第6話 アタシと気付いたキモチ
6話目、投稿します。デート(?)回。千里が自分の気持ちを自覚します。
そして美鈴の身に危機が……
「ん…あれ?アタシ…眠っちまってたか…」
目が覚めると既に朝…この明るさだと昼近くって所か。まぁ今日は日曜だから良いけど。しっかし…あんなに泣いたのは久しぶりだな。2人は迷惑掛けちまったなぁ
「ん……?」
右腕に重みを感じ、視線を移すと、狐川がしがみついて眠っていた
「狐川…ずっと居てくれたのか……」
「天宮しゃーん…エヘヘ」
アタシの名前を呼び、優しい人外は幸せそうに眠っていた…
「狐川…ありがとな。お前のおかげでちょっと素直になれたかも」
「んー…?あ、天宮さん…おはよーごさいます…」
目を覚ました狐川がニコリと笑う
“ドクンッ”
そして何故かアタシの胸が高鳴った。あーもう、なんなんだよ…
「どーしたんですか…?」
そんなアタシの様子を見て首を傾げる狐川。可愛い…というより愛しいと言った方が今の感情は正しい。もしかしてアタシ……
「久遠、千里。休みだからって寝過ぎじゃ………どうしたの?千里。顔真っ赤だよ?」
「な、なんでもない!気にするな……ってお前ら、いつの間に名前で呼び合うようになったんだ?」
初めて会ったときは堕狐とか、化け猫とかいがみ合ってたのに…
「いえ、そんなにお互い嫌ってる訳ではないので、名前で呼ぼうって事になったんです」
「そっか…」
…なに嫉妬してんだよアタシは…仲が良い事に越したことはないだろ……
「天宮さん?大丈夫ですか?」
「何でもねーよ……久遠」
これは嫉妬じゃない…親しくなったし、そろそろ名前で呼んでも良いかなって思っただけ…でも何でこんなモヤモヤしてるんだろ…
「そうですか……天宮さん、今私を名前で……」
「もう知らない仲でもないし、いつまでも苗字で呼ぶのもな……嫌か?」
「とんでもない!寧ろ嬉しいくらいですよ!じゃあ私も…千里さんって呼びますね」
「出来れば“さん”も外して欲しいんだけど…まぁそこは追々だな。さて起きるか。うわ…久遠の制服、酷いことになってるな…ってアタシの所為だよな、ごめん」
アタシがしがみついて泣きじゃくった所為かグシャグシャになっていた
「構いませんよ、これくらい…あんな可愛い千里さんを見れたんですから、安いものです」
「なっ…かわっ……止めろ、忘れろー!」
急激に恥ずかしさが込み上げてきて、久遠を小突く。アタシの顔はきっと林檎より真っ赤になってると思う
「ふふ、確かに昨日の千里、可愛かったね、あぁいうのをギャップ萌えって言うのかな」
「だぁぁ!やーめーろー!!」
暫くの間、2人の人外に弄られるのだった……
「……」
「あー…千里さん?怒ってます…よね」
「……(つーん)」
やり過ぎた…真っ赤になって堪えてる千里さんがあんまりにも可愛かったから、引き際を間違えた……あーもう私のバカぁー!
「あれはやり過ぎだって。反省しなよ」
「ちょっと美鈴さん!私は関係無いって顔してますけど貴女も同罪ですからね!?」
しれっとしながら言ってのける美鈴さん。逃れようったってそうはいきませんよ!
「でも怒らせたのは久遠でしょ?ねぇ、千里」
「……(つーん)」
「みにゃっ!?」
同意を求めるも、千里さんの反応は皆無
「…どうやら千里さん的には私も貴女も同じみたいですね」
「そんな……どうしよう、このまま口聞いてくれなかったらボク死んじゃう!」
「それについては同感です。なんとかして機嫌を直してもらわねば…」
「そうだ…昨日、管理人さんから遊園地のチケット貰ったんだ…これでなんとか機嫌直んないかな…?」
そう言って懐から2枚のチケットを取り出す。いやいや高校生にもなって遊園地って…否、ご両親が亡くなられてそういう場所への憧れが無いとも言い切れない…そう思い千里さんの様子を窺うと、チラチラとこちらの方を気にしていた…よし、後一押し
「遊園地ですかぁ…実は私もちょっと興味があるんですよねー…でも1人で行くのって、ちょっと勇気が要りますよねー?」
「……っ」
ビンゴ。やっぱり行ってみたいようだ…よし、何とかなりそうだ
「そうだね、でもボクはあんまり外には出たくないしなー。」
「そうですか、無駄になっちゃいますねー、このチケット」
「うぅー……」
行きたいって素直に言えば良いのに千里さんは、それを堪えて唸っていた……あんまりやり過ぎると同じ過ちを繰り返してしまいますね…そろそろ良いかな
「という訳で千里さん、一緒に行きませんか?」
「……アタシと?」
誘われると思っていなかったのか、間の抜けた返事をし、ポカンとしていた。あら可愛い
「はい、さっきのお詫びも兼ねて…嫌ですか?」
「嫌じゃねーけど…まぁそういう訳なら行ってやっても良い、チケットも無駄になるしな…別に興味があるわけじゃ無いからな…」
ほんのり顔を紅くしながら、千里さんは言う。全く素直じゃないですねぇ…
「分かりました。という訳で美鈴さん、ちょっと出掛けてきますね」
「ん、分かった。頼んだよ?久遠。悪化してたら引っ掻くからね」
そう言い鋭い爪を光らせる。おぉ、怖い……
「ごめんな、美鈴。いつも留守番させて」
「気にしないで。あんまり出たくないのは本当だし、楽しんできなよ」
「そっか……ありがと美鈴。じゃあ行くか…時間も勿体無いし」
いつもの爽やかな笑顔で千里さんは言う。あぁ…今日も素敵だなぁ。そう思いながら出掛ける準備をするのだった
「凄い人混みですねー…」
「まぁ、今日は日曜だし。家族連れも多いんだろうな……」
遊園地に着いて一言呟く。まぁ休日だもんな…賑わってて当然か
「久遠…手、繋ごうか」
「ほぇっ!?」
「何で驚くんだよ…はぐれたら大変だろ?」
驚いて変な声を出した久遠に呆れつつ、右手を掴む…柔らかいな、こいつの手
「あ、そうですよね……ふふ」
「なんだよ気色悪いな、急に笑い出して」
「いえ…こうしてると、何だかデートみたいですよね」
「……っ」
まただ。アイツの笑顔を見ると胸がドキドキする、もっと見ていたい…なんて感情が湧いてくる。確信した…やっぱりアタシは久遠の事が…好きなんだ
「千里さん?大丈夫ですか?」
「え…あぁ悪い。大丈夫だ…んで?どっから回る?」
「そうですねぇー…あ、ジェットコースターとか乗りません?」
「あー…良いけど大丈夫かなぁ」
「怖いんですか?」
「ばっ…バカ言え!ガキじゃねーんだし、そんな訳あるか…っ」
強がってみるも実は怖かったりする…ガキの頃、 父さん達と乗ったけどあまりの怖さに大泣きしたっけなぁ…
「…千里さん、手が震えてますけど……」
「む、武者震いだ…!」
「そうですか?じゃ行きましょうか」
ちょっと意地の悪い笑みを浮かべながら久遠はアタシの手を引き、歩き出す。何か乗せられた気がするが…まぁ良い、絶対ジェットコースターに負けたりしない!……あれ?これフラグ?
「………」
「あの…誘っておいてなんですが……本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…余裕だって……っ」
言葉とは裏腹にもう全然余裕がない。ヤバいヤバい…怖い。もうそろそろ頂点に着く……恐怖が勝り目を閉じる
“ギュッ”
「え……」
柔らかな感触がアタシの右手に伝わる。
「手、握っててあげますから…少しは半減すれば良いんですが」
困ったように笑いながら久遠は言う。
「久遠、ありが……ひやぁぁぁっ!?」
「ひゃあぁぁ!?」
言いかけ、タイミング悪くコースターは急降下。感謝の言葉は悲鳴に消え、ついでにアタシの意識も途切れた………
「んん……う?」
「あ、目が覚めました?」
気が付いて真っ先に目に入ったのは心配そうにアタシを見下ろす久遠の顔だった。因みに膝枕されてた…ん、柔らかいし、暖かい
「あれ…此処は…」
「休憩所のベンチです。大丈夫ですか?」
「…ダセぇ、高校にもなってジェットコースターで失神するとか」
「まぁ、苦手なものですから仕方無いですよ…ごめんなさい、無理に連れてしまって」
「気にすんな…アタシが強情っ張りなのがわりぃんだから……さて、次は何行く?」
ちょっと名残惜しいけどいつまでも甘えるわけにはいかん。久遠の膝から離れ、立ち上がる。
「そうですね…取り敢えず歩きながら決めましょうか」
「そうだな…じゃ行こうか」
「はい!」
それから2人で色々なアトラクションを回った。流石に神様がお化け屋敷を怖がるとは思わなかったが……まぁ抱き付かれたりしたから役得かな……泣き顔、可愛かったなぁ……
その後も色々回ったり、マスコットキャラと記念写真撮ったりと、久し振りに楽しい休日となった……
「はぁー…楽しかった」
「そうですか…誘って良かったです」
気が付けばもう夕方。楽しい時ってどうして時間が経つのが早いんだろ
「そろそろ帰るか…」
「千里さん、最後にあれ乗りません?」
そう言って久遠は観覧車を指差した…なんつーか
「最後に観覧車とか本当にデートみたいだな…」
「…ダメですか?」
ジッと此方を見つめる久遠。身長差のせいで上目遣いの形になる……ダメだ、自覚したせいで久遠の行動全部が可愛く見えてしまう……あーもう!
「…千里さん?」
「何でもない……良いぜ、乗ろうか」
「やった!」
子供のように無邪気に喜ぶ久遠。可愛過ぎだっつーの……観覧車に着くまで、聞こえてしまうんじゃないかってくらい心臓がバクバク鳴っていた……
「わぁ…っ!」
「たけーな…街が一望できそうだな」
「あ、千里さんのアパート発見!学校も見えますね!」
外の景色を見てはしゃぐ久遠。美鈴といい、コイツといい、純粋なんだな……それだけに自分含めた人間の汚さには呆れる……。自分達と少し違う、只それだけで迫害したり、傷付けたりを平気でやったりする……いっそ人外に生まれればこんな風に悩んだりしなかったのかな
「…さん、千里さん!」
「へ…?あ、悪い」
呼ぶ声にハッとすると目の前に膨れっ面の久遠が居た。あー…悪い癖が出ちまった
「もう、さっきから呼んでたんですよ」
「すまん…で、どうした?」
「あの…今更なんですが…私が居て迷惑じゃありませんか?」
さっきまで浮かれていた表情は何処へやら、一転して不安そうに此方の様子を伺っていた……やれやれ
「本当に今更だな…」
「あう…」
「…迷惑なんかじゃないよ。久遠と出会って、柚希に会って…感謝されて、美鈴に出会って…家族が増えた。毎日賑やかでちょっと戸惑ってるけど…楽しいっていう気持ちもあるんだ。実は一人ぼっちなの、ちょっと淋しかったんだ…だからあの時、久遠が声描けてくれたの凄く嬉しかった」
「…千里さん」
「だからさ…アタシと出会ってくれてありがとな、久遠」
「…ふぇっ」
「え、ちょっ…何で泣くんだよ…っ」
「いえ…嫌われてないって分かったら安心して涙が…っ」
「バーカ、嫌いな相手と遊園地なんか来る分けねーだろ……」
寧ろアタシはお前が好きなんだよ、叶わなくたっていい、暫く夢くらい見させてくれよ?アタシの神様……
「今日はありがとな、久遠」
「いえいえ、お気になさらず……すっかり暗くなっちゃいましたねぇ」
「美鈴の奴、待ちくたびれてるだろうなぁ…ん?」
アパートの前に人が倒れているのが目に入った…あの人まさかっ!
「静さん!?」
「う……あ、千里ちゃん…久遠ちゃん…大変よ、美鈴ちゃんが……っ」
「美鈴さんがどうしたんですか!?」
「美鈴ちゃんが……誘拐された……」
「なんだって!?」




