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騎竜飼育員はじめました。  作者: 亜新ゆらら
その7.存在の証明に必要なもの
41/45

04







 場所は騎士団副総長の執務室。三人は難しい顔をつき合わせていた。


「――それで、こんな所まで呼びつけて僕になんの用事?」


 心底面倒だという表情で寝癖の頭を乱雑に掻きならが、サラザールはそう言って欠伸をした。


 腰を下ろすソファは自身の自宅には存在すらしたことない代物だ。ふかふかとした感触が良い具合に尻を押し返して、なんとも心地良いものだった。置く場所がないから欲しいとは思わないが、たまにならこういうものに座っても良いと思うサラザールの機嫌は、それでも浮上していない。


 街に下りてくるなんて何年ぶりだろうかとぼんやり思考する顔は暢気なもので、睨んでいると言っても過言ではないサンディアルトの視線を気にもしておらず、軽く受け流している。


 そう、今日朝早く、いや朝と言うにはほど遠い空が白み始めるかどうかという時間に、サンディアルトはサラザールの元までやってくるといきなり問答無用でここまで引っ張ってきたのだ。


 その傍若無人な態度は今までに無いくらい切羽詰まっているように感じたけれど、サラザールとしては寝入り端をくじかれて若干ふて腐れていた。要は非常に眠たいのだ。


 けれどサンディアルトはそんな事をものともせずに問いかける。彼にとってサラザールのそんな態度もまた、いつものことだった。


「惚けるな。サラ。君、不審者の手は打ったと言っていなかったか?」


 それをはね除けて険しい表情を崩さないサンディアルトはそう言ってサラザールを問い詰める。


 そんなサンディアルトの頭の中は、昨晩の出来事の不信感で一杯だった。


 昨日夜、外へ出てなかなか帰ってこないフレディを、サンディアルトが心配しはじめた矢先に慌てたように玄関の扉を開けて彼女は帰ってきた。


 一体どこまで行っていたのかと思ったサンディアルトは、寝入っている振りをして彼女の様子をうかがった。すると僅かに震えた手でいつものように、いや、いつも以上に強く抱きしめてきた。


 それはまるで縋り付くような必死さを感じて、不思議に思った瞬間鼻についたのは彼女のものではない匂い。不快なそれに僅かに身じろぐも、触れてくる震える手は何かに怯えているようにも感じられて、サンディアルトは注意深く彼女の気配を伺った。


 するとしばらくして聞こえてきたのは穏やかな寝息だった。そのことにほっと安堵したけれど、その不快な匂いはずっと消えなかった。


 その水と緑の匂いはまだいいとしても、煙草と知らない男の匂いに眉を寄せたサンディアルトはその匂いの元を辿ろうと朝早くに彼女の腕の中から抜け出したのだ。


 そこで見つけたのは、火を熾した後の滓炭と車輪の跡だった。そこまではいい。問題なのはそれが竜の飼育所に施された結界のすぐそばだったことだ。


「どういうことだ? 確認したら、森山しんさんの方にある包囲結界の支柱が一つ壊れていた。まさか気付いていてそのままにしていたわけじゃないだろうな。結界の維持は君の仕事だろう」


 そう険しい顔で詰め寄るサンディアルトの顔には苦渋の色が滲んでいた。


 市民はもちろん、上位貴族だって――フレディだって知らない。山の中腹あたりから丘まで、更にはその先、飼育所の周りには彼らを守るために張られている結界が複数存在することを。


 フレディがなんの障害もなく毎日を変わらぬ状態で送れているのは、偏にこの結界があるからに他ならなかった。


 竜種はその数の少なさ故に希少な存在だ。徐々に数が増えて行っているとはいえ、それは今も変わらない。中には鱗や爪を売り捌いて金策を企てる人間だっているのだ。


 それは国命によって、竜種の保護を唱っているこの国の人間だって例外ではなかった。


 そもそも過去がどうであれ、今を生きている人間にとってその経緯はさしたる問題ではないのだろう。サンドラのように、卑しい蛇だと蔑む声だって少なくないのが現状だった。


 そんな中いくら軍が管理をしているとはいえ、そんな希少価値の竜種の群れの一番近くにいて、人為的な危険が無いわけがないのだ。


 この国は騎竜の存在を秘匿としていない。それはそこへ至る経緯からして仕方の無いことなのだが、鎖国をしているわけでもなく外からの往来も普通にある中、どうしたって前述のような人間が出てくるのは仕方の無いことだった。


 だからこそ、魔術による結界を使うことにしたのだ。


 そもそもこの国の人間に魔術だなんだというものに関心は無い。存在すら遠い世界の話だと思っている者も少なくないだろう。それはこの国が犯した失敗の一つでこれから払拭していかないといけないものだが、それは今の問題ではないので横に置いておく。


 関心の無い、遠い世界の存在が目の前に広がっているとはこの国の人間は想像もしていないのだ。関心がなければ噂だって立ちはしない。


 この無関心こそが最大の安全策だった。だからこそ今まで何事もなくやってこれたのだ。中には興味本位で真相を探ろうと企む輩もいるけれど、そのどれもがいままで功を奏したことはなかった。


 だいたい、護衛も付けない一塊の伯爵令嬢がひとりで生活するなんて、いくら治安が良いと言われているこの国にいたとしても世の中を舐めすぎている。それ以前に、なぜか彼女は家に鍵を掛けない。習慣がないのか忘れているのか知らないが、サンディアルトがそれを知ったときはその無防備さに青くなった。それと同時に別の意味でこの結界の存在に感謝したものだった。


 基本的にはあの結界の内側は「不可視」となっている。一部を除いて彼女が認めた者にしか認識できないように設定してあるからだった。それは前任者を含め色々な過去の失敗経験から、そうした方が竜にとっても飼育する人間にとっても安全だということを学んだが故だった。


 まあ飼育員用の家屋は一番大きな結界を施している建物の外にあることから、絶対的な安全圏ではないということがここ最近サンディアルトを悩ませている要因でもあった。


 そしてそれを管理しているのがこのサラザールだ。


 もともとはいつからあるのか分からないものを、彼の師匠が見つけたことがきっかけだった。彼の師匠が見つけたときには一部の結界は既にここにあって、その役目を施行していたらしい。


 それを改良して現在の形に収まったこの結界は、サラザールが彼の後を継いで管理をしてくれている。


 いつからあるのか分からないこの結界の存在を特別秘匿としていたわけではないが、触れ回ることでもないから黙っていたのだ。そうしていたらいつの間にか秘匿みたいな扱いになってしまっていたこの案件は、今では一部の人間しか知らないことだった。だからフレディを含め、多くの人間はこの事実を知らない。


 今となっては、そうであることは寧ろ良かったと思えるから如何ともしがたい事ではあるけれど。


 けれどそれが昨日の出来事で一気に不安に塗りつぶされた。


 思えば、今の今まで何も無かった事実が安心と惰性を生んでいたのだ。本来ならもっと気をつけておかないといけないはずなのに、不確かさに賭けて守っていられただけだった。


 自分たちはそんな危うい物を抱えているのだと、自覚するべきだったのだ。そんな当たり前なことに、彼女フレディを危険な目に遭わせてから気付くなんて遅すぎる。


 自責の念に駆られても意味は無いが、怯えたように震える手で縋られると現状に安堵していた自分が情けなくて仕方が無かった。


 けれどこれはフレディが危険な目に遭う以前の問題だった。


 なぜなら結界の支柱が一部壊れていたのは、山向こうに続く道の近くだったからだ。


 手を打ったといって作られた結界。その存在意味を考えると、とてもではないがサラザールが起きてくるだろう夕方を待ってはいられなかったのだ。


「…支柱が壊れていただけじゃない。見たこともない方陣で張られた別の包囲結界があった。すごく小さかったけど、これは君がいつも使ってるものじゃないだろう?」


 言いながらサンディアルトが出したのは、手の中に収まるほどの小さくはないが大きくもない宝石だった。


 紫色のそれは研磨もされていないようなゴツゴツとした見た目で、一つだけ文字が彫られている。鉱掘されたばかりのようなその石は触り心地はとても悪そうで、彫られている文字の周りだけが綺麗に均されていた。


 その文字を下に向けて机の上に置くと、淡い光を放ちながら文字と接する机に何かが浮き出てくる。それは一つの画像だった。


 そう、この小さな宝石は写真機と同じ力を有した魔道具だった。


 魔力を留めるのに適した性質を持っている宝石類はこうした摩道具に用いられることが多く、このように研磨もしていない見た目の悪い物は安価で市井にも広く出回っている物だ。


 とはいえそれさえもこの国ではほとんど出回っていない、珍しいものであることに変わりなかった。数少ない物を買った購入者でさえ「綺麗だったから」というなんでもない理由でそれを手にしているものがほとんどである。


 そもそも魔法の類いを遠い世界のものだと認識している自国の民達は、こうした物への知識だって限りなく低かった。写真機を手間のかかる旧機械だと思っているわけではないが、こうした緊急時の対応にはこうした小さな物のほうが勝手が良いのは事実である。


 便利な物を便利に使うことに躊躇いなど全くないサンディアルトとしては、彼らの異聞を受け入れない姿勢というものは全くもって理解できないものだった。古い意識のままではままならないことも多く存在するというのに。


 そういう部分が気にならないのだろうかと思ったとき、ふと、頭に過ぎったのはそんな石頭だらけの上層部の顔ぶれだった。それらがちらついた瞬間、まああれでは仕方ないかと諦めの気持ちがわき起こるが、今はそこが問題ではないのでため息一つで横に置いておくことにした。


 今の問題はそこではない。…いや、突き詰めればそこに至るのだが、それは今言ってみても仕方の無いことだ。


 そんな事を考えているサンディアルトを横に、机に映し出された画像を見たサラザールは目を瞠った。


「ちょっとまってなんでこれが…。ていうか、まってまって。え? なんで…。見えたって事は発動してたって事? いやでも反応が……、不発だったって事か? …じゃ、ないか……、なんだよ普通に失敗してんじゃんっ。まじくそ、落ち込むわ…」


 机に映し出された画像に映っていたのは、文字を円形状に固めた方陣だった。


 範囲を指定して施すことに秀でている方陣という術のそれは、支柱を主軸に展開している。前述のとおり森の至る所に張り巡らせているものだ。これを持って結界を張っているわけだが、どうやら周りに明かしていない別のものも隠し持っていたらしい。


 胡乱な視線を向けてみたが、本人はそれどころではないようで「あ゛―…」と呻きながら両手で顔を覆って項垂れていた。どうやら本気で落ち込んでいるらしい。


「なんだ。失敗だったのか? そうは見えなかったが…」


 サンディアルトは自身が視た光景を思い浮かべて首を傾げた。


 あの男、異様に煙草臭い鳶色の目をした男は、この結界に規制を受けているようだった。ごく小さい範囲に施されたこれが一体なんなのか分からなかったが、サラザールの様子では彼が施した物で在ることは間違いないようだ。しかし現状は本人には不服のようだが。


「……いや、失敗というかなんというか…、いや、思ったような効果がなかったって事は失敗だよね…はは…」


「?」


 よく分からない言葉に、サンディアルトと同じくこの場にいたアリアディスは互いを見やった。


 時は奇しくもフレディが目を覚ました頃。アリアディスを探し歩いている正にその時だった。


 まさかフレディも、本人不在だとしている部屋にこうして他人が入り浸っているとは夢にも思わなかっただろう。まあ不在というのは建前で、しっかり本人も居ることは居るのだが。


 秘密裏に打ち合わせるにはちょうど良く、体よく利用させてもらっている事実がこの時ばかりは裏目に出てしまっていた。


 そんな事は露とも知らないアリアディスは、取りあえず一番確認したいことをサラザールに問うことにした。


「取りあえず一つ確認だが、あの場所にはあれから異常ないのか?」


 静かに確認を取ったアリアディスに、サラザールは項垂れながらも頷いて肯定の意を示した。


「問題ない。そもそも、何をどうしたら異常になるのかさえ分かってないんだから、どうもこうもないよ」


 嘆息してそう言ったサラザールは、わかりきったことを聞くなと言いたげな目をサンディアルトに向けた。


 何をどうしたってあの場所にあるものに変化をもたらせたことなど、ただの一度も無かった事実を再確認させられて、面白くない気持ちになった。別にすねているわけじゃないと、サラザールは不遜な顔のまま閉目する。


 ――それをサラザールが見つけたのは偶然だった。


 あの日、まだサラザールの師匠が存命なある日、山で薬草を採取するのに夢中になっていたサラザールは、うっかり山肌を登りすぎたことに気付かず足を滑らせて谷底に落ちてしまった。


 落ちたときは本気で死んだと思った。意識が戻ったとき、しばらく地獄の底だと思っていたくらいなのだ。命があるのも不思議なくらいの高さから落ちたことに、少なからず混乱していたのだろうと思う。


 擦り傷と打ち身以外なんともない身体を動かして谷底を歩いているときに見つけたのが、“それ”だった。


 見たこともない大きな結界と、見たことの無いほど巨大な黒い竜。


 その黒竜は暴れることも咆哮することもなく、ただただ静かにその覆われた結界の中にいた。


 さらに驚くことにその竜は生きていた。目の前の動く物に思わず反応したといったように動いた、大きな瞳に見つめられた瞬間は息が止まったかと思った。


 どうしてそんなものがここにとか、なんでそんな窮屈そうに結界に収まっているのかとか色々な疑問はもちろんあった。けれどその大きな金色の瞳にじっと見つめられてごくりと唾を飲み込んだとき、その黒竜はふと目の前のものに興味を失ったかのように顔を背けて俯せた。


 一瞬の出来事だったけれど、サラザールにとっては数分の感覚だった。そのまま閉じられた目が開くことは無かったけれど、呆然としたサラザールが我に返って帰路についたときには既に日は沈みかけていた。


 その日はどうやって帰り着いたのかもどうやって眠ったのかもあまりよく覚えていなかった。


 次の日、あまりの非現実的な出来事に夢だと思ったサラザールはもう一度結界の場所まで足を運ぶと、そこには同じように黒竜がいた。


 基本的に知らないことに関してなんにでも興味を示すサラザールは、その見たことも無い二つになにより興味を惹かれたのだ。中でも一番興味を刺激したのはその竜を覆う結界だった。


 見たことの無い印を結ばれたその結界には、不思議な力があった。


 まず、触れることが困難だった。当たれば衝撃と痛みが走る。程度によるが進んで負いたいものではなく、少し当たっただけでもバチリと音を立てて走る衝撃は、まるで電気に打たれたみたいで痛みとしびれが残った。


 構築も見た目も能力も、全てが自分の認識と違うものを見てサラザールの興味に俄然火が付いたのは言うまでもなく、誰からもなにも言われないのをいい事に見つけたものに没頭した。


 そうして定期的に足を運ぶようになって気付いたことは、中にいる黒竜は望んでそこにいるわけではないのかもしれないということだった。


 言葉を交わしたわけではないし、意思表示をされたわけでは無い。サラザールが訪れると一瞬目を開けるものの、すぐに興味を失ったかのように伏せてしまう。それを少し残念に思いながら、サラザールは淡々と自分の欲求に忠実に過ごしていた。


 でも毎日毎日その目を見ていると、なんだか言葉に出来ない物悲しい気持ちになってくることに気がついた。


 興味なさそうだけれど、訪れると必ず目を開けて首を擡げる。けれど目の前のものを認識するとまるで落胆したように僅かにその目を細めてそっぽを向く。


 そう、落胆だ。でもその落胆は恐らく、目を開ける前から自分がこの後そう感じると悟っているようでもあった。


(……もしかして、なにか待ってる…?)


 それが何かに焦がれるような、恋しく思っているような、そんな目に見えたのだ。


 そんなわけないと分かっているけれど、どうしても確認せずにはいられない。わかりきっていることに無駄に落ち込むだけだとわかっていても、それでも。


 ――もしかしたら。その気持ちを、きっと毎回捨てられないのだ。


「……」


 サラザールは孤児だった。この国の人間ではなく、師匠が他国をふらついているとき偶然出会って拾われたのだ。


 今でも覚えている。大雨の中、珍しく母親が出かけようと声をかけてきた日だ。穏やかに微笑みながら言われた言葉に、サラザールはすぐに悟った。


 ああ、これが母親との最後の会話なのだ、と。


 小さい頃から身体の発達より脳の発達の方が顕著だったサラザールは、同い年の子達の中に混ざるにはあまりにも身体は小さく、その頭は無意味なほどに英明だった。


 周りの子供たちも、たった一人の家族である母親も、そんなサラザールを気味悪がった。


 英知に富んだ魔術師が匙を投げたという術式の解読も、赤字続きの商会の立て直しもサラザールにとっては一晩にも満たない問題だった。


 そんなサラザールを異質だと気味悪がって誰も近寄らなくなったせいで、今でも人との接し方はいまいちよく分からないけれど。


 それでも母親はサラザールを見捨てなかった。貧しかったけど、暴力を振るわれたり粗野に扱われたことは一度だってなかった。


 それでも母親が、どこかサラザールに対してよそよそしい態度だったことはずっと前から知っていた。だから雨の中だろうとぼろぼろの合羽しかなかろうと、外へ行こうと言ってくれたときは嬉しかったのだ。


 これが最後だと分かっていても、よそよそしさのない会話と久しぶりのお出かけに浮かれて、初めて子供らしく笑っていたかもしれない。


 屋根のある建物の前で、忘れ物をしたからここで待っていてと頭を撫でてくれたその顔を見上げると、穏やかな顔がそこにあった。


 それは自分とさよならできる安堵からか、食い扶持が一人減る事への喜悦だったのかは分からなかったけれど、どちらにせよ自分が出来ることは一つだけ。


 わかったと、頷くことだけ。


 知らない振りをして、手を振ることだけだった。


 もしかしたら、母親は分かっていたのかもしれない。サラザールが自分が捨てられることに気付かないふりをしているだけだということに。


 だけど、その瞬間辛そうに顰められた顔を見てしまうと、僅かに期待が頭を擡げるのだ。


 もしかしたら、本当に忘れ物をしただけで迎えに来てくれるかもしれない。そのとき自分がここにいなかったら、母親が困ってしまうと。


 そんなことないと分かっていたけれど、その「もしかしたら」を捨てられなかった。


 ――この竜も、そうなのだろうか。


 それからサラザールは結界だけではなく、中の竜についても調べることにした。


 サラザールが日頃生活しているのは、竜の飼育所がある場所の側を広く覆っている森の奥、山形に弧を描く地にある少し開けた場所だった。実はフレディと一番近い場所に居を構えているのはサラザールだったのだ。


 仕事という仕事も特になく、時間だけは沢山あった。だから気にすることもなく興味のあることだけを見つめて生活した。


 けれど、没頭して興味が尽きないその直中のある日、師匠が死んだ。


 本当にいきなり――いや、いきなりじゃない。前日は確かに少し違和感を覚えていた。いつも通り生活して、いつも通りの言葉を交わして、馬鹿みたいな事に笑っていたからうっかりそのサインを見過ごしてしまっていた。




 

 

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