第44話 酒盛りの裏側でギルド騒動
三日後の夜、アイリスたちは街の拠点で静かに酒盛りを始めていた。
先日のダンジョン踏破の報酬とドロップ品の買取交渉を終え、ギルドから三日間の休暇をもらったことを祝うためだ。テーブルには、先日入手したプレイヤー製の酒、作り置きの揚げ物、香ばしいパン、とろとろのチーズハンバーグが並ぶ。冒険者としての疲れを癒す、まさにご褒美の宴だった。
ガルドが椅子にどっしりと腰を落とし、安堵のため息をつく。
「ふぅ……やっと落ち着けるな」
リーナも手元のハンバーグをつまみながら笑顔を見せる。
「うん、これが冒険者の楽しみだよね」
アイリスはテーブルに座り、グラスを持ってにやりと笑った。
「ふふ、やっぱり美味しい。酒の量も増えてるし、今日は遠慮なく楽しむぞ」
レオは控えめに座り、揚げ物を口に運びながら、戦闘の振り返りをしていた。
「……アイリス、あのバフのタイミング、完璧だった」
レオは淡々と呟く。
「デバフも正確に入ったし、チームの効率が格段に上がった」
アイリスはにやりと笑う。
「ふふ、俺もそう思うよ。でもさ、こうやって休憩しながら振り返るのも結構楽しいんだ」
三人と一人は、食事に集中しながらも、ギルドでの出来事や次の迷宮攻略の戦略を話し合っていた。
その裏側、冒険者ギルドでは騒動が起きていた。
ダンジョン踏破の報告を受けたギルドマスターは、あまりのドロップ量に眉をひそめ、幹部たちを集めて会議を開いた。
「……君たち、このパーティの報酬、計算通りに支払うのか?」
幹部の一人が疑問を呈する。
「普通の冒険者なら、ここまでの結果は出せないぞ」
マスターは静かに答える。
「我々の管理ミスではない。報告はすべて正しい」
しかし幹部たちは、他の冒険者の不満を懸念していた。
「この量、独占されたら間違いなく抗議が来ます」
別の幹部が付け加える。「金銀財宝も酒も含まれてる……市場価値が高すぎる」
マスターは少し溜息をつき、深く考え込む。
「……しかし、規則通りに処理するしかない。だが今後の管理は徹底する」
一方、拠点ではアイリスたちの酒盛りが続く。
ガルドが酒のグラスを掲げ、笑い声を上げる。
「はぁ……酒もうまいし、揚げ物もうまいし、今日の自由は最高だな」
リーナもパンを口に運び、満面の笑みを浮かべる。
「でもさ、俺たちが休んでる間、ギルドは大騒ぎしてるんだろうな」
アイリスはにやりと笑う。
「あいつら、俺たちの報酬の処理で頭抱えてると思うと、ちょっと面白い」
レオは少し照れながらも、落ち着いた声でつぶやく。
「……静かに楽しんでいられるのも、今のうちでしょうね」
その通りだった。ギルド内部では踏破報酬の計算や、他の冒険者の不満処理で忙しく動いていた。
だが、アイリスたちはそんな裏事情を知らず、自由な時間を満喫している。
揚げ物をつまみ、パンをかじり、とろとろチーズハンバーグにかぶりつく。酒を片手に笑い合う――冒険者としての小さな幸福が、ここにはあった。
「よし、次の冒険の準備も考えながら、今日は思いっきり楽しもう」
アイリスはグラスを掲げ、にやりと笑った。
三人と一人のチームは、外の騒動とは無縁に、静かに力を蓄えていく。
酒盛りの裏側でギルドは騒いでいる。だが、アイリスたちはそんなことに構わず、仲間と笑い、次の迷宮への布石を整えていた。
物語の幕はまだ下りない――休暇が終われば、また新たな冒険が待っている。




