幼なじみ1
馬車は止まり、少しの間傾いた側の座席に、向かい合わせのまま、4人共寄ってしまった。
「みんな、大丈夫か?」
「私は大丈夫です。エイス、シィ様、ケガはありませんか?」
ロルとリィルに声をかけられて、エイスはシィに寄りかかられたまま、大丈夫だと答えた。するとシィが慌てて馬車を飛び出していく。
「シィ、どうしたんだ?」
後を追ってエイスも馬車の外に出た。シィは、先ほどすれ違って通り過ぎたらしい、別の馬車を厳しい顔で見つめている。
「あの馬車から、エイスの魔力を強く感じたわ」
「ファインの店で買った魔法道具を身に着けてた客
じゃないのか……?」
「うまく言えないけど、強い気持ち? が込められてる? みたいな……?」
どうにもはっきりしない言い方のシィだが、エイスには、ひとつだけ、心当たりがあった。幼なじみのエレクシアに贈ったペンダントだ。まだ、エイスが魔法道具に魔力を込める仕事を、始めたばかりの頃。初めて成功した品がペンダントで、嬉しくて。エレクシアにも知って一緒に喜んで欲しくて、売らずに彼女に贈ったのだ。
それかもしれない、と、遅れて馬車から出てきたロルとリィルに事情を説明し、エイスは言った。
「あの馬車を追いたい。まだ、エレクがいると決まったわけではないが……」
「何を言ってるんだ? 幼なじみなんだろ?」
「確認は大事ですよ。行きましょう」
ロルが馬車の御者に命じると、馬車は向きを変え先ほどすれ違った馬車を追うことになった。かなりスピードが出ていたから、追いつくのは難しいかもしれない、という話だったが。
御者の言った通り、森の中をいくら進んでも、目的の馬車はなかなか見えてこない。焦るエイスに、離れすぎないなら場所はわかるわ、とシィから心強い返事。
しかし、問題がひとつ。森を抜けたらすぐ、隣国カリエ公国との国境だ。国境を越えるには通行許可証がいる。エイスがそのことを言い出す前に、ロルがこんなこともあろうかと! と懐から何か取り出す。王の署名入りの通行許可証だった。王ってこういう時便利なんだなーと、ぼんやり思うエイスであった。
無事、国境を越えて、馬車は走る。
「シィ、どうだ?」
「まだ、感じ取れる範囲にはいると思うわ」
「方向はわかりますか?」
「あっちよ」
エイスが聞き、シィが返す。そこにリィルも入ってきた。ただ、シィが指差した方向は、先ほど馬車が通り過ぎた場所だった。シィの話を聞いてすぐさまロルが御者に指示を出す。また、馬車は方向を変え進む。
ところが、シィが指差した方向へ走り出した馬車は、程なくして止まってしまった。道がなくなっている。目の前には茂みが広がっていた。
「不自然だな」
「ええ」
馬車中から少し見ただけでロルとリィルが見破った。ここからは降りて歩こう、とロルがみんなを促す。目的の馬車は近いかもしれません。リィルの言葉に、エイスは立ち上がる。
馬車を降りて、茂みの隙間から道の向こうを覗き込んだ3人は息を呑む。
「えっ……?」
「こんなことが、あり得るのか……?」
「……し……しょう……?」
茂みの向こうにいたのは捕らわれた幼なじみのエレクシア・トールと、彼女を小突いて歩かせる、エイスの師、スパーク・ホワイトの姿があった。
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