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真相3

 ロルの静かだがはっきりとした声が部屋に響く。

「俺の名はロレイス・ディナ・テュリクス=Ⅲ世」

一応、王様やってる、とロル―ロレイス王は笑い、金髪のウィッグを取った。すると長い青髪が流れて街角の露店によく置いてある王の肖像画と同じになる。エイスは先ほどまでの考察で、おそらくそうだろうと思っていたから、ただ、そうか、と頷いた。


「思ったより驚かなかったな、エイス」

 正体を明かしたロルは、意外そうな顔をしている。

「宰相様が分かりやすい反応をされていたからな」

「アーレイか……あんまり顔色変わらないから大丈夫だと思ってたが、そこでバレたか」

 はっはっは、と笑うロレイス王は、ロルと呼ばれていた時と何ら変わりが無い。


 リィル、とロルに呼ばれ、彼女も名を明かした。

「私の本当の名は、セラン・ロンギュスト。王の護衛騎士を務めています」

 名を明かすと同時にリィル―セランの髪が伸び、ストレートの濃いブラウンになった。身体も少し、縮んだ気がする。彼女も、街角で肖像画を見かけたことがある。

「エイス、私はあなたと故郷が同じなんですよ?」

 えっ、とエイスが驚くと、ロレイス王は不満そうである。そして、俺の時もそのくらい驚いて欲しかったと、何かぶちぶち言っている。エイスは思わず笑ってしまった。

「ふっ、ははっ。ロル、王さまなんだろう? そんなことでふふっ。はははっ」

ロレイス王と、護衛騎士セランは目を丸くしている。

「エイス」

「そんなふうに笑えたんですね」

 

 2人がエイスを微笑ましく見ていると、シィが後ろからエイスの目を両手で塞ぐ。

「笑ってもいいけど、今は、違うわ」

「シィ、離してくれ」

「だめよ。ちゃんと、泣きなさい?」

 すると、エイスの中で何かが決壊した。ぼろぼろとシィの手の隙間から流れ落ちていくものがある。2人は反省した。彼は師を失った事実を知ったばかりだったのだから。


 翌朝。あてがわれた部屋のベッドで目覚めたエイスは、酷い頭痛で顔をしかめた。泣き過ぎて頭が痛いなんて、子供の時以来だ。ベッドサイドの小さなテーブルには、丁寧なわかりやすい文字で、ゆっくり寝ていてください。出立は明日でも気にするな。と、書かれた紙と水が置いてあった。

「また、気を使わせた、か……」

と、いうか、王があんなに玉座を空けていていいのだろうか。護衛も一緒に。そこは聞き忘れたな。小さくつぶやくと、控えめに扉がノックされた。


「エイス様、お目覚めでしょうか? 朝食を持って参りました」

 メイドの声に、エイスは慌てて服装を直した。いくら、メイドが客人の対応に慣れていても気持ち的にはちゃんとしたい。

「どうぞ」

すると、シィが、まず飛び込んできて抱きついたのでエイスは半眼になった。


 用意されていた朝食はこんがり焼けたパンと温かいスープ。野菜たっぷりのサラダに新鮮なミルクとフルーツもついてきた。久々に、本当に久々に、心の底から食事を美味しいと感じられて、エイスは驚いた。存分に、泣いたからかもしれない。シィのおかげかもしれないと、つぶやくと、私はお母さんだもの、と胸を張られた。


 その日の夕方。溜まった仕事を片付けるため、王城に行っていたロルとリィルが戻ってきた。2人は出会った頃と同じような格好で、エイスのところへやってくる。

「ただいま、エイス」

「よく休めましたか?」

「おかえり。2人とも。ああ、ゆっくりさせてもらった」

 言い終えてから、口調を改めたほうがいいだろうか? と問うと

「そんな友達甲斐のないやつだとは思わなかった」

「今更かと思いますが、呼び方も基本的には、“ロル”と“リィル”でお願いします」

と、ロルが拗ねて、リィルが凄い笑顔になったので、エイスは気にしないことにした。


「明日はまた、朝から馬車だな」

「ちゃんと送りますから安心してください」

「それはありがたいが、2人は、大丈夫なのか?」

「ええ、もちろんです」

「代わりがいるから出かけても平気だ」

代わり、と、エイスが驚いていると、

「国は王が君主でも、民がいなければ回らない。誰が王でもそんなに変わらないさ」

ロルの気軽な言い方に、リィルが困ります、と反論した。

「私が守りたいと思った王は、あなたで2人目です。仕事を失ってしまいます」

「まあ、今のところやめるつもりはないな。エイスにも会えたし、な?」

と、何故かこちらにウインクを飛ばしてくるロル。はあ、と、エイスがてきとうに返事をすると、

「つれないな、俺たちの仲じゃないか」

今度はロルが距離をつめてきた。

「だーめ。エイスを泣かせた悪い子たちとは仲良くさせてあーげない♡」

 するとシィが間に入る。泣いたことを蒸し返されて、エイスは、勘弁してくれ、と、顔を覆った。


 翌朝。また同じお忍びの馬車で、エイスはロル、リィル、シィ、と共に王都ロレストゥールを発った。

 王都を発つ直前、リィルに土産は良いのですか? と、問われ、エイスは港町クロスポートに住む幼なじみ、エレクシアの顔を思い浮かべた。名物の焼き菓子なんかがあれば、とリィルに尋ね急いで買い求める。

 その間ずっと、ロルとシィはエイスの交友関係について、言い争っていた。


 馬車はがらごろと進む。膝に置いた袋はまだ、温かい。エレクシアが喜ぶ顔を想像して少し楽しくなる。

「エイス、ご機嫌だな」

ロルがうっすら笑っているエイスに声をかけてきた。

「そう見えるか?」

「吹っ切れた、いい感じの顔になってる」

「きっと、師匠のことがわかったからだ」


 3人のおかげだな、と、エイスが礼を口にしようとした時、馬車がガタン、と大きく横に揺れた。

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