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第2話 アタシと少年の霊

「コイツ、何だ?尻尾が5本あるぞ!」


「化け物だ!」


そんなやり取りが神社の境内から聞こえた。ったく…


「こらー!なにしてんだお前ら!」


「げっ!疫病神!逃げろ!」



アタシの姿を見た子供は一目散に逃げていった…誰が疫病神だ誰が


「ん?うわ…五尾の狐か。初めて見た…よっと、こら暴れるな!痛っ…!?」


手当てしようと抱き上げるが、危害を加えられると思ったのか、暴れだし指に噛み付き、逃げられる


「あー、急には驚いたよな。悪かった…ほら、何もしないから…おいで?」


手を広げ、敵意がないことを示す。暫く警戒していたが、近付き膝の上にチョコンと乗っかってくる、はっきり言おう可愛すぎ…


“…?“


「あぁ、悪い…何でもない。しっかし何でやり返さないんだ?お前くらいならあの程度、何て事無いだろ…もしかして無闇に傷付けたくないのか?」


そう尋ねるとこくりと頷いた


「そっか…優しいんだなお前。なぁ…もし神様になったら、アタシの所に来てさ、守ってくれないかな……何てな!只の冗談だ。よし…手当て終了!もう苛められんなよー!」


そう言い、小さく頷いた子狐を後に帰路に着いた…丁度その日だった、両親が事故で亡くなったのは……









「ん…んんっ…此処どこだ……あ、そっか入院してたんだっけか」


夜中に目が覚め、見覚えの無い部屋に、一瞬戸惑うも、昼間の出来事を思い出す。何だったんだろ、今の夢。中学の時みたいだけど……あんな出来事あったかなぁ……?懐かしい気はするが


「ていうか驚いたのはアイツの正体だよ。まさか神様だとは…全く見えんな」


「失礼な、稲荷神っていうちゃんとした神様なんですよ?」


不機嫌な声に振り向くと、狐川が膨れっ面をしながらアタシを睨んでいた


「おわぁっ!?こ、狐川!?どっから来てんだよ!」


「何処って…窓?」


「普通に答えんな!此処、2階だぞ!危ないだろ!」


「大丈夫です…よっと。それより怪我の方はどうですか?」


「ん…まぁ大分良くなっては来たな。明日には退院出来るみたいだ」


「そうですか、良かった」


そう言い、安心したように笑う。心なしか尻尾がパタパタ揺れているように見えるのは気のせいだろうか


「ていうか何しに来たんだ?消灯時間過ぎてんぞ?」


「いえ、ちょっと夜の散歩ついでに天宮さんの様子でもと思いまして」


「ふーん、神様って意外に暇なんだな」


「暇と言うか、まぁ何と言うか」


「見つけましたよ!九遠様!」


「げっ…果凜!」


言葉を濁し、はっきりしない九遠の後ろから巫女服を着た小さな少女が現れた。


「こんな所で油を売ってないで職務に戻ってください!」


「…お前、サボりか」


「え、えーと…ちょっと気分転換を…」


「その言い訳は聞き飽きました!さぁ、帰りますよ!お騒がせしてすみません」


1度アタシの方を向いて、果凜と呼ばれた少女は頭を下げる 。なんていうか


「…苦労してんな」


「もう慣れちゃいましたよ…九遠様!逃がしませんよ!それでは失礼します」


「ちょ、果凜…引っ張んないで!あーれー!」


引き摺られるように狐川は連れていかれた。はぁ…目が冴えちゃったな……ん?


「……」


「そこのボウズ、何してんだ」


「…っ!?」


ふと視線に気付き、扉を見ると隙間から少年が此方をジッと見ていた。アタシじゃなきゃ発狂するか、気絶してるな…ていうかまず気付かないか


「お姉さん、ボクのこと見えるの?」


吃驚した様子でアタシを見つめる少年。やっぱり幽霊か


「アタシは色々特殊でな…何もしてやれないけど、話くらいなら聞いてやるよ?」


「ほんと!?ありがと!ボク、柏木 柚希」


パッと明るくなり、此方へ駆け寄り、ベッドの端にチョコンと座る。ふ…幽霊でも子供ってのは可愛いもんだな


「アタシは天宮 千里。何時から居たんだ?」


「狐のお姉ちゃんが居た辺りかな?何だか騒がしいなぁって思って覗いてたの」


「そっか、そこをアタシが見つけたと。すまんな、騒がしくして」


「んーん、そんな事無いよ。あのお姉ちゃんは友達?」


「んー、友達っていうかクラスメートかな。まだそこまで仲良くないよ」


でも何か懐かしい感じがするんだよなぁ…何でだろ


「そうなんだ…でも羨ましいな。クラスメートでもお見舞いに来てくれるなんて…」


一転して表情に影が差した。むぅ…何だか分からんが複雑な事情があるみたいだな


「…両親は?来てくれなかったのか?」


「ううん、毎日来てくれた。どんなに忙しくても、どれだけ遅くなっても必ず来てくれたんだ。パパなんてボクを元気付けようと色んな物買っては看護婦さんにしょっちゅう怒られてた」


「そっか…愛されてたならそれで充分じゃねーか。大好きなんだろ?パパとママの事」


「うん!大好き!」


そう言いきり、柚希は笑顔を見せる。やっぱり子供は笑ってるのが一番だな


「…なぁ、両親に会いたくないか?」


「へ…?そりゃ会いたいけど、ボク死んでるんだよ?無理だよ」


「姿は見えなくても、此処にいるよって教えることなら出来る。大丈夫、アタシに任しとけ」


「…ほんとに?パパとママに会える?」


「あぁ、だから大好きだってちゃんと伝えろよ?」


「うん!でもどうやって?」


「明日、アタシは退院するからその時に付いてこい。連れてってやるから」


「ほんと!?ありがとお姉ちゃん!」


心から嬉しそうに笑顔を見せる柚希。しかしアタシもつくづくお人好しだな


「此処に来れば良いの?」


「あぁ、忘れんなよ」


「うん!じゃあ明日ね!お休みー!」


そう言いパタパタと走り去っていった。全くはしゃいじゃって…まぁ


「さて、アタシも寝るか…」


久しぶりに誰かの役に立てることを嬉しく思いつつ、眠りに付く。今日はよく眠れそうだ……








「お姉ちゃーん!」


“ドスッ!”


「ぐはっ!?」


大きな声と共に腹の辺りに衝撃が走り、一気に覚醒する。重い瞼を開けると、柚希が腹の上に乗っかっていた


「朝だよ!ほら起きて!早く行こうよ!」


「分かった分かった、起きるからまず降りてくれ……」


ったく、朝っぱらから元気だな……ていうか外暗いんだけど


「おい、今何時だ?」


「朝の5時だよ」


「早すぎだって…ふわぁぁ…まぁ良い。ちょっと待ってな、準備すっから」


欠伸1つし、起き上がり準備をしていると巡回の看護師さんが入ってきた


「あら?天宮さん、起きたの?早いね」


「あ、看護師さん、お早うございます」


「おはよう、今日の朝イチで退院だっけ?」


「はい、お世話になりました」


「いえいえ…でも喧嘩は程々にね?」


「あはは…善処します」


そう言って看護師さんは出ていった。昔から世話になってる人だからなぁ…まだ働いてたんだ。元気だなぁ


「天宮さん、お早うございます!」


「…また喧しいのが来たな」


思い出に浸る時間くらい寄越せ…


「酷い!私、早く天宮さんに会いたくて朝早く来て……おや?その子は?」


「昨日、お前が帰った後に会った。両親に会いたいらしいから連れて行こうと思ってな」


「全く…お人好しですね。まぁそこが天宮さんの良いところでもあるんですが」


やれやれと言った感じで九遠は呟く。何だか無性にイラッと来たな。そうこうしているうちに準備が整った。


「さて、行くとするか。道案内よろしくな?柚希」


「うん!」


「狐川、お前は学校行けよ?」


「天宮さんは?来ないんですか?」


「アタシは別に良い。待ってる奴なんて居ねーしな」


「目の前に居るじゃないですか…少なくとも私は待ってますよ」



少々不機嫌になり、頬を膨らませる狐川。本当に物好きだな、コイツは……でも悪くはないな


「わーったよ、用が済んだらちゃんと行くから」


「よろしい、では待ってますね。必ず来てくださいねー!」


手を振り、狐川は去っていった。さてと


「じゃあ行くか!」


「うん!」


元気に頷く柚希の手を繋ぎ、歩き出した











「此処だよ!懐かしいなぁ…」


暫く歩いた住宅街に柚希の家はあった。しかもその場所はアタシの住んでいるマンションの直ぐ側だった。世界は狭いな


「はぁー…でかいなぁ」


「お姉ちゃん、早く!」


「わーったって」


隣で急かす柚希を宥めつつ、インターホンを鳴らす。程無くして玄関が開き、1人の女性が現れた。


「すみません、柏木 柚希君のお宅は此処で間違いないでしょうか?」


「はい…でも息子は2ヶ月前に………っ!?」


そう言いながらアタシの隣へ何気なく視線を移すと、驚愕し言葉を失う。そりゃそうだわ、自分の息子がそこに居るんだからな


「ママ!」


「嘘…柚希なの?」


「うん!そうだよ!」


「あの…これは一体?」


困惑したようにアタシを見る。まぁ吃驚するよな、普通は


「信じてもらえるか分かりませんが、

アタシは霊と触れるし、話せるんです。柚希君がご両親に会いたいと言うもので連れてきたんです」


「そう…ですか…柚希、本当にごめんね…助けてあげられなくて……」


「ううん、良いんだよ。ボクはパパとママの子供で良かった。だっていっぱい愛してくれたもん!ボクを産んでくれてありがと、ママ!」


「…っ。本当にごめんね……柚希…私達の所に産まれてくれてありがとう…っ」


大粒の涙を流しながら、柚希の母親は言う。産んでくれてありがとう…か。やっぱり良いな、親子って



そのあと、旦那さんもやって来て親子揃って号泣していた……その間、部外者のアタシは物凄く居心地が悪かったのは言うまでもない……







「お姉ちゃん、本当にありがとう。これで心置き無く成仏出来る」


「そっか。達者でな…アタシがそっちに行くまで、バイバイだな」


「うん、またね!お盆に会いに来るから!」


そう言って柚希は行くべき所へと行った。さてアタシも行くかな


「天宮さん、用は済みましたか?」


「狐川か。あぁついさっきな…ありがとうだってさ……何だか照れ臭いよな」


「ふふ…良かったじゃないですか」


「ん、まぁな…じゃアタシらも行こっか。今からだと……」


「四時限目、古文ですね」


「うわ…かったりぃ」


「サボっちゃダメですよ?」


う…先を読まれた。まぁ約束したしな…


「分かってる、じゃあぼちぼち行くか…ん」


そう言い、狐川に手を差し出す。その手とアタシの顔を交互に見て不思議そうな顔をしていた


「手、繋いでくれ。右手がちょっと淋しいからさ…」


「…はいっ!」


笑顔になり、差し出した手を握り返す。それを見て、アタシ達は歩き出す。こんな日もたまには良いかなと思いながら……




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