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週末ごとに奏音は透哉と遊ぶようになった。それまでの奏音は一人でかわいい恰好をしてかわいい甘いものを食べたり、お気に入りの服屋やアクセサリー屋を覗いたりして満足していたのだが、そこに透哉が加わった。すると、奏音の行動は一気に広がった。
ゲームセンター。水族館。プラネタリウム。映画。動物園。
一人では行きにくいと思っていた場所にどんどん透哉が奏音を連れていく。デートっぽいなと思ったが、カレカノごっこなのだから当然か、と奏音は自分を納得させていた。
「あ、やった。当たり!」
動物園の売店横にあるカプセルトイを回していた透哉が嬉しそうな声を上げた。
「ほら、カノン。プレゼント」
カプセルをかごに戻し、立ち上がった透哉は奏音に向き直ってカプセルトイのおもちゃを片手に握らせた。手を開いてみるとカノンの姿で初めて会った日にクレーンゲームで取ってもらった白いクマのゆるキャラ──しろたんのキーホルダーが奏音に握らされていた。
「カノン、その白クマ好きじゃん」
「白クマじゃないよっ! しろたん!」
「はいはい。しろたんね」
「ありがとう」
好きなキャラクターを白クマ扱いされたことには反発したが、奏音は素直に透哉に感謝して小さなぬいぐるみキーホルダーをにこにこと撫でる。
「んー……君の名前はどうしようかなあ。しろたんが二匹じゃ紛らわしいもんねえ。君はちっちゃいからちびたんかな」
いつものように奏音がぬいぐるみに話しかけてると、隣で透哉が笑った。
「ちびたんって……! カノン、安直すぎじゃね?」
「いいの。わかりやすいしかわいいでしょ? ちびたん」
ずい、と透哉の目の前にしろたんのキーホルダーの付け根を持って差し出して主張すると、ふふ、と笑ったまま透哉に奪われた。機嫌を損ねたのかと奏音が思っていると、透哉は奏音の腰元にかがんだ。
何かと思って奏音が両手を少し浮かせてじっとしていると、しばらくして透哉が「よし」と言って奏音と同じ目線に戻ってきた。奏音が腰を見下ろすとちびたんと名付けたキーホルダーが斜め掛けの小さな黒いレースに縁どられたバッグに付けられている。
「ちびたんの仮ポジ」
得意げに透哉は笑う。奏音もつられて笑うと手を伸ばされ、奏音の手が繋がれ、透哉が「行こ」と言った。
どきりとする。本当の彼氏と彼女みたいなことをしている。──手を繋いでいる。
『かわいい女の子は一番好き』ふと奏音は透哉の言葉を思い出した。奏音は透哉を嫌いではない。嫌いだったらこんな風にデートのようなことをしていない。かわいいものが好き。ただその共通点だけで一緒に週末遊んでいると思っている。男の娘の姿をしたカノンを透哉がかわいいと肯定してくれたからいる。それ以上でもそれ以下でもない。しかし、透哉から、奏音はなにか違う種類のものを向けられているような気がした。
奏音の右耳には透哉からもらったピアスが毎日揺れている。




