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週末限定のカノン  作者: 灯屋 いと


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 髪で隠れるから大丈夫。それにピアスなんて誰も気にしない。

 そんな思いで奏音は月曜に投稿する時、透哉にもらったピアスを付けたままにした。デザインが気に入っているから。奏音の好みに合ったかわいさだから。心の中では透哉にもらったピアスだからということを何度も否定している。

 高校生の奏音は制服をそのまま着る。着崩さない。〝高校生〟のユニフォームに〝かわいい〟を取り入れない。好きなだけ〝かわいい〟を取り入れるのは男の娘の姿をしている週末だけ。その時だけ、奏音はカノンになる。半端な混ぜ方をしない。カノンは奏音の日常の息抜きなのだ。

「おっはよ、奏音」

「おはよー。今日も暑いね」

「朝からなー。今日、体育あるじゃん。こんな暑さでやったら溶けるって」

「蒸発するよ。しかも外じゃん? 無理」

 教室に入りクラスメイトと話すことも普通の高校生と何ら変わらない。

 髪が少し長くてピアスを三つしている。そのくらいは十分普通の範疇に収まっていた。

 スマホがぴこんと通知を知らせてきて見ると、メッセージ画面に透哉から「おはよう」のスタンプが送られてきていた。奏音は昨日透哉に取ってもらった白いクマのぬいぐるみのキャラクターのスタンプで「おはよう」を返す。

 ──カレカノごっこって、カノンじゃない時も続くんだ? 今は僕なのに。

 奏音はそんな些細なことに引っかかりを感じたが、すぐに忘れた。

 学校で透哉が奏音に話しかけてくることはなかった。距離感は今までと同じ。透哉の周りはいつも賑わっており、奏音は一歩引いたポジションにいる。けれど、ぴこんとスマホの通知音がいつもより多く鳴った。透哉がどうでもいいメッセージを送ってくるから、奏音は返信した。いつの間にか、メッセージ上で会話が成立していた。


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