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第4話 アタシと彼女の事情

「ん…ふわぁっ…もう朝か……ん?」


窓から射し込む朝日を受け目を覚まし、背伸びをする。そして隣に違和感があり、目を向けると黒髪の猫耳の生えた少女が丸まって眠っていた


「そっか…昨日から一緒に暮らしてたんだっけか……気持ち良さそうに寝てるな」


可愛いな、なんだか妹が出来たみたいだ。もう少し眺めていたいが…朝飯の準備しなきゃな


「ゆっくり眠っててな?」


美鈴の頭を優しく撫でて、台所へと向かった






「よし、出来た」


食卓に二人分の朝食を並べる。今日の献立は焼き鮭、だし巻き玉子、長ネギと豆腐の味噌汁。うむ、我ながら良い出来だ




「んー…おはよー…」


「お、起きたか。朝飯出来てるから顔洗っといで」


「んー…」


フラフラと此方に近寄り、胸の中に収まる。おいおい…


「えへへ、千里の良い匂い…」


「…全くまだ寝呆けてんのか?ほらご飯冷めるから顔洗ってこいって」


「むー……分かった」


名残惜しそうに離れ、洗面台へと歩いていった。やれやれ手の掛かる妹ってとこかな…





「それじゃ、頂きます」


「頂きます」


顔を洗って戻ってきた美鈴が席に付いたのを確認し、朝食を摂る。うむ…今日も上手く出来た


「モグモグ…んくっ、美味しい…千里は料理が上手なんだね」


口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる美鈴。なんだかこっちまで幸せになってきたな


「誰も取らないからゆっくり食べなって…まぁそう言ってくれるのは素直に嬉しいけどな」


「千里、おかわり!」


「はいはい。ちょっと待ってろな」


茶碗を受け取り、ご飯を盛って手渡すと、またガツガツと食べ始めた。そんな美鈴を保護者みたいにアタシは見つめていた








「ふにゅ、お腹いっぱい…幸せ」


「そりゃ良かった。さて片付けるか」


「あ、千里。ボクがやるよ。学校行くまでゆっくりしてて」


「良いのか?」


「居させて貰ってるんだからこれくらいさせてよ」


そんなん気にしなくて良いんだけどなぁ…でもやるって言ってるしここはお言葉に甘えさせてもらうか


「じゃあお願いして良いかな?」


「うん、任せて!」


パッと目を輝かせて美鈴は言った。ふふ、なんだか微笑ましいな……






「さてと、そろそろ行くか。鍵置いておくから、もし出掛けるときは閉めといてな…っとそうだった。これ被ってけば耳は目立たないだろ?」


そう言い、帽子を手渡す。昨日渡そうと思ったんだがゴタゴタしちゃったからなぁ



「ありがと…でも当分使わないと思う…」


「そっか、まぁそれならそれで構わんよ。じゃ行ってくる」


「うん、行ってらっしゃい」










「天宮さーん、おはよーございまーす!」


「おわっ!?おい狐川。いきなり飛び付くな、危ないだろ!」


通学路に出ると大声を上げながら狐川が飛び付いてくる。全く朝っぱらから騒がしい


「いえ、天宮さんに会えるのが嬉しくてつい」


「昨日も会ったばかりだろうが…」


「分かってないですねぇ、毎日会えることが嬉しいんですよ」


にっこりと穢れのない笑顔を見せる狐川。眩しくて直視できねぇ…


「天宮さん?どうしたんですか?顔をそらして」


「何でもねーよ…そうだ美鈴の事なんだが」


「…あの化け猫がどうかしました?」


美鈴の名前を出した途端、一気に不機嫌になる、何をそこまで毛嫌いしてんだか


「なぁ、美鈴の何が気に食わないんだ?良い子だぞ?妹が出来たみたいだし」


「分かってますよ!でもパッと出てきたかと思えば私と天宮さんの間に割って入って!その上、天宮さんと同棲とか…羨ましすぎるんですけど!」


「同棲って…あのなぁ」


ん?美鈴自体は嫌ってない…と言うことはもしや…


「お前、美鈴に妬いてんのか?」


「はい?私が!?ご冗談を!私はあの猫が天宮さんと一緒に居るのが気に食わないだけです!」


「狐川、世間一般ではそれを妬いていると言うんだ」


「なっ……私が妖怪に嫉妬なんて……」


余程ショックだったのか、その場に崩れ落ち、項垂れる。そこまで落ち込むか……面倒だな


「まぁほら、アタシも多分お前が誰かと一緒に居るのを見たら妬いちゃうかもしれないしさ…当たり前の感情だと思うよ?」


「ですが…」


「神様も人間も人外達も見た目や呼び方が違うだけで本質は一緒なんじゃねーか?嫉妬なんて誰だってするよ…恥じることはねーさ…まぁ美鈴とお前も仲良くしてくれるならそれに越したことはねーけどさ」


「うーん…分かりました。でも気を付けてくださいね。あの子自身に危険は無いみたいですが少々厄介事に巻き込まれてるような感じがしますから…」


急に真面目な顔をして狐川は言った。そっか…だから外に出たがらなかったのか…まぁそれはそれとして


「…何かしてやれねーかなぁ」


「また貴女はそうやって…彼女が事情を話さなかったのは、おそらく貴女を巻き込みたく無いからであって…!」


「でもほっとけねーよ、お前が何と言おうとアタシは行動するからな」


「はぁ…もう。分かりました…全く相変わらずのお人好しですね……まぁそのお人好しで私も救われたのですが……」


「ん?何か言ったか?」


「いいえ何も。天宮さん、暫く貴女の家に泊まっても良いでしょうか?」


「…嫉妬もそこまで来ると醜いぞ?」


「違いますってば!人間絡みの事ならまだしも、人外や妖怪が絡んでいたときの対処としてです。そうなれば貴女はただの無力な人間なんですから」


ジト目で言うと、狐川は必死に反論する。ちょっとからかっただけなんだが…正論飛ばされたな


「そっか…じゃあしっかり守ってくれよ?」


「はいっ!お任せ下さい!」


そう言い、またにっこりと花の咲いたように笑顔を見せる狐川。……何ドキッとしてんだろ



「という訳で今晩からお邪魔しますね!」


「おう。美鈴と喧嘩すんなよ?」


「……善処します」


「……」


何だか不安になってきた。大丈夫だろうか……











「ただいまー」


「千里、お帰り!」


帰宅するなり、アタシの声を聞き付けた美鈴が飛び付く。ちょっとよろけつつ、受け止め頭を撫でる


「はは、元気だな。良い子にしてたか?」


「むー、子供扱いしないでってば。そうだお風呂沸かしておいたよ。後、部屋のお掃除と洗濯物と、やれることはやっておいたから」


「おおー…って家事ほぼ全部じゃねーか。助かるわ…サンキューな」


そう言い、美鈴の頭を撫でる。恥ずかしそうにしていたが、ちょっと嬉しそうにしていた


「ん…役に立てたみたいで良かった……で?何でアンタが居るのさ、駄狐」


「んなっ…!?」


「落ち着け、狐川。美鈴もダメだぞ…そんな態度は」


わなわなと震える狐川を押さえつつ、美鈴を諌める


「ん…分かった、ごめんなさい」


素直に謝罪し頭を下げる。美鈴の方がちょっと大人かな?


「それで、何しに来たの?」


「単刀直入に聞きます、貴女が抱えている厄介事を教えてくれませんか?私は不本意なのですが、天宮さんが何とかしたいと言うものですから仕方なk「ダメだよ千里!危険だから!こんなボクに優しくしてくれた貴女を巻き込みたくない!」


狐川の言葉を遮り、大声で叫ぶ美鈴。ハッとなって我に返る


「ごめん…でも本当に危険なんだ。罪の無い、無関係な人を殺したくない」


悲痛な面持ちで彼女は言った。無関係…ねぇ。ったく


「淋しいこと言うなよ。一晩共にしといて無関係ってことないだろ。それともアタシが信用できないか?」


「そんなこと無い!だけど…命を落とすかもしれないんだよ?」


「ふぅ…ならば貴女が天宮さんを守りなさいな」


「ボクが…千里を?」


「えぇ、貴女のせいで危険に晒されると言うのなら、貴女が守るのが道理なのでは?」


そう言い、狐川は美鈴を見つめる。暫く考え込んでいたが、決意したように顔を上げ、アタシを見る


「千里…もう一度聞くよ、巻き込まれたら後戻り出来ないし、ボクも守り切れる自信は無い…それでも良いの?」


「言ったろ?アタシが出会う人外は何かしら悩み事を抱えてるって…それを見て見ぬふりなんて出来ねーからな。ドンと来い!どんなヤバい事だろうと付き合ってやる」


「ありがと…じゃあ話すよ。ボクが抱えてる厄介事を……」


そう言って美鈴は重い口を開いた……







少々長くなりそうなので一旦切ります

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