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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第一章「獲物」

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二話「白兎と獣」

アリスは必死に白兎の後を追いかけた。

夢中で追いかけるあまり、周りの変化に気が付かなかった。


さっきまで茂みだったはずなのに、気づけば周囲は木々の生い茂る森だった。

景色の変化にも驚いたが、何より目を奪われたのは、猛獣の足跡だった。


アリスの顔すらも覆い隠すほど巨大な足跡。

先ほど聞いた唸り声が、頭の中で何度も鳴り響いた。


恐怖で、結婚式に戻ろう。

そう考えるまで、怖くなっていた。


でも、人の言葉をしゃべる白兎への好奇心が勝り。

失った時間を取り戻すように、アリスは全力で駆け出した。


その表情は、不思議と笑っていた。


やがて道は険しく、木々は道を阻み、着飾ったドレスはボロボロになった。

ドレスの色と合わせたガラスの靴は、脱げて、どこかに消えた。


「どうして、足跡が消えたわ」アリスはあたりを見渡しながら痕跡を探した。


「ミシッミシ」と、後ろから枝を踏みつぶす鈍い音が聞こえる。

冷や汗がしたたり、アリスの脳内に嫌な考えが駆け巡る。


振り返ったら、獰猛な獣がアリスを食べようと牙をむきだしている。

そんな、光景を想像していた。


アリスは地面に落ちていた枝を拾い上げた。

覚悟を決めて、枝を前に突き出し、振り返った。


心臓が激しく鼓動する。

耳に脈打つ音が鳴り響く。


目の前に広がるのは、緑の木々。

その光景は、緊張したアリスの心を癒してくれた。


ドレスが破れ、靴も脱げている。

こんな姿をメリーサが見たら、どれだけ激怒するだろう。

「きっと結婚式も中止になる。そうなればいいのに。」

アリスは願望を小さな声で唱えた。


広く、木々が生い茂る空間は、その言葉を一瞬で飲み込んだ。


それと同時にアリスは唾を飲み込み、止まっていた冷や汗を再び流した。


ゆっくりと近づいてきたものは、茶色の大きな岩?

違う、巨大な熊!!

アリスの体など簡単に切り裂けるほど大きな爪。

人間を一口で飲み込めるほど大きな口をしていた。


アリスの顔は真っ青になっていた。


頭の中は、真っ白より無色で、何も考えられていない。

違う。

ただ、一つの考えだけが頭に浮かぶ。

死だけだ。


「プオーン!」突如、軽いラッパの音が鳴り響いた。

この場所に最もそぐわない音だった。


それを聞いたアリスは少し、正気を取り戻した。


恐怖で見えていなかったが、巨大な熊の背中には白兎が乗っていた。

追っていたはずのものに、追われていたのだ。

色々な思考が、アリスの頭を駆けめぐった。


不思議なことにラッパの音を聞いた瞬間に体が軽くなり、アリスは後ろを振り返り、全速力で逃げ出した。


「突撃~!!」天に轟くほど大きな叫びが響いた。

その声は地鳴りのように低かった。

白兎と似ている声色だった。

その声はアリスの体に響き、木々を揺らし森の奥まで響き渡った。


アリスは振り向かないと決めた。

全速力で走った。


ドシン、ドシン。

巨大な熊が、行く手を阻む木々を鋭い鉤爪で容赦なくなぎ倒し、アリスを追いかける。

その音はどんどん大きくなる。


このままだと、追いつかれる。

そうわかっても、アリスにはどうしようもない。


「ハァッ……ハァッ……」と熊の生暖かい息遣いが耳元に迫る。

血肉を食い荒らしてきた、獰猛な獣の匂いが鼻まで届いた。


もう無理だと諦めた瞬間。


目の前から地面が消えた。

いや、落下しているのだ。


気づいたときには手遅れで、体が重力に負け、落下し始めた。


空中で必死にバタバタと腕と足を動かした。

無意味なのはわかっているが、体が勝手に動いていた。


落下した体は、木の枝に叩きつけられた。

「痛っ……」アリスは声を上げ、草木の上に落ちた。


「グルルルル」涎をたらしながら、崖の上で熊が唸っていた。

アリスは、きしむ体を無理やり動かし、その場から去った。


しばらく歩くと、周りの景色は一変し、目の前に巨大な穴が現れた。

穴は巨大で、底など到底見えなかった。


深淵がアリスを覗いていた。


読んでいただきありがとうございます。

気になった場面などあれば、感想いただけると嬉しいです。

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