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第36話 こんなスキル欲しいな

「お前ってさ、9:1の割合で文書力あるよな。あ、もちろん1が素晴らしい文書力で9がクソみたいな文書力なんだけど」

と、友人に言われショックを受けたのですがその後の友人のセリフ

「だからさ、1000作ったら、900は駄作だけど、100は良作になるんじゃね?」

このセリフ、なんか勇気づけられました。

正直、ツンデレか!とツッコミました。


まあ、1000も作れないんですけどね。


皆様は、この作品の1割を楽しんでいただけたらと思います!笑

「だからぁ! だからどうしてそうなるんだよ?

お前な、それだと魔王が倒せなくなるだろ?」

部屋に響くうるさい声のせいで俺は目を覚ました。

「…また…か」

また、ゲームの世界と元の世界とを行き来したのか。最近この現象は起きてなかったのだが、忘れた頃にやってくるんだな。

「でも、僕でしたらこの設定の魔王のほうが面白いです!」

「それはお前の技術がずば抜けてるだけだろ! もっと、一般層にもできるようにだな」

「どうした?」

言い合いをしてる男二人の間に俺が割り込むようにして話しかけた。

「ああ、よっさんじゃないですか。聞いてください。こいつね…」

男の怒っていたスタッフの聞くところによると、今度のゲームのアップロードの際、ゲームの難易度を上げたいと思っていたスタッフが調子に乗って、魔王を最強にしてしまい、もう一人のベテランスタッフがそれをやめさせようとしていた。ということらしい。

ちなみに、俺のことをよっさんと呼ぶのは大抵ベテランスタッフである。まあ、ほとんどがベテランスタッフであるため、よっさんと呼ばれることが多い。

「だって、魔王弱すぎやしませんか? テロンターロッドを使ったら簡単に倒せるんですよ? そのテロンターロッドも入手困難ではありませんし」

まあ、確かにテロンターロッドは魔法系の武器で、それから発せられる光系魔法の威力は凄まじく、遠距離攻撃ができる。それに魔王は光系魔法が弱点で、魔王が放つ遠距離攻撃の攻撃範囲より、テロンターロッドの攻撃範囲の方が広いというのも事実で、うまく使えば傷ひとつなく魔王を倒すことだって難しくはない。

「確かに、考えてみればな」

「よ、よっさん、そりゃないですよ」

怒っていた側のスタッフが持っていた資料を見ながら半分涙目になっている。きっと、その資料を作るのに大変な苦労をしたのだろう。

「ちょっと、それ見せてくれないか」

持っていたその資料を受け取り内容を見る。難易度を上げるという点では確かに上がっている。魔王が強くなったのではなく、魔王以外の魔物やモンスター全体のレベルを上げて、魔王を倒すまでのレベル上げやクエストを成功させるのを困難にさせる方法にしてある。

これの方が魔王のレベルを上げるよりも良い気がしてきた。

「じゃあこうしようか。一度魔王を倒して一旦ゲームクリアしてるデータにのみ、『魔王復活』的な感じでイベント発生させたらいいんじゃないか? それに加えて、この資料の案の内容をかじらせる形でどうだ?」

せっかく考えた資料を無駄にしたくはない。俺の説得に腕を組んで考え始めた。

「んー…」

俺のこの提案にスタッフは悩んだ。このスタッフはただでさえ優秀なスタッフの中でも更に優秀な部類に入るため、判断の一つにもプレッシャーがかかっているのだろう。決めるにもよく考えないといけない癖がついている。

「それに、魔王を一度でも倒せば、王からの祝福や街の人からの戦利品とかで装備も強くなったりするだろうし。あとは魔王を強くするために、武具屋に売っている武器のレベルも一緒にあげたり、新しい武器を売ったり、ゲームバランスを調整すれば大丈夫じゃないか?」

「お、流石です! ほら、僕の言ったとおりじゃないですか」

魔王の強さアップ計画を推し進めていたスタッフはドヤ顔で反対していたスタッフを見上げた。

「むむむ……仕方ない。そうしますかぁ」

俺の提案にも納得がいったのか、反対していたスタッフもついに折れた。とはいえ、顔はにこやかで、明らか俺の案に満足しているようだった。

そのあと、ゲーム編集会議にもこの案は通り、魔王は最強と化した。


「あのさ、ちょっといいか」

この世界に戻ってこれたのはいいが、これは一時的なものだろう。またゲームの世界に戻されるはずだ。

ゲームの世界の知識を手に入れるに最良なのは、ゲームの世界にいるときではなく、こちらの世界にいるときだろう。情報は今のうちに集めるべきだ。

「どうしたんですか?」

「ヨウシ・カヤエの性格設定を考えたのって誰だ?」

俺がそう聞くと、そのスタッフは少し何かを考えたような素振りをしてから答えた。

「ああ、みんなですよ。よっさんが猫好きだから猫に似たような設定にしようって」

猫に似たような設定…?

「あ、今まったく猫の性格じゃないって思ったでしょ?」

「え、うん」

どう考えても猫ではない。まあ、確かに一人で懐かないような雰囲気があるのは猫っぽいが。

「知ってましたか? 特別編では……」

コソッとした声に変えたスタッフの話に耳を傾けた瞬間、急に目の前が真っ暗になった。

視界が次第に明るくなってきて、映像が鮮明になっていく。

一体なんなんだ。貧血が起きたときのような頭痛のようなものが頭に感じる。

治ってきたとおもったら、今度はふさふさしたものが俺の手に当たったり離れたりしているのを感じた。

「んん…」

ぼけて見える世界のなか、黒くて長いものを掴んだ。

「ひっ…!よ、ヨシハルさん…あなたという人は…!!!」

その声が聞こえたと思ったら、腹にものすごい衝撃が走り、また気を失った。




「と、いうわけなんですよ。あ、これよっさんに言っちゃいけないって約束になってるんですから、周りの人に言わないでくださいよ。僕、どんなことされるかわかりゃしませんから」

「え…ちょっと…」

スタッフは周りをキョロキョロと確認し、慌てて書類を抱えたまま走り去った。

「…聞きそびれた」

なんてこった…

額に手を当てて天井を見上げる。

聞きそびれてしまった。俺があっちの世界に行っている間にこっちの世界の時間が進んだということか。

いいやまだだ、時間は有効に使おう。

俺はもう一人スタッフを捕まえて、カヤエの性格設定を聞き出そうとしたが、あやふやにスルーされた。やはり、内緒の話になっているのだろうか。

「あ、じゃあさ、一つだけ教えて。カヤエって、尻尾はあるのになんで猫耳はないんだ?」

これはずっと気になっていた。あんな素晴らしい芸術的な尻尾があるのにどうして耳はないのだろうか。

「えっ、それは…あれですよ…」

女性スタッフはかけていたメガネを持ち上げるように指で押し上げて言った。

「どう考えてもフラグじゃないですか」

「フラグ?」

そこでまた俺の意識はあちらの世界へと移動した。

視界はいつものように真っ暗になり、だんだんと目の前が見えてくる。

「起きましたか」

「か…カヤエ…?」

俺の顔を覗き込むカヤエの姿がそこにあった。

「あなたには失望しました。私のことをほったらかして、どこに行っていたというのです」

「え…」

「普通、大事な人が死んだりすればその人のそばにいるのではないのかと聞いているのです」

ああ、あれか。カヤエの人の気持ち確かめたい症候群の。

「それなのにあなたは、私をどう思ってるのですか」

カヤエの顔にはなんの表情も現れていないが、声が怒りに変わっているのがわかる。頭のアンテナがものすごく怒ってる。

シッポもクルクルと怒ってる。

「じゃあさ、カヤエ。聞くけど」

「なんですか?」

「大事な人の嘘を見破れない人っていると思う?」

「え…それは…」

「もし俺がカヤエの嘘を見破ってたとしたら?」

「こ、口実です! あなたは確かに最初…」

「ならどうして今カヤエが生きてることに驚いてないと思う?」

「それは…っ…」

言葉で押し通した。確かに俺は最初は気づいていなくて、今のカヤエを助けるために過去のカヤエのところへ向かうことを最優先した。

カヤエは下を向いて呟いた。

「失敗です…」

「え?」

「ウラさん、リリーさん、アルさん、アヤメさん。それとミリアさんも出てきてください」

カヤエのそのセリフにゾロゾロと全員集合した。ミリアについては大丈夫なのかと思ったのだが、俺を見てもなんの反応もなかった。

「みなさん、協力ありがとうございました」

カヤエは集まった皆に頭を下げた。

「ちょっとまて、お前らまさか…」

「まさかヨシハル殿が気づいていたなんてな」

「そうですよね? 私、まったく気づいていないものだと…」

完全に、完璧な、グルだった。俺はこいつら全員に騙されていたというわけか。

「教会の人にも協力していただきました」

なるほど、それで神父は生き返らないとかゲームではあり得ないことを言っていたわけか。突き飛ばしたのが悪く感じてきたな…。あとで謝りに行こう…。

「こんなのは初めてです。正直、あなたが本当に気づいていたのかすら疑うほどに」

疑いの目を俺に向けるカヤエ。どうやら自分自身の作戦がうまくいかなかったことに納得がいっていないようだ。

「も、もちろん最初から気づいてたさ」

途中からではあるが、確かに気づいた。過去のカヤエからとはいえ、本人にネタバレをされちゃあ気づかないわけがない。

「あ、そういえば!」

この時代のカヤエのことをすっかり忘れていた。急いで戻らないと。

「何かご用でも?」

「お、おう。急がないと…!」

俺は急いで扉に向かった。しかし、俺より先回りしてカヤエが扉の前で俺を塞ぐ。

「どこへ行くつもりですか。まだ話は済んでいません」

「話ったって、別に対したことじゃないだろ? それよりも、もっと大事なことが…」

俺がカヤエを手で退けようとしたとき。

ーーーパシンッ!

頬に衝撃が走った。

「え…」

「もう、知りません!」

目の前でカヤエは涙目になって俺を睨み、ものすごい勢いで扉を開けて出て行った。

「あちゃー…」

後ろでウラのため息が聞こえた。

「俺、なんか悪いことしたかな…?」

俺はビンタされた意味をまったく理解できず、周りに答えを求めたが、返事はこなかった。ただ、かえってきた言葉は。

「ヨシハル殿、おまえはとてつもなくーーー」



「とてつもなく、鈍感だな。吐き気がしたぞ」



女心を理解するスキルが欲しいと心の底から思った。

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