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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第四章「お茶会」

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十七話「髪飾りではない、髪飾り」

「あら! いらっしゃい。」


いつもの女の声が聞こえる。


「芋虫……えーと、青色の青虫を探してね!」


「騒がしい者達に聞くのがおすすめだよ。」


「行ってらっしゃい!」


「そうだ!」


女は何かを思い出したように続けた。


「贈り物は、おは……」


アリスは最後まで聞くことなく、目を覚ました。


ザー、ザー。

滝から水が落ちる。


冷たい水がアリスを包つみ、ゆっくりと体を押し流していた。


川の水位は低い。

アリスは立ち上がった。


重い体を引きずりながら、バシャーン、バシャーンと大股で川を渡る。


やがて、陸に辿り着いた。


川のせせらぎ、新鮮な空気がアリスに一時の癒しを与える。


体の傷、穴の開いた服は元の姿に戻っていた。


しばらくの間、

じっとしていた。


やがて耳に入った水を抜きながら、女の言葉を思い返した。


「青虫か…しかも青色。」

「大きいのかな?」


アリスは苦虫を噛み潰したような表情になった。


「騒がしい者達ね。」


「うーん……。」

目を吊り上げて思い返す。


「いままで会った連中は皆、酷かったわ。」


「これから、さらに賑やかな生き物と会うのかしら。」


「あーあ。」

「もう、うんざりだわ。」


アリスは鬱憤を晴らすように呟いた。


言葉は川の音にかき消される。


「女の言葉に意味があるの?」


「青虫を見つけたら、何があるのかしら?」


アリスは顔を横に何度か振った。


「迷っていても、仕方ないわね。」


冷たい水をすくい、飲む。


「それじゃあ、行きますか。」


一呼吸置いて、

アリスは川沿いの砂利道を歩き始めた。


やがて道は緩やかな上り坂となり、丘へ続いていた。


川のせせらぎは少しずつ遠くに聞こえる。


アリスは丘の上に辿り着いた。


先ほどまでの青く清らかな景色とは違い、

鮮やかで派手な光景が目に映る。


そこには、

地面を埋め尽くす真っ赤な絨毯のように、

彼岸花が咲き誇っていた。


目を凝らすと、

彼岸花が咲いていない場所があった。


そこは、蛇のようにくねくねと曲がる道になっていた。


アリスは何かに導かれるように、鮮やかな道を進む。


彼岸花が途切れた。


その先に、

漆黒の墓石がひっそりと佇んでいた。


アリスは墓に近づいた。


墓石には蛇の模様と文字が刻まれていた。


「サラザール·サングイネア·フランマ

――穢レタ血ヲ永炎ニ灯ス。

 旅路ニ赴ク。」


「誰の墓なんだろう?」


「勇ましく、高貴で綺麗な名前ね。」


アリスは手を合わせて黙祷を捧げた。


静寂を破る風が吹き、金色の髪をなびかせた。


青い髪留めのリボンを攫っていく。


「待って!!」

アリスはリボンを追いかけた。


追いかけた先には、

茨の壁が行く手を阻んでいた。


茨には、魅惑的な薔薇の花が咲く。


薔薇は赤を始めとして、幻想的な黒や青。


目立たない白色の薔薇が、アリスの心に刺さった。


そのほかにも、多彩な色が咲き乱れていた。


不思議なことに同じ色はない。


アリスは怪しくも美しい風景に、心を奪われていた。


その時、茨に引っかかったリボンが目に入った。


アリスは近づいて取ろうとした。


茨の棘が腕を刺し、血が流れた。


傷は浅いのに、血がたくさん出ている。


白色の薔薇は血を吸い上げた。


ゆっくりと不吉な時間が流れる。


白と赤の花びらが入り交じる、不気味な薔薇へと変貌した。


突然、目の前の壁が消えた。


青色のリボンも、痕跡を何一つ残さず消えていた。


アリスは、呆然とその場に立ち尽くす。


壁があった場所に、

赤色の薔薇が装飾された、鉛色の髪飾りが落ちていた。


アリスは鉛の髪飾りを拾い上げ、髪に飾った。


鉛色とは思えないほど、金色の髪に自然と馴染む。


アリスは賑やかな者達を探す。


旅路に赴いた。


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