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不死の国のアリス  作者: 幽幻乃 紫
第三章「森」

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十五話「滑稽」

アリスは颯爽と森を駆け抜けた。


「はぁ、はぁ」

息は乱れ、倒れた木に腰を下ろした。


「さっきの、果物はなんだったのかしら?

あんなものを食べて平気?」


アリスは、体に異変がないか確かめた。


体調はいたって健康そのものだった。

気分も、とても良い。


「グゥースカ、グゥースカピー」


休憩するアリスの耳に、大きないびきが聞こえる。


アリスは音のする方へ、忍び足で近づいた。


そこには、

白兎が仰向けになって、深い眠りについていた。


白兎の手には懐中時計が握られ、

少し遠くに、小さなラッパが放り出されていた。


アリスは、周りを注意深くみた。

熊の寝息も、気配も無い。


足音を立てないように、ゆっくりと白兎に近づいた。


懐中時計が奇妙な見た目だった。


時計の文字盤はローマ数字。

III、VI、IX、XIIの文字は太い黒で大きく刻まれ、

斜めに傾いて読みづらい。


思わず、アリスの顔も斜めに向いていた。


秒針の形は独特だった。


真っ直ぐの秒針。


ぐにゃぐにゃ曲がり、どこを刺しているか分からない秒針。


直角に曲がる秒針。


三本の針は、どれも動いていない。


「こんなので時間を確認しているから、女王様に打ち首にされたんだわ」


アリスは結婚式場で会った、白兎の言葉を思い出していた。


「起こしたら、怒るかな。

 縄で縛りつけたら、何か聞けたかもしれない。」


アリスは悔しくなった。


アリスは、他にも変な物がないか辺りを見た。


自然と、ラッパに目がいく。


「もしかして、大きくなっている?」


アリスはラッパに近づいた。


「やっぱり、大きくなっている!」


ラッパを拾うと、アリスの手に馴染む大きさに変化した。


「このラッパも不思議なのね。」


「吹いたら、どうなるかしら」


白兎を見て、いたずらな笑顔を浮かべた。


「ドコォ、ドコォ」


近くから、大きな足音が聞こえる。


アリスは音のする方を見た。


そこにはなんと、

熊が魚を咥えていた。


「キャー」


アリスは悲鳴を上げた。


「な、な、なんだー?」


白兎が飛び跳ね、叫び声を上げる。

自身の体長よりも高く跳んでいた。


「グァーー」


熊が魚を足元に落として叫んだ。


アリスは熊の迫力に負け、腰が引けた。

そのまま、不格好な姿で地面に座り込む。


襲われる、そう感じたアリスは腕をバタバタと動かした。


熊は、踵を返してアリスから逃げた。


アリスは熊の予想外の動きに目を丸くした。

気づけば、口を大きく開けたまま間抜けな顔になっていた。


熊の逃げる姿はあまりにも、

滑稽だった。

足と腕を慌ただしく動かす。

体勢を崩しては、起き上がる。

だが、思ったほど進めていない。


「ア、ハハハァ」

アリスは、声を出して笑った。


「待て! 弱虫目が、逃げるな」

アリスの耳に白兎の渋い声が聞こえる。


白兎は懐中時計を落としては拾い、また落としては拾いながら熊を追った。


「ア、ハハハァ、ワァ、ハハハァ、」

アリスは手を叩き、行儀の悪い笑い声を上げた。


白兎はやがて、視界から完全に消えた。


「ラッパも忘れているよ」


白兎には、聞こえない声で言った。


アリスは、ラッパを鞄に入れてみた。


ラッパは驚くことに小さくなり、カバンの中に納まった。


「それじゃあ、行きますか」

アリスは立ち上がった。


「そこの、お嬢さん

 この辺で、緑色のドードをみなかったかい?」


アリスの背後から、知らない男の声が聞こえた。


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