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「あっ! ねえ、透哉。あれ、かわいい」
「んー? なに? どれ、カノン」
「あれ。白クマのクレープ。ねえ、食べよ。さっきちびたんくれたから、おごるよ」
繋いでいた手を引いて奏音は透哉の気を向け、園内のワゴン販売の屋台を指さした。奏音の示した先には白クマを模した看板があった。
「おごり? いいの?」
「いいよ! 今日も透哉が動物園連れてきてくれたからかわいい動物いーっぱい見れたし、白クマの赤ちゃんもかわいかったし」
満面の笑みで奏音は透哉の手を引いてクレープのワゴンに向かった。
「透哉、イチゴ? チョコバナナ? どっちがいい?」
「じゃ、チョコバナナ。イチゴはカノン、好きじゃん」
二種類の中から好きなフレーバーを譲ってくれる透哉に奏音はくすりと笑って「透哉優しいね」と言い、注文をした。しばらくするとクレープのてっぺんにアイスにチョコペンで顔を書き、丸いチョコレートで耳を作った白クマのクレープが渡された。
「ベンチで座って食おっか」
「うん」
奏音は透哉と手を繋いだまま近くのベンチに座った。
白クマの赤ちゃん公開に合わせて出されていた白クマのクレープはかわいかった。手書きの顔が奏音のと透哉ので少し違うのも愛おしい。
「ねえ、透哉。写真撮ろ」
かわいい白クマのクレープを並べた写真と肩を寄せ合った自撮りの二枚を奏音は撮り、透哉のメッセージにシェアした。
「カノン、アイス食わんと溶けるぞ。ほら、クマの顔、よれかけてる」
透哉がクレープの上のアイスを指さす。
「あっ! それは大変。かわいいうちに食べてあげなきゃ」
言われたとおり、アイスが少し溶けかけて少しへたくそなチョコペンで描かれたクマの顔がゆがんできていた。奏音はスプーンでゆがみかけの顔の部分をすくって口に入れる。ひんやりとした冷たさと甘さが広がり、心地よい。
「カノンはマジで、かわいいが大事な」
「うん。かわいいは正義だよ」
にこにこのまま奏音は当然とばかりに首を傾げる。奏音にとってはかわいいは正義で何よりも大事なものだ。なのに、透哉は少しだけ表情を変えたようだった。そのあとに透哉は自分のクレープのアイスをひとすくいすくって奏音に差し出してきた。
「はい。カノン、あーん」
「んっ」
けれど奏音は透哉の表情の変化に気付かずに、差し出されたアイスをぱくりと食べた。
「おいしーねっ」
完璧にかわいい笑顔で奏音は透哉に向かって笑う。




