの兵士が他の兵士の命を奪ったら、誰が自分の命を奪うの?」

「うーんでも、他の兵士が生き返るから、すぐ殺してくれるのかな?」

「いや、そもそも同じ場所ですぐ生き返るの?」


何も見ていないアリスに、答えなどわかるはずもなかった。


「百舌鳥は…。」

言いかけた言葉を飲み込んだ。


アリスは頭を横に振り、百舌鳥のことは何も考えないようにした。


「女王様……?」

「どんな人なんだろう?」


アリスは女王の領地を目指した。


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