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25話 今思ったけど、空間停止スキルってなんでもアリだね。


いや、意味がわからない。俺を殺す?

何かの聞き間違いか?

「ど、どうして…?」

俺は尋ねるが、ウラは俺の剣に目を向ける。

「あなたには関係ないです。その剣、どこで……あ、いや、ところで、この人を知っていますか?」

俺は一枚の紙を渡された。

…その紙には俺の顔がそっくりに描かれていた。

俺は咄嗟に答える。

「さ、さぁー?知らないよ?」

「そうですか……では」

ウラは用が済んだのか、早速とこの場から去って行った。

「どういうことだよ…」

俺は殺されるほど恨まれることをした覚えはない。

その後、やけくそになりながら、その気持ちをゴブリンにぶつけた。

ゴブリンは悪くないが、ゴブリンがなんかムカつく。

夕方近くなったころ。

そろそろ家に帰る事にして、スキルを使って家に瞬間移動をする。

「わっ、れ、レイ殿っ!?び、びっくりするではないか。そんな急に出て来られたら」

リリーの目の前に瞬間移動してしまったようだ。

息を切らしながら俺を見る。かなり驚かせてしまったようだ。

「ごめん」

俺は一つ謝る。

「何かあったのですか?落ち込んでいるようですが」

俺の様子を見てすかさず言葉を投げて来る。

その言葉を避けるように俺は話をふった。

「いいや…なんでもないよ。それより、皆は自由にできた?」

「出来たよー。アヤメちゃんは無愛想だと思ってたけど案外面白いんだもん」

「……あ、ありがと」

アヤメは少し顔を赤くして下をむく。

一番心配していたアヤメ達はうまく行ったようだ。

「私達も楽しかったです。案外話は合うものですね」

「全くだ。これほど話が合うのはヨウシ殿が始めてだ」

カヤエ達は頷きながら俺を見る。

「そうか…それは良かった。夜ご飯だけど、私はいい。あ、あと風呂も。今日はもう寝ることにするよ」

「……だいじょうぶ?」

アヤメが俺を気にしてくれている。

「うん」

俺はそう言って、部屋に入ってベッドに潜り込んだ。

今日のウラの言葉。

あれは冗談を言う時の顔じゃなかった。

本当に殺意があった目をしていた。

俺は何をしてしまったのだろうか?

考えれば考えるだけ、イライラしてきた。

俺はそれをかき消すように、自分にスリープをかけて、眠りについた。






朝がきた。何とも不快な朝だ。

俺が隣りを見ると、リリーが擦り寄っていた。

そうか、寝る場所が無いから自動的にリリーが俺の所で寝たんだな。

俺がぼーっとしていると…

「いやぁぁぁぁああぁあ!!」

リリーがいきなり大声で叫ぶもんだから驚いてリリーを見る。

するとそこにはリリーが俺を見て叫んでいた。

「だ、誰なの!?いやぁぁあ!」

布団のシーツで身を隠しながら体をもじもじとさせて俺から離れる。

意味がわからないぞ。

「いや、なにも……」

俺が口に出して訴えようとした時。

あ…

久しぶりに聞いたこの声。

これは…

戻っている!男に!!

「どうしたのですか!?」

あまりの叫び声にカヤエが駆けつけてきた。

「男がぁ…!知らない男がぁ…!」

リリーは俺に指を指し、カヤエに訴える。

「そうですか。もう三日経ちましたか」

カヤエは元に戻った俺を見て、残念そうにする。

「よ、ヨウシ殿、こ、この男を…!」

へなへなとした声を出し、俺に指を差す。

「大丈夫です。この人はヨシハルさんですよ」

「よ、ヨシハル…?こ、これが…?し、しかしだな……もうなんでもいいから、その男を出してくれ…!」

なんでそんなに俺を嫌ってるのか不思議でたまらなかったが、俺はとりあえず部屋を出た。

「何かしたのですか?」

冷たい目線が俺に突き刺さる。

「な、何もしてないよ!朝起きたらこんな感じに…」

俺がそう言うと、カヤエは手で顎を触る。

「そういえば、彼女は他の人に肌を見せるのを極端に嫌がっていましたね。お風呂の時も、タオルを巻いたまま入浴しましたから。

服を着ていたとはいえ、男性と一緒のベッドで寝たというのが余程嫌いだったのでしょう」

…そうだったのか。

案外シャイな所もあるものだ。

「私が事情を説明して来ますから、貴方はアヤメさん達を……あ、いや、アヤメさんだけ起こしてきてください。アルさんもリリーさんのようになり兼ねませんので」

俺は念を押されて指示される。

「あ、ああ」

適当な返事を送ると、カヤエは

では、と言ってリリーの居る部屋へと消えて行った。

俺はその後にアヤメの部屋に行く。

ドアをコンコンと叩き、入るぞと一言言って部屋に入る。

アヤメは既に起きていて、ベッドに座っていた。

「……よし…はる?」

目を擦りながら俺を見る。

「おはよう。昨日は眠れたか?」

隣りに座って、どうにか話を振ろうとする。

アヤメの場合、話を振らないと沈黙が続いてしまう。

「……うん」

そして結局、沈黙が続いてしまった。

その沈黙の最中、アヤメが珍しく自分から話しかけてきた。

「……よしはる、は?」

それはただ返しただけの言葉だったが、アヤメにしては珍しい。

「俺か?…うん、まぁぐっすりとな」

「……よかった」

「何が?」

「……よしはる、なやんでたから」

「悩んでた?」

「……うん」

悩んでたというのは、俺が昨日のウラの言葉に考え込んでいたことだろうか。アヤメはアヤメなりに俺を心配してくれてたようだ。

アヤメにも人情というものがあってよかった。

「じゃあ、部屋出ようか?多分リビングで皆揃ってるだろうし」

と言うと、アヤメが着替えをしだしたので、俺は慌てて部屋を出る。今更恥ずかしがることは無いと思うが、ランクの「流離いの変態」が進化してしまっては困る。

俺がリビングへ向かうと、アルにも説明がされていたのか、「まさかレイちゃんがねー」とか、「ヨシハル殿、一度お手合わせを」とか何とか言ってきたが、俺は完全にスルーした。

少し経ってから、アヤメがリビングに来て、カヤエが料理を作りにキッチンへ。

俺は何であんなに料理を作るのが早いのか気になったので、カヤエについていき、キッチンを覗かせてもらうことに。


カヤエは普通に食材をまな板に並べる。

「…なんでしょうか?」

カヤエが、ジッと見ている俺にそわそわとする。

「いいや?どんな風に料理してるか気になってさ」

「そ、そんなにジロジロと見られては料理しにくいです」

「そうか。ま、気にせずに」

俺は壁にもたれかかり、腕を組む。

あまり集中して見ないことにし、偶にチラッと見るだけにした。

どんな手際が見られるのか少し期待した。


しかし、

そこには、料理といえる手際ではなかった。

例えるなら……そう、戦場だった。

魚が空中に投げられたかと思えば、包丁がその身を瞬く間に切り刻み、バラバラにし、綺麗に器に並べられる。

と思ったら既に鍋が準備されていて、出汁がとられていた。

次に野菜たちが、死刑台となるまな板に運ばれる。

しかし、その野菜たちは、自分の身が包丁によって何等分にも寸断されたとは気づかないだろう。

野菜達は何事もなかったかのように並べられる。

そして何時の間にか、俺の前に朝飯が用意されていた。

「……」

あまりの早業に俺は言葉が出ない。

こんなことが出来るなんて…

カヤエはそんな俺にむかって一言。

「遅くなりました。さ、リビングに運びましょう」

「……え、ああ」

遅い…だって?今のが遅いなら俺はカタツムリより遅いではないか。

そんなことを考えながら、鍋を運ぶ。

朝から鍋を食べるのは人生初だった。

この世界には鍋という物があることにはあるが、あまり浸透してないらしく、朝から食べないという概念はない。

「こらこら、そんなにかき混ぜたら魚の身が崩れちゃうだろ?」

鍋に魚を入れている時にあまりかき混ぜないのは当たり前だが、皆は平然とかき混ぜるため、さっきから魚がバラバラになって、何処にあるかわからなくなってしまった。

皆はやっとそのことに気づき、極力混ぜないようにする。

「そういえば、椅子が増えてるんだが、誰か買ったのか?」

「はい、私が買っておきました。実はこのテーブルも、一回り大きい物なんですよ」

だから五人で一つの机を囲んでも小さく感じなかったのか。

「今日は、どうするのですか?」

食べ終わり、片付け終わった時にカヤエが聞いてきた。

「今日は……」

「き、今日は!ヨシハル殿に決闘を申し込む!!」

椅子に座ってたリリーはいきなり立ち上がる。

「あー。無理。ってな訳で今日は魔人を…」

「いや!私と結婚…じゃない!決闘をしてくれ!」

俺の前に来てしつこく訴える。

しかし、よく考えれば、これは自分の実力を図るためのいい機会なのかもしれない。

でも、リリーに負ければなんか嫌な空気が漂いそうだし、かといってリリーが弱い訳がないし…

「あー…わかったわかった。やってやるよ」

頭をかきむしりながら立ち上がって、外へ出る。

「この辺でいいか?」

「場所など、どこでもいい」

リリーは剣を構える。

「……よしはる…」

アヤメは心配そうに見つめる。

「大丈夫だって。これは決闘だ。万が一のことがあっても死ぬことはない」

「期待しています」

カヤエは心配どころか、期待までしてくれている。

「お手並みはいけーん」

アルなんて、野次馬のように目をキラキラさせている。

俺はリリーに顔を向きかえる。

リリーはなんだか楽しそうに微笑んでいる。

こっちは気が気ではないのに…

一応、俺にも自信はある。神殺しランクの凄さと、昨日ゴブリン狩りをして上げたレベル。これが俺の自信。

しかし、相手はリリー・ジェファーソン。

並の相手ではない。本当は、特別イベントの際にリリーと剣を交えたことがあったが、かなり苦戦して、何度殺されたことか…

だが、最強というキャラクターは作れない。必ず攻撃パターンがあり、大体はそのパターンに沿って攻撃を仕掛けて来る。

このパターンに合わせて攻撃を繰り出せば負けることはまずない。でも、考えて欲しいのはこれがゲームではないこと。

ゲームではプログラムに従って全てのキャラクターや魔物、モンスターまでもが行動するが、世界というものはプログラムで出来ていないのだ。

果たしてうまくいくのか…


「では、いくぞ!!」

リリーのその声と同時にドームが展開する。俺は神殺しランクを発動させる。

リリーがこちらに向かってダッシュしてきた。

俺はそれに合わせ、バックに下がり、間隔を取る。しかし、その間隔はリリーがバックシールドをすることによって縮まった。

俺の木刀とリリーの刀が斬り合う。

リリーは一旦下がったと思ったら空中にジャンプする。

「いきなり決めるぞ!奥義!!」

ムーメント・ムーブメント!!!

先に俺は空間を止めさせてもらった。

皆が固まってる中、俺は空中にいるリリーを木刀で叩き込んでHPを1にして、再稼働させる。

「奥義!……ぐあぁあ!!」

悲痛な声が聞こえ、ドームは消えて行く。

俺は即座に回復薬をリリーに飲ませる。

「な、何を…!?」

いや、これは仕方なかった。いきなり奥義なんて使われたらたまったもんじゃない。

リリー攻略法は、第一に奥義を使わせないことだ。普通なら奥義は戦いの後半でないと使われない。

だから、いきなり奥義という単語を聞いて、慌ててスキルを使っちゃった。

一瞬冷や汗をかいた。

その奥義は必ず命中するようになっていて、当たれば即死、つまり今の状況では負けていたことになる

「何をって、今のは俺の奥義さ」

適当なことを言って誤魔化す。

「すごーい…私、全然見えなかったよー…」

「貴方にそんな奥義があるとは…」

「……」

やっぱり皆は信じてくれた。

空間停止スキルなんて、普通に考えたら人間ができる技なんかじゃない。

「私は……私はぁああ!」

リリーは自分に刀を向け、刺そうとする。

「や、やめろって!」

俺はその刀を止める。

「二度も…負け…た…」

リリーはヘタっと倒れこむ。

「負けたことで、そう落ち込むな」

「…うるさい。お前なんかに、励まされたくない」

リリーは完全に落ち込みだす。

「上には上がいるんだ。強くなればいいじゃないか。俺ができることならサポートするぞ」

リリーの肩に手を回し立ち上がらせる。

「ほんとか…?」

「な、何言ってんだよ。仲間なんだぜ?」

こんなこと言ってて、自分でも恥ずかしくなってきた。

さっさと家に帰って次を進めたい。

俺はリリーを抱き上げてスタスタと家に帰る。

「はい。というわけで。今日は魔人、バルバロッサを倒しに行く」

魔人バルバロッサは魔王を弱体化させるために倒さないといけない相手。

このメンバーなら負ける気はしない。

「バルバロッサなら私が倒した」

「は?」

「いや、私がこの間、ラムサール洞窟で砥石を探していたらいきなり攻撃を仕掛けてきてな。ムカついたから倒してやった」

「…」

バルバロッサは既に倒されていたようだ。

一人で倒せるほど弱くない気がするんだが…

「じゃ、じゃあ、ケビーネを倒しに行くか」

ケビーネも魔人でこいつも魔王を倒す前に……

「それなら、私が倒しました。

いえ、テナモ迷宮を探検してたら、邪魔だったので」

「………じゃあ、サスナー…」

「サスナーは私が倒したよー?」


……もう、魔王対策完了しちゃってるじゃん。

この気違い三人のおかげで魔王は完全に弱体化された。弱体化された魔王は弱い訳ではないが、まだ、最初よりは強くないことは確かである。

ということはやる事は一つ。

「魔王…討伐だな」

場が静まり返る。

やがてリリーが口を開く。

「ヨシハル殿、正気か?」

正気も正気。

魔人は三人いて、この三人を倒せば魔王は弱体化される。

しかし、この魔人は倒してから時間が経つと、魔王が生きている限り復活してしまう。

つまり、魔王討伐は今がベストな状況という訳だ。

ただ、魔王討伐する前に、まだまだ発生するイベントやクエストは沢山あった筈なのだが。

それらを飛ばして、魔王を討伐しても大丈夫なのかが少し不安である。

「正気じゃ無いよねー……相手は魔王だよぉ?」

「だよなぁー。魔王を倒すのは後にしよう」

即決。

取り敢えず、魔王は後回しにすることにした。今、焦った所で何もならない。魔人が復活してもこのメンツなら大丈夫だろう。

「皆さん、少し待ってください」

カヤエがアンテナをピーンとさせながら立ち上がる。

「どうしたの?」

「先程から、大きな殺気を感じます」

カヤエが静かにそういうと、リリーも言った

「ああ、私もだ。ずっとヨシハル殿の殺気と思っていたが、違ったようだ」

…俺って殺気常に放ってんの?そんなやついたら正直怖いだろ。


とその時、

ピンポーン

とチャイムが鳴った。

アヤメが立ち上がり、玄関へと向かう。

アヤメが扉を開ける。そして扉の向こう側の何かに向かって言う。

「……なに?」

「あ、ええと。ヨシハルって人居ますか?」

その声は、耳慣れた声でどこか悲しく感じる。

「……うん」

アヤメが返事をすると、その者が割り込んで来た。

「ウラさん!」

「カヤエさん!……ヨシさん!」

俺が立ち上がってウラの方へと向き直る。

「ウラ…」

「ヨシさん!」

ウラが走って俺の元へと向かう。

そしてそのまま、ウラは一瞬で剣を抜き、その剣は俺の胸を貫く。

ザクリと刺さる剣は、最後まで力を入れられ、完全に剣が胸を貫いた。

「よしはるッッ!!」

何時もの冷静沈着な声ではなく、焦りで染まったアヤメの声が、倒れていく俺の耳に入った。

こんな小説を25話も読んでいただきありがとうございます。

これからも、よろしくお願いします!

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