十一話「不思議」
??「おはよう!目覚める時間だよ」
女性の声がした。
アリスの目は覚めない。
でも、意識はあった。
とても奇妙な感覚だった。
寝ているのに、意識があり。
意識があるのに、寝ている。
夢なのか? 現実なのか?
死んでいるのか。
生きているのか。
アリスには、わからない。
??「おはよう!目覚める時間だよ」
また、女性の声。
「ここは何?死んだの?」
「あなたは、誰?」
アリスは、矢継ぎ早に言葉を思い浮かべた。
「うーん、どこだろうね」
女はあいまいな答えを言った。
さらに、女は続けた。
「わたしは、だれ?それとも……なんだろうね?」
「アリス、わたしはあなたを知っているよ」
「とっても不思議で、可笑しな存在なの」
「それと、館から運ぶの大変だったから、感謝してね」
「……案外、簡単だったけれど」
女は独り言のようにつぶやいた。
「時間って不思議よね、いらない時に長くて、欲しいときに短いの」
「ごめんね、ドレス汚かったから、捨てちゃった」
「あなたは、死んで、生き返る。何度も」
「痛いけど、頑張ってね」
「また、その時にお話ししようね。またね。」
少し間をおいて、女は、
「あ、忘れてた。探すの青・・・」
アリスは意識を取り戻した。
巨木に寄りかかるように座っていた。
アリスは、さきほどの体験を思い返していた。
「夢?空想?
女の声は、どこか聞き覚えのある声だった。」
「それに、館はどこ?」
アリスは辺りを見た。
不気味な館の痕跡はどこにもない。
木々が生い茂る、森の中にいた。
腕の血色がいい。
「あれだけ、血を抜かれたのに、なんで?」
体を眺めたアリスは、さらに目を丸くした。
服が違う。
白のブラウスに父からもらった首飾り。
鮮やかな青いジャケットとスカートを身につけていた。
靴と革製の鞄は木と同じで、深みのある茶色だった。
まるで着せ替え人形のように、綺麗に着飾られていた。
心地よい風が吹き、
結われた髪がやさしく揺れた。
アリスは首飾りを触って、少し落ち着きを取り戻した。
空を見上げた、アリス。
木漏れ日を浴び、
アリスの瞳に青い光が戻った。
アリスは勢いよく立ち上がった。
そして、軽く飛び上がった。
服も靴も、アリスに馴染み、動きやすい。
「この世界も美しい。」
アリスはそう呟き、
森の奥へ歩き出した。
その表情は、
夢を描いた少女のような、
笑顔だった。




