第32話 早すぎる帰還。
更新が遅くなりましたが、復活です
〈おい、聞こえておるか?〉
俺がミリアの記憶を消そうとした寸前で、神様の声が頭に流れ込んできた。
「もう、なんですか?こんな時に」
〈実はだな、お前たちは一旦元の世界に戻ってもらうことになった〉
そうか、やっと帰れるのか。
〈準備が出来たら呼んでくれ。できれば一箇所に集まってくれたらありがたい〉
「わかりました。ありがとうございます」
俺は、ふぅーっと息を吐く。
「…どうしたの?」
俺は目の前にはまだ記憶を消してないミリアがいるのを神様との会話に夢中になり忘れていた。
「やっぱり、ミリアの記憶は消さないでおこう」
「なっ…なんで…」
「とりあえず、皆を集めよう。ミリアはこの部屋で待っててくれ。俺が来たら目を塞いでくれよ?」
ミリアが頷くのを確認すると、俺は部屋を出て皆を集めに行った。そして、案外すんなりと全員集合できた。
「皆、準備出来たな?」
「出来ましたぁー!」
「もうとっくに済んでいる」
「はい」
「いつでもいいよー」
「…」
皆の返事を受け取って、俺たちは元の世界に戻ることを決意した。
〈よし、準備は出来たな。今から転送するぞ〉
「今度はミス無くしろよ」
〈いや、それはないと思…ヒック…〉
「…今、ヒックって…」
〈な、なにもないわ!い、ヒック…いくぞ!〉
「ちょっとまて、お前酔って…!」
俺の言葉を聞く気も持たず、神様は俺たちを元の、ゲームの世界へと転送した。
(いつつ…なんだよ、あの神様)
俺たちはしっかりと転送された。が、訳のわからない建物の中だった。
「皆さん、大丈夫ですか?」
カヤエが辺りを確認する。
「ん?ヨシハルさんが居ませんね」
(いや、俺はここに居るし)
「あれ?ほんとだ。ヨシさんがいない」
「ヨシハル殿ー?」
やがて皆は俺を無視して探し出す。
(何、このプレイ)
「ニャ、ニャニャニ…(俺は、ここに…)」
俺はその時、目の前の鏡に写っている黒いものと、その声を聞いて気づいた。
「ニャニャニャァァア!?(猫になっちゃったぁぁあ!?)」
「この猫は何でしょうか?」
カヤエはひょいっと俺を持ち上げ顔の方まで近付ける。
「ニャ、ニャニャ、ニャニャニャー!(俺、俺だよ、ヨシハルは俺!)」
「……」
カヤエと目線が合い、ずっと見つめ合う。
(な、なんか言ってくれないかな…)
「この猫、可愛いですー!」
カヤエが持っていた俺をウラがとり、抱きしめる。
(ちょっ…!やめ…!)
「……よしはる」
アヤメが久しぶりに口を開いたその言葉は俺を指差して言った。
「ニャン、ニャニャー!(そうだ、アヤメの言うとおりだ!)」
俺は半分涙目でアヤメを見る。アヤメはやっぱりわかってれたんだ。
「……そのねこから、よしはるが」
「それは、つまりこの猫がヨシさんを食べ…」
ウラがその言葉を発した時、今までで一番鋭い目線の矢が俺を突き刺す。
「丸焼きにでもしましょうか」
「いいですね。食べてやりましょう」
着々と俺を食べる算段を始める。
(なんでそうなるんだぁぁあ!お、おかしいだろ!こんな小さな猫が!いや、猫じゃないけど!猫なんだよ、今は!こんな猫が人一人食べれる訳ないだろ!)
「……じゃなくて、このねこがよしはる」
投げ捨てられた俺を拾いあげ、アヤメがそう言った。
(あの…アヤメさん?持ち方、持ち方考えてくれません?首の皮掴んで持ち上げるのやめてくれませんか?)
「…これ…が?」
(これって……物みたいな呼び方するなよ。…ん?あれは確か…)
俺はアヤメの手から抜け出して、ある物へと向かう。
「あ!逃げた!」
その声を振り払い、その物を使った。
「…なるほど。この猫がヨシハルさんで間違いないようですね」
「そ、そうですけど。なんでこれがここにあるんですか?」
俺が使ったそれは、ペンと紙である。この世界ではペンと紙は古い物で、その上値段が高く、いちいち手に持って書かないといけないのでとても非効率であるため、生産は中止になった。ペンを使うなら魔法を使う。というのがこの世界の設定。
俺はその紙に、「俺はヨシハルだ!」と、記入した。
「ほほぅ、この猫がヨシハル殿ねぇ~…」
リリーが俺を掴み、抱き上げる。
「フサフサしてて可愛いじゃないか」
(く…くそ…好き勝手しやがって)
「ず、ズルいですよ!リリーさんばっかり!私にも…」
なんて猫である俺は何も出来ないまま、取り合いされた。その際、身体を揉みくちゃにされたのは言うまでもないだろう…
「ふぅー…仕方ありませんね、テトラ・ペトラ!」
カヤエが俺に魔法を使うと、俺が元の姿に戻っていく。
「だ、だめっ…!」
ミリアが即座に目を塞ぐ。
「呪い解除の魔法ですが、かなり魔力を消費しますので何回も使えるものではありません。その上、それは一時的なものなので、少し経てばまた猫に戻るでしょう」
「あ、ありがとう…」
俺もテトラ・ペトラという呪い解除の魔法を使うか考えてたのだが、猫である身体でその魔力を使えるだけの魔力が残ってるかわからないから使いたくても使えなかった。
ウラ達はブーブーと文句を言っていたので魔力吸収スキルでくたばらせてやった。これで当分は俺の魔力に困ることない上にウラ達も勘弁するだろう。
「…き、鬼畜ですぅ…」
床でへたばってるやつが居るが、いちいち相手にしていられない。
「まず、ここがどこだかわからないな。とりあえず外に出て状況把握しよう」
というわけで、俺たちは外に出る。
「ここは、ナト帝国のようですね」
俺たちがその建物を出ると、ヨーロッパのようなレンガで積まれた建物が目に映った。
このゲームでヨーロッパのような街並みといえばナト帝国というのはお決まりであり、かなり経済が発展しているためお金を稼ぐには条件の良いところではある。だが、最初にスタートした場所からこのナト帝国はかなり離れており、普通では行くことができない。
ナト帝国に行く途中には必ず「マササギの森」を通らないとだめで、「マササギの森」に出てくるモンスターのレベルは相当高い。突破することは難しいだろう。
「ナト帝国ですか!?ナト帝国っていえば食べ物が美味しいって聞きましたー!」
「それはほんとか!?」
ナト帝国という言葉を聞き、はしゃぎだすウラとリリー。
「…そんなに行きたかったら行っていいぞ。俺たちはそこのホテルで泊まるから、暗くなったら帰ってこいよ」
「やったー!」
ウラとリリーは、はしゃぎながら強引にアルを連れて行った。
「良いのですか?」
「ん?ああ、ナト帝国は治安部隊がいるから襲われたりしないだろう」
自分の言葉を再確認しながら、俺たちは宿泊先であるホテルへと向かった。
「いらっしゃいませ」
丁寧な挨拶で迎えられた俺たちは一人一室というかたちで六部屋にしてもらった。
「そういえば、このナト帝国の隣にペスカの山があったよな」
部屋に向かいながら俺はカヤエに聞いた。
「そういえばそうですね。なにかあるのですか?」
「いや、久しぶりにレベルでも上げようかなーと思って」
俺は腰に納刀されている木刀を見つめる。
「そうですか。でしたら私とアヤメさんは買い物に出かけてもよろしいでしょうか?アヤメさんはこれといって強い武器を持っていませんので、出来るだけ強い武器が必要かと」
「んー、確かにそうだな。じゃあ頼む」
「わかりました」
「わ、私は…部屋にいるから…」
早速、カヤエはアヤメを連れて部屋に向かわずに方向転換して武器屋へと向かい、ミリアは自分の部屋へと向かった
「じゃ、俺も行くかー」
俺も方向転換してペスカの山へと向かうことにした。




