第3話 アタシと猫又
第3話投稿です。新キャラ登場です
あー、憂鬱だ…」
雨の中の帰り道、いつもより重い足取りで、歩きながら呟く
「雨ってテンション下がりますよねー」
「んー、そうだな。濡れるし、寒いし……っ!?狐川!これ持ってろ!」
「え、ちょっ!?天宮さん!?」
鞄を狐川に押し付け、傘を放り出して川へと飛び込む 。確かに見えた…!多分、猫の尻尾みたいなのが…!
「居た!もう少し……捕まえた……ゑ?」
「ぷはっ…げほっ!げほっ!!」
水面から少女が顔を出し、しっかりとアタシにしがみつく。なんていうか
「…また人外かよ」
どうやらアタシは人外に好かれているらしい……まあ、いつもの事か
「くしゅっ!あー寒い…」
「当たり前です!全く…この土砂降りで川に飛び込むバカが何処に居るんですか!」
急いで家に帰り、猫少女を風呂に入れ、服を脱いでいると、怒りを隠さず、乱暴にアタシを拭きながら狐川は言った
「ちょっ、止めっ…自分で拭けるっての!」
「ダメです!隅々まで私が…はぁっ…はぁっ…天宮さんの綺麗な肌…っ」
「っ!?」
“ゴンッ!”
「みにゃっ!?」
貞操の危機を感じ、咄嗟に殴り付ける……結構強くやっちゃったけど大丈夫かな
「あうー、何するんですかぁ…」
「身の危険を感じたからな…正当防衛だ」
「うぅ…だからって殴ること無いじゃないですかぁ…」
涙目で此方を恨めしそうに見つめる。ちょっとキュンときた…って落ち着けアタシ。いくら人外でも相手は女だぞ!アタシはそっちの気は無い……はず
「どーでも良いけどさ、ボクは完全に無視?」
自分自身、訳のわからない感情に戸惑っていると先程の少女が戻ってきた
「お、上がってきたか。寒くねーか?ホットミルク飲むか?暖まるぞ」
「え?あ…ありがと…熱っ!?」
「あ、悪い…まだ熱かったか?すまん、牛乳足してくるわ」
「……何でそこまで化け物のボクに構うの?普通は気味悪がったり、追っ払ったりするのに…」
「まぁ人外なんてガキの頃から見慣れてるからな…それにアタシが出会う人外とか幽霊って何かしら悩みを抱えてるか、複雑な事情がある奴だから放っておけないんだよ」
「…変な奴」
「はは、よく言われる…ほら、これくらいなら良いか?」
少し冷ましたミルクの入ったマグカップを受け取り、チビチビと飲み始める。可愛いなぁ…
「それで?貴女は何故あんなところに?」
「おい狐川…」
折角、警戒解いてくれたのに水を差すように狐川が言う。何かイラついてないか?
「…ボクは」
「なぁ言いたくないなら無理に言わなくても構わんぞ?行く宛てないなら此処にいても良いぜ?」
「ちょっ!天宮さん!何考えてるんですか!相手は得たいの知れない化け猫ですよ!?万が一の事があったら…!」
「それならそうで構わない、困ってる奴を放っておくほどアタシは薄情じゃない」
「はぁ…貴女って人はもう…分かりました。暫く様子を見ます…危険と分かれば、その時は」
「良いわ、消すなり殺すなり好きにしなよ」
そう言い、少女は自分を睨み付ける狐川を睨み返す。うーん…なんでこうなるかなぁ?
「さて難しい話はここまでにしようぜ。ていうかお互い名前知らないよな?アタシは天宮 千里。あんたは?」
「猫ヶ矢 美鈴よ。あんた本当、変わってるわ…」
“グウゥッ”
「にゃうっ…!?」
腹の虫が鳴る音が聞こえ、美鈴が真っ赤になって俯く…腹減ってたのか
「はは、じゃあ飯にするか。何が食いたい?こう見えて料理は得意なんだぜ?」
「じゃあきつねうどんを!」
「なんでお前が真っ先に注文すんだよ…まぁ良いけどさ。美鈴は?」
「…何でも良い…」
「了解。あ…材料ねーな。買いに行くか。美鈴も来るか?」
「良い。ボクは目立っちゃうし……」
頭の耳と尻尾をチラリと見て美鈴は言う。理由はそれだけじゃないような気がするが……まぁ聞かないでおこう
「そっか、じゃあ待ってろな」
「じゃあ私がついていk「九遠様ー!いい加減に仕事をして下さいー!」
「げぇ!?果凜!」
「またサボりかよ…全く」
「は…?」
「千里様!本当にすみません!うちの主がとんだご迷惑を…!」
こないだ病院で出会った少女-果凜-は頭を深々と下げる……本当、苦労してんな
「果凜…だっけ?そんな迷惑には思ってないから大丈夫だよ」
「すみません…さぁ、九遠様!帰りますよ!」
「あー、天宮さんの手料理がぁー!」
ズルズルと果凜に引き摺られ、狐川は連れていかれた。ドナドナが頭をよぎったぞ…つーか、あんな幼子みたいな見た目から想像できないくらいの力だな
「ねぇ千里、あいつ何者?」
「一応、お稲荷様らしいぜ」
「あれが?嘘でしょ…」
信じられないといった様子で目を見張り、アタシを見つめる。やっぱりそんな反応になるよな
「安心しろ、アタシも未だに信じらんないから。さて買い物行くか…何食いたい?」
「いや…何でも良いって」
「嘘つけ、さっき遠慮して言わなかったんだろ?気にすんな、人に振る舞うのって結構好きなんだ」
昔、母さん達に内緒で夕飯作ったら驚いてたけど凄く喜んでくれたなぁ…それ以来、癖になってしょっちゅう作ってたな。懐かしい
「じゃあ…カレーが食べたい」
「カレーな、了解」
「…ねぇ。本当に此処にいて…良いの?」
「あぁ、遠慮すんな。1人は淋しいもんな……じゃあ行ってくる」
「あ、あの…」
「ん?どした?」
「気を付けてね…」
「おう」
心配そうな美鈴に向かって手を振り、出掛ける
「さて、カレーの材料は…ジャガイモと人参、豚肉に玉ねぎ…はダメか。あ…しまった!甘口か聞いてくんの忘れた…」
「あら、千里ちゃん。お買い物?」
材料の確認していると、アパートの周りを掃除していた女性がアタシに声を掛ける。この人は牧野 静。このアパートの管理人さん。何の事情も聞かず、このアパートに住まわせてくれたアタシの恩人。おおらかで優しい母親のような人
「あ、静さん。こんにちわ…ちょっと食材が無くて」
「もしかしてさっき連れてきた女の子の分?」
「えぇまぁ…そんなところです」
「そう…それにしても相変わらず人外に好かれるのね?」
「あはは、やっぱ気付きました?」
そう、この人もアタシと同じ視える人らしい。とは言ってもアタシみたいに生まれつきという訳じゃないらしいけど
「可愛いわね、今度は猫なのね?まぁ女の子の姿してるし、そもそもうちはペットOKだしね」
そう言い静さんは笑う。この人の笑顔は本当に綺麗だよなぁ……これで30代半ばとか信じられん
「そう言って貰えると助かります。じゃあそろそろアタシ行きますので」
「あら、ごめんなさいね。長話しちゃって、気を付けてね」
「いえいえ、それでは」
軽く会釈をして、スーパーへ向かった
「…今までボクが会った人と全然違う。なんで優しくしてくれるのかな」
これまで会った人はボクを気味悪がったり、暴力振るったり、酷いときには殺されそうになった……でも千里は違った。ボクを助けるために雨で増水してる川に迷わず飛び込んでくれたし、そして此処にいて良いって言ってくれた…そういえばさっき
”1人は淋しいもんな"
そう言って悲しそうに笑ってたな……ボクらみたいなのには慣れてるっても言ってた。そのせいで独りぼっちだったのかな?
「ボクと似てる…」
「ただいまー」
ドアの開く音と共に、千里の声が響く。ボクは急いで玄関へと駆け出した
「千里…っ」
「うぉ…どうした?美鈴」
帰ってくるなり、胸に飛び付きすり寄る美鈴。淋しかったのか…それは兎か
「ボク、千里の側にずっと居る。だから千里もボクの側にいて?」
顔をうずめたまま、切なそうに呟く美鈴。んー…まぁとりあえず宥めんのが先か
「何があったか分からんが、アタシの寿命が尽きるまでなら幾らでも居てやるよ、まぁ美鈴からしたら短いだろうけどさ…よろしくな」
「うん。千里は優しいね…」
「そうか?そうでもないぞ」
狐川といい美鈴といい、何故人外からは優しいとか良い人って言われんだろ…まぁ悪い気はしねーけど
「何しとるか!この泥棒猫ー!」
「みゃあっ!?」
突然の罵声と共に美鈴が引き剥がされる。そこには果凜に連れていかれた筈の狐川が美鈴の首根っこを掴んでいた……何してんだよ
「全く!油断も隙もない」
「離せ!離せよ、駄狐!」
「なっ…!神である私を駄狐呼ばわり……良いでしょう、その腐った性根を今此処で叩きのめしてやりましょう!」
「上等!掛かってきなよ!」
ドタバタ音を立てながら、取っ組みあいのケンカを始める二人(2匹?)。はぁ…だから何でこうなるんだよ……
目の前の惨状に頭を抱えるのだった
因みにこの後、騒ぎを聞き付けた静さんに両成敗されてケンカは終了したのだった……これから毎日騒がしくなりそうだ……まぁそれも悪くないかな




