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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第四章「お茶会」

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十八話「道ではない、道」


アリスの足取りはとても軽い。


優雅な鼻歌を奏でながら、丘を進んだ。


道はやがて途切れ、深い谷が現れた。


鉛の髪飾りのように、

アリスの心も暗くなった。


アリスは崖の上から谷底を見下ろした。


谷は不気味な霧を纏う。


霧は嘲笑うかのように谷底を隠した。


アリスは崖から降りられる場所を探した。


周りには、朽ち果てた木製の看板が一つだけあった。


看板に近づいた。


朽ち果てた看板には、乱雑な文字が書かれていた。


「この先、この崎、この詐欺。」


文字は、消え。

新たな文字が出現した。


「静寂な!お茶会、永幕。」


「開幕じゃないの?」

アリスは看板に聞いてみた。


文字は、すぐに置き換わり、

「静寂な!お茶会、永眠。」


「永眠?」


「お茶会に参加したいんだけど、どうやったら、

そこに行けるの?」


「そこ、底、齟齬。」

看板の文字がアリスを煽る。


「お茶会の行き方を教えて!」


アリスは苛立ち、大きな声で言った。


「お茶会、終焉。」


「開幕。お茶会、開幕。」


「参加者、求む。

 参加者求まない。」


次々に文字が書き換えられた。


「お茶会 の 場所 は どこ?」


アリスは、ゆっくりと大きく言葉を放つ。


「来るもの拒む。去る者拒む。」


その文字を最後に、

アリスは来た道を引き返した。


おかしなことに、

目の前には谷。


そして、

同じ看板。


アリスはもう一度、道を戻った。

同じ谷、そして看板。


「そうだと思ったよ」

アリスは変わらない景色にうんざりして愚痴をこぼす。


「お茶会へ導く道蟻。信じて進め。」


「消えた、階段に注苛!」


また、看板の文字が変わっていた。


「相変わらず、言葉の間違いが多いわね。」


「うーん、谷には見えない階段があるのかしら?」


アリスは恐る恐る足を谷に出した。


足には硬い感触が伝わる。

一歩ずつ、ゆっくりと階段を下って行った。


やがて、アリスは霧に包まれていく。

視界も、階段も何も見えない。

それでも、前に進んだ。

いつの間にか、見えない階段は見える道となっていた。


やがて道は緩やかな上り坂となり……。

丘へ続いていた。


アリスの表情は戸惑いを隠せないでいた。

霧が晴れ、周りの景色が鮮明になる。


そこには、さっきまで見ていた丘があった。


アリスは止まり。

一呼吸おいて、大股で歩き出した。


谷底を見下ろした。


「笑わないでよ。」

またもや、霧が嘲笑ったように見え、アリスは思わず叫んだ。


お茶会は優雅なもの。

しかし、この世界のお茶会は礼儀正しいはずがない。


もし、お茶会に参加できれば、

青虫の手がかりが見つかる気がした。

いや、確信していた。


アリスは看板に詰め寄った。

「どうすれば、お茶会に行けるの?」


アリスはむきになって看板を問い詰めた。


看板は、後ろに下がる。


すかさず、アリスは距離をつめる。

腕を組み、トン、トンと地面を踏み鳴らす。


看板は汗をかいているのか、色が滲んだ。


「すぐに答えて!」

アリスは眉間にシワを寄せて怒鳴った。


看板は方向を替えて、尖っている方を崖に向けた。


「見えない谷の階段は、下ったわ」

「その結果がここよ!」

アリスは汚れた靴を指した。


看板は、強調するように谷の斜め上を指した。


「なるほど! 上に登ればいいのね。」

看板の意図をくみ取り、聞いてみた。


看板は肯定するかのように、

素早く二回お辞儀をした。


谷の端に寄るアリス。


「降りる階段なのに、どうすれば昇れるんだろう?」

アリスは試しに、大きく足を持ち上げ、階段を昇るように進んでみた。


驚くことに、

降りるはずの階段は、いつの間にか昇る階段へと変わっていた。


アリスは、どんどん階段を昇っていく。


突然、

階段を踏んでいる感覚が無くなった。


違う。

見えない階段が、本当になくなった。


「キャー」

アリスは落下した。


落下した?

していない?

なんだろう、不思議な感覚。


紙が机から落ちるように、

ゆっくりと、ゆらゆら落ちていく。


霧がアリスを包み込み、落ちる速度はさらに緩やかになった。


風が心地よく髪をなびかせる。

あまりの気持ちよさに、アリスは思わず目を閉じた。


アリスの足に何かを踏んでいる感覚が蘇る。

目を開けると、地面を踏んでいた。


谷底に着いたのだろう。

景色は、いままでと明らかに違う。


「ふー、着いた。」

アリスの表情は明るい。



ガシャン、バリバリ、パリーン。


喧しい音が遠くから響く。


「五月蝿いわね。」

「音がする方がお茶会の会場かしら?」


「それじゃあ、行きますか。」

アリスは、招待状の届いていないお茶会へ向かった。


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