第31話 ミリア、暴走。
まず、カヤエと別れてから、真っ先に仲間達に誤解を解いた。それはそれは骨が折れる作業だったが、納得してくれたので良しとした。
「…ヨシハル」
俺が部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、目の前にミリアが現れた。
「どうしたんだ、ミリア」
よく見るとミリアの身体は小刻みに震えている。ミリアは顔を伏せていて先ほどと雰囲気が違う。
「やっぱ…ダメ…みたい…」
ミリアの小刻みに震えていた身体はガタガタと痙攣のように震わせるようになってきた。
「…大丈夫か!?ミリア?」
俺は何やら異変を感じてミリアに駆け寄る。
「こ、来ないでっ!!」
ミリアの緊迫感溢れる焦った声が俺の耳に入る。俺はピタッと動きを止める。
その声を聞き付けてカヤエが駆けつけた。
「どうかなさいましたか!?」
俺の後ろからカヤエが声を上げる。
「は、やくっ!はやく何処かに!」
ミリアはまた声を張り上げる。俺達は只事でない雰囲気に包まれ、ミリアを見つめる。
「ごめ、ん…なさい…お母様…」
ミリアは伏せていた顔を上げながらそう言った。ミリアの目からは一筋の涙が流れていた。しかしその涙は透明ではなく、血のように赤く染まっている。
「うわぁぁぁぁあああ!」
ミリアは剣を取り出し俺に斬りかかる。
(速いっ!)
俺は咄嗟に剣を頭の上に上げると、それが偶然、ミリアの剣とぶつかり合う。
「ミリア!?」
俺はミリアを見ると、彼女は人の目をしていなかった。まるで、獲物を狩ることに楽しみをもった狼のようだ。
「クッソ!スキルさえ使えれば…!」
俺が手こずらせていると、カヤエも加勢する。
俺がスキルを使えないといえど、二人相手はミリアもキツイ。
とは思ったが、全く違っていて、俺達は全く歯が立たない。こんなミリアを見たのは初めてだ。
その内、俺がミリアに追い詰められ剣を吹き飛ばされる。
「ヨシハルさん!」
カヤエが俺を守ろうと走り出すが、その距離からでは間に合わない。
(死んだ…)
俺はまず、そう考えてしまった。
ガキィィン!
金属音が鳴り響く。
「大丈夫か、ヨシハル殿!」
リリーが運よく、俺を守ってくれた。
リリーだけでない。ウラもアヤメもアルも、加勢してくれた。
しかし、ミリアの勢いは収まらない。
「なぜだ!なぜ、これほど強い!?」
リリーがミリアを相手にしながら愚痴をこぼす。
「俺にもわからない!」
この力は何処から来るのか。
「ふふふふふっ…」
ミリアは楽しそうにふふふと笑い出す。
スキルさえ、スキルさえ使えれば…
もう一度、俺は神殺しスキルを発動させる。
「なんだ……スキル、使えるじゃないか!!」
俺が神殺しスキルを発動してから、ものの数分でミリアは呆気なく鎮められた。
やがてミリアは目を覚ます。
「ミリア、大丈夫か?」
俺は横になっているミリアを起こす。
「ヨシ…ハルっ…ダメ、離れて!」
また、ミリアの様子がおかしくなる。
「うわぁぁぁああ!!」
ミリアはまた俺に襲いかかるが、カヤエが見事に抑え込んだ。カヤエの手の中で暴れている。
「ヨシハルさん、この部屋から出て行ってもらえますか?どうやら、貴方が原因みたいです」
「あ、ああ…わかった」
とりあえず俺は部屋を出ることにした。
「つまり、ミリアさんは自分より強い人しか愛せず、愛する人ができると、その人を殺すことでその人を手にいれようとしてしまうのです」
(な、なんだよ、それ!衝撃的過ぎだろ!聞いてたのは聞いてたんだが…まさかここまでとは)
「俺はどうすれば?」
ミリアを仲間にしたからには、今更仲間から外すなんてことは出来ない。かと言って俺は死にたくない。
「嫌われればいいんじゃないのぉー?」
床でゴロゴロしながらアルは言った。
「そうか…」
なるほど、俺がミリアにとって嫌な奴になれば、つまり嫌われさえすればあの衝動は収まるということか。
「どうやったら嫌われるんだ?」
「私は…ヨシハルさんに何をされても嫌いになりませんっ…」
「いや、ウラ。誰もそんなことは…」
「私も嫌いになることは考えられませんね」
(…全く参考にならないんだけど)
「あー、無理だねー」
提案者がアッサリと無理だと断言した。
「だって、ほんとに愛してたらなにされたって嫌いにならないよねー」
床を端から端へとゴロゴロ転がりながらそう言った。
「はぁ…」
「でしたら、こうすればどうでしょうか?」
ほんとにそんなことしても良いのか?
「ミリア?入って良いか?」
「ダメ!入っちゃ、ダメ」
ミリアの言うことを無視して部屋に入る。ミリアは俺を見ないように目を塞いでいる。
「ミリア、少し良いか?一つだけ、方法が見つかったんだ」
「うん、お願い…」
「本当に良いんだな…?」
俺はミリアの頭に手を当ててそう言う。
「うん…」
そして俺はスキルを発動し、ミリアの俺だけの記憶を消した。
久しぶりの更新ですが、読んでいただきありがとうございました。




