第42話 美味しいご飯の争奪戦
三日間の自由期間の最終日。アイリスたちは拠点のセーフハウスでゆったりとした時間を過ごしていた。
「さて、今日はちゃんと飯作るぞー」
アイリスはキッチンに立ち、目の前に置かれた材料を見渡す。揚げ物用の油もオイスターソースもそろっている。さらに今日は、特別に「とろとろチーズハンバーグ」と「ふわふわパン」を用意するつもりだ。
「なんか……テンション上がるな」
ガルドが笑いながら椅子に座る。「作り置きじゃなく、出来立ての料理って感じだし」
「ふふ、楽しみです」
リーナも嬉しそうに手伝う準備をしている。
そして、新たに仲間になった付与術師のレオも、やや控えめにキッチンに立つ。「……僕も手伝います」
「もちろん。今回は君にも役割あるし、補助かデバフ用の手元作業だな」
アイリスは笑いながら指示する。「でも、料理の腕は期待してないぞ?」
「……はい、わかりました」
レオは少し照れながらも頷く。
アイリスは肉をこね、パンの生地を整え、オイスターソースで下味を付ける。ガルドは肉の成形やフライパンの管理、リーナは香辛料と調味料のサポートを担当。レオは手元の野菜や補助作業を淡々とこなす。
「よし、焼き始めるぞー」
アイリスが声を上げ、チーズを乗せたハンバーグをフライパンに置く。ジューッという音と共に香ばしい匂いがキッチンに広がる。
「うわ……やばい、うまそう」
ガルドが目を輝かせる。「これ、絶対争奪戦になるな」
「ま、戦闘の準備もかねてるんだから、食事の競争も当然よ」
アイリスはにやりと笑う。「みんな、箸構えろ」
パンも焼き上がり、ふわふわの香りが漂う。チーズハンバーグとパンをテーブルに並べると、三人の目がキラキラと光る。
「じゃ、いただきます!」
アイリスの合図で、一斉に手が伸びる。
「うんっ……うまっ!」
ガルドが一口食べ、目を見開く。「チーズがトロトロだし、パンもふわふわ!」
「ふふ、やっぱり美味しい」
リーナも満面の笑み。「これだけで冒険疲れも吹き飛ぶね」
「……これは……」
レオも小さく感嘆の声を漏らす。「戦力増えるわけだ……食事で気力も補給できる」
アイリスは笑いながらパンを頬張る。「ふふ、これが自由の三日間の成果ね。しっかり栄養取ったら、次の迷宮も安心」
しかし、その美味しさゆえ、争奪戦が始まる。
「待て、俺はもう一個取るぞ!」
ガルドが手を伸ばすと、アイリスも素早く手を出す。「こら、取るなー!」
「リーナまで……!」
ガルドは呆れ顔。三人と一人の付与術師の間で、ふわふわパンとチーズハンバーグを巡る小競り合いが勃発する。
レオは冷静にパンを受け取り、少し離れた位置で落ち着いて食べる。「……皆、子供みたいだな」
「だって美味しいんだもん!」
アイリスは笑いながらガルドのハンバーグを横取りする。「これが冒険者の特権!」
ガルドも負けじと取り返そうとする。リーナも両手にパンとハンバーグを持ち、口いっぱいに頬張る。戦闘では互いに協力する三人だが、食事になると容赦がない。
「……やっぱ、仲間ってこういう時も楽しいな」
アイリスは口いっぱいにチーズを頬張りながら思う。
ふと、レオが一口食べ終わり、口元に微笑みを浮かべる。
「……やはり、作り置きもいいですが、こうして出来立ては格別ですね」
「でしょ?」
アイリスは得意げに胸を張る。「作り置きも便利だけど、こういうのが冒険者のご褒美ってやつ」
その後も三人+一人は、ゆっくり味わいながらも争奪戦を楽しみ、最後には互いに笑い合う。
「ふぅ……食べすぎた」
ガルドが満足そうに椅子に戻る。「でも、こうやって皆で食べると、何倍もうまいな」
「そうね」
リーナも満足そうに頷く。「明日からまた冒険だけど、この休暇で体力も気力も回復した」
「うん、次の迷宮も安心だな」
アイリスはテーブルに残ったハンバーグを見つめ、次の計画を思い描く。「レオも戦闘で頼むぞ」
付与術師レオは静かに頷く。回復はできないが、デバフやバフで戦闘をサポートする力は確実にこのチームを強化するだろう。
美味しいご飯の争奪戦と笑い声に包まれながら、三日間の自由は締めくくられた。
この休暇で得たもの――仲間の信頼、レベリング、作り置き料理、そしてチーズハンバーグとふわふわパンの満足感――すべてが、次の冒険への布石となる。
物語の幕はまだ下りない。三人と一人の新しいチームは、次の迷宮に向けて準備を整えつつ、力を蓄えていった。




