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第5話 アタシと彼女の事情2

新年明けましておめでとうございます

1発目の投稿です。今回は千里と美鈴の過去にちょっとだけ触れます…若干シリアス気味です


気がつけばブクマが2件、嬉しい限りです。



「えっと…そうだね。まずボクの生い立ちから話しておくよ」


玄関から居間に移動し、全員が席についてから美鈴が口を開く


「ん、頼む」


「ボクは物心付いたときから1人だった。両親は小さい頃に人間に殺されたって、族長様が言ってた」


「うわ…いきなりヘビーですねぇ…」


「黙って聞いてろ…続けてくれ」


隣でぼやく狐川を小突いて諌め、美鈴に続けるように促す


「そのせいかな、ボクは凄く荒れてたんだ。イタズラなんて日常茶飯事、今思えば誰かに構って欲しかったのかも……まぁそんな事してたらいつの間にか里一番の嫌われ者になってた。そんなボクを救ってくれたのが族長様だった」


「…何かアタシと似てるな…」


アタシが孤立した理由も似たようなもんだったな…誰も信じてくれなくて、もうどうでも良くなって、ひねくれて……でも誰かが必ず救ってくれる…アタシの場合は静さんと…狐川もかな。


「天宮さん…?」


不思議そうに首を傾げて、此方を見る狐川。何で見つめてんだろ…アタシ


「なんでもねーよ。それで?」


急に気恥ずかしくなり、顔を背けて誤魔化すように美鈴へ振る


「ボクは族長様に引き取られた。1人は淋しいだろって言われた……愛情もいっぱいくれた。でも義兄弟達は快く思っていなかった」


「…跡継ぎ関係ですね?」


狐川が言うと美鈴は頷く。はぁー…人外にもそういうドロドロしたのってあるのか。どこも一緒だな


「話が早くて助かる。ボクは養子だから全く興味は無かったんだ。だからイビられようが嫌みを吐かれようがどうでも良かった……族長が亡くなって遺言状が出てくるまでは」


「なぁ…もしかしてその遺言状に書いてあったのって……」


「うん、簡単には言ってしまえばボクを跡継ぎにするって書いてあった。当然、義兄弟達は大騒ぎさ…何でお前が、余所者の癖にって…酷いもんさ。時には暴力すら振るわれたよ」


そう言って美鈴は俯く。数え切れないほど傷付いたんだな…そんな彼女がいたたまれなくなり強く抱き締める


「千…里…?」


「良く話してくれた…頑張ったな、辛かったろ?」


「ダメ…今優しくされたら…泣いちゃうっ…からっ…」


「良いじゃねーか。泣きたいとき泣かないと、涙って出なくなるもんなんだよ…だから思いっきり泣いちまえ。気が済むまで抱き締めてやるから」


「ふぇ…ひぐっ…うぅっ……ふえぇ…!」


アタシの胸に顔を埋めて、小さな体を震わせ、美鈴は泣きじゃくる。ずっと我慢していたんだな…そんな彼女を泣き止むまで優しく抱き締めていた……










「ごめん…情けないとこ見せた……」


暫くして泣き止んだ美鈴がしょんぼりとしながら言う。猫耳と尻尾も心なしか垂れていた。可愛いなー


「良いって…誰だって泣きたいときはあるんだから」


「ありがとう。千里はやっぱり優しい…」


「そんなことねーって……。さて、難しい話は終わりにして、風呂でも入るか。せっかく美鈴がやっててくれたんだしな…一緒に入るか?」


「喜んで!」


「お前じゃねー!」


「ふぎゃっ!?」


即答で返事を飛ばす狐川の脳天に拳骨を落とす。潰れた蛙のような声を出して蹲る


「何でですかぁ…」


「お前とは絶対嫌だ!貞操の危機を感じるわ!」


そう言いながら昨日の狐川を思いだし、悪寒が走る。美鈴が居なかったらどうなっていたことやら…


「そんな…!こんな純粋な私を信用出来ないんですか!?」


「うん、出来ない」


「即答!?」


真顔で答えるアタシの態度が余程ショックだったのか、その場に崩れ落ちる


「ぷふ…ふふ…あははっ…!」


アタシと狐川のやり取りを見て、堪えきれなかったのか吹き出し、大声で笑う美鈴。お…笑った顔見るの初めてかも


「あー、久々に笑った……千里?どうしたの?」


「ん?あぁ、美鈴の笑った顔が可愛いなって」


「ふにゃっ!?そ、そう?可愛い…か、エヘヘ」


「…?変な奴」


「はぁ…無自覚ですか。罪な人ですね、天宮さんは……前途多難です」


にやけている美鈴を眺めていたら、呆れたように狐川が呟いた……どういう意味だろう


「…?まぁ良いや。とにかく風呂だ。先に入ってくるわ」


「天宮さん!私もご一緒します!」


「だーかーらー!嫌だって言ってんだろうがぁ!」


「あにゅっ!?」


そう宣(のたま)う狐川の頭に拳骨を落とし、浴室へ向かった






「あー……生き返るぅー…」


湯船に浸かり、日頃の疲れを癒す…あぁ風呂の文化を生んだ日本は素晴らしい…


「千里、湯加減どう?」


のんびりと浸かっていると、扉の向こうから美鈴が声を掛ける。


「ん、バッチリだ。アタシ好みだよ」


「良かった。着替え置いておくね」


「サンキュ、気が利く良い子だな、美鈴は」


「エヘヘ…千里に褒められた。背中流そうか?」


「良いよ、色々やって貰ったのに」


「そっか…」


やんわりと断ると、ちょっと残念そうに答える。耳と尻尾が垂れてるのが目に浮かぶ


「気持ちは嬉しいんだが、狐川が騒ぎそうだからな…」


「あー…確かにね、分かった。じゃあご飯の準備するね!」


そう言い美鈴はパタパタと走っていった。ふふ…可愛い奴







「はぁー…良い湯だったぁー」


「天宮さん年寄り臭い……って、なんてはしたない格好してるんですかぁ!」


風呂から上がったアタシを見て狐川は悲鳴を上げる。そんなに変か?


「千里…流石にタンクトップ1枚はちょっと…はしたないかなぁ…」


同意を求めようと美鈴を見つめると苦笑しながら、そう言った。まじか……


「長いこと一人だったしなぁ…慣れちまったんだな」


「…そういえば千里の両親は?」


「…事故で死んだ。5年前にな」


「あ…ごめん」


「気にすんな…もう吹っ切ったから」


そう言って美鈴に笑い掛ける。何かを言いたそうにしていたが、直ぐに黙り込む。……むぅ重い空気になっちまったなぁ


「さて、飯だ飯。何を作ってくれたんだ?」


「あ、えっと昨日のカレーが残ってたからカレードリア作ってみた」


「おー…旨そうだな。上手じゃないか」


「料理自体は出来るけどこれ作るの初めてだから、味の保証は出来ないよ?」


「大丈夫だって、愛情籠ってりゃ大抵なんとかなる。じゃ食おうぜ」


そう言って席に座ろうとしたが、美鈴と狐川が制する。


「どした?」


「「まず服を着て(下さい)!!」」


「はぁ…分かったよ」


二人の剣幕に圧され、渋々自室へと着替えに戻るのだった。因みに美鈴が作ったカレードリアは物凄く美味だったと言っておこう……







「……」


夕食の後、1人自室でぼんやりとしていた。片付けをしようとしたら美鈴と狐川がやると言って半ば強引に追い出された。そこまでしなくても良いんだけどな…それに


「体を動かしてた方が思い出さなくて済むんだがなぁ…」


さっきは取り繕ったがやっぱり吹っ切ることなんて出来ない。両親が死んだのはアタシのせいでもある。


「うっ…ふっ…」


泣いちゃダメだ…もう泣かないって決めたのに…そう思えば思うほど涙は溢れてくる


「くぅっ…止まれよっ…何で…出てくるんだよぉっ……!」


「天宮さん、美鈴さんがフルーツジュース作ったからどうですかって…天宮さん!どうかしたんですか!?ていうか何で泣いて……!」


「ちょっと久遠、何騒いで…千里!?」


「狐川…美鈴…大丈夫、ちょっと目にゴミが……」


「はぁ…ボクも人の事言えないけど、千里って結構強情だよね」


「全くです…必死で悲しいの堪えるのは辛いでしょう」


呆れながらも二人はアタシを両側から抱き締めて頭を撫でる


「止めてくれ…今優しくされたら…っ!」


「はは、さっきのボクと同じ事言ってる…千里、さっき言ってくれたよね?泣きたいとき泣かないと涙は出てこないって…千里もたまには泣いて良いと思う」


「ダメなんだよ…アタシは…もう泣かないって…強くなんなきゃって…決めたから…アタシは1人だから…っ!」


アタシは吐き出すようにそう呟く。そんな様子に溜め息を吐き、狐川は言った


「強くなるっていうことは泣かないって事じゃ無いですよ?それに貴女はもう1人じゃない。管理人さんに美鈴さん、それに私が居るじゃないですか…ね?」


そう言って狐川はアタシの顔を見つめ、いつもの無邪気な笑顔を見せた。美鈴を見ると“いつでも頼って”と囁いてくれた


「うぅっ…あぁ……うわぁぁっ!!」


狐川と美鈴の言葉に遂に決壊、アタシは子供のように泣きじゃくった。二人はそんなアタシをいつまでも優しく抱き締めてくれていた









「ん…んぅ…すぅ」


「あら、眠ってしまいましたね…」


「そうだね…さてとジュース片付けておかなきゃ…という訳で後よろしく」


そう言い美鈴さんは手を振って部屋を出ようとする…いやいや!ちょっと待てい!


「寝かせるのくらい、手伝ってくださいよー!」


「良いじゃん。役得でしょ?暫くそのままにしときなよ……好きなんでしょ?千里の事」


「な、ななな何を言ってるんですか!わ、わわわ私は…天宮さんに…頼って欲しいから…っ」


美鈴さんの言葉に分かりやすいほど動揺してしまう。だって事実だから…


「久遠ってさ…絶対嘘吐くの苦手だよね」


「放っといて下さい……変でしょうか」


「はぁー…」


恐る恐る聞いてみると、深い溜め息と可哀想な物を見るようなを目で見られた



「あの…そんな目で見られたら結構傷付くんですが…」


「良いんじゃない?別に、好きになったのがたまたま同性だったって話でしょ?それに…気付いてないの?久遠と居るときとか、久遠の話をしてるときの千里、すごく楽しそうだよ?本人は気付いてないけど……」


天宮さんが……そっか。嫌がられては無いんだ……


「そっか…エヘヘ」


「気持ち悪…」


「酷くないですか!?」


「千里が起きちゃうから静かにしなよ…」


「理不尽!?」


「ん…んー…」


煩いと言わんばかりに私の胸に顔を押し付ける天宮さん。可愛い…私を殺す気ですか!?


「ともかく任せたからね…」


「あ、ちょっと…!」


止める間もなくするりと部屋から出ていった…うーん、どうしましょう


「天宮さん、眠るならベッドで…風邪引きますよ」


「んー…やぁ…」


そう言って胸に埋めていた顔をグリグリと揺らす。こんな可愛い一面が天宮さんに合ったなんて…はぁ参ったなぁ……


「ますます惚れちゃうじゃないですかぁ…」


片手で目を覆い天を仰ぐ…本当にズルい、この人は……


「天宮さん…私はずっと貴女を守ってきたんです…覚えていないでしょうけど、貴女との約束、ちゃんと覚えてます…だから何があっても、何が相手でも…私は貴女を守ります…ずっと、ずっと…」


頭を撫でながら、決意を新たに私は呟いた。胸の中から“ありがとな…”と聞こえたような気がした……

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