第40話 揚げ物作戦と準備の日々
ギルドに踏破報告を終え、三日間の自由がもらえた。
宿の一室に戻った三人は、街の喧騒を背に、深く息を吐く。
「ふぅ……やっと自分の時間だわー」
アイリスはベッドに腰掛け、伸びをしながら言う。
「もう、迷宮で石壁と睨めっこしてるの飽きたわ」
「わかるわかる。俺も生き返った感じ」
ガルドは椅子に座り、肩の力を抜く。
「踏破で頭も体も使いすぎた」
「……静かで落ち着く」
リーナは窓の外を見つめ、深く息を吸う。街の光景が、迷宮の暗闇よりもずっと輝いて見える。
「さて、まずは買い出しだな」
アイリスが腰を浮かせ、ニヤリと笑う。
「揚げ物作るのに必要なもんを揃えなきゃ」
「揚げ物?」
ガルドが眉を上げる。
「……ああ、唐揚げとかの作り置きのやつか」
「そうそう、油とオイスターソースとか。味噌も醤油も味醂も足りてるからもう買わなくていいし」
アイリスが手をぱっと振る。
「これで揚げ物パーティできるってわけ」
「……やっぱり食べ物にこだわるなぁ」
リーナが小さく笑う。
「でも確かに、アイリスの作り置き料理は助かるもんな」
三人は市場へと向かう。
街は活気にあふれ、肉屋や八百屋の香ばしい匂いが漂う。アイリスの目はきらきら輝き、真剣な顔で油の棚を探す。
「よし……この油で唐揚げいっぱい揚げられるな」
アイリスは手に取った油をかかげ、笑う。
「オイスターソースも……これで下味のバリエ増やせる」
「……完全に料理目線だな」
ガルドが笑いながら手伝う。
「まあでも、作り置きあると冒険中便利だし」
「うん。これで休暇中に作り置きして、次の冒険に備えられるってわけ」
アイリスは荷物をまとめながら、すでに次の計画を考えている様子だ。
宿に戻ると、三人は手分けして荷物の整理と料理の準備に取りかかる。
「まずは油で揚げ物作るぞー」
アイリスがキッチンに立ち、材料を広げる。
「唐揚げ、春巻き、あとちょっと変わり種も挑戦しよう」
「俺、下ごしらえ手伝うわ」
ガルドが包丁を握る。
「肉とか野菜切るくらいなら任せてくれ」
「私も手伝う」
リーナは調味料や香辛料を手元に準備する。
アイリスがオイスターソースを手に取り、にやりと笑う。
「これさえあれば、いつもの唐揚げがもっとコク出るんだよなー」
「……完璧すぎる」
ガルドが感心しながら言う。
「休暇初日からこの本気はすごい」
三人は手際よく作業を進める。肉に下味をつけ、油で揚げ、味見をしながら調整。
「んー、うまい!」
アイリスがひとつ唐揚げを口に運ぶ。
「これ、ダンジョン帰りでもテンション上がる味だわ」
「確かに」
リーナもひとつつまむ。
「休暇中にこんな美味いもん食べられるなんて」
「まあ、三日間の自由ってわけだしな」
ガルドが笑う。
「体も休めつつ、戦力補強も兼ねてるわけだ」
休暇初日は、揚げ物作りと食材整理であっという間に過ぎた。
三日間の自由は、ただの休息ではなく、次の冒険への準備期間でもある。拠点計画、仲間候補の情報整理、作り置き料理での補給体制――すべてが同時進行だ。
アイリスは満足げにキッチンを見渡し、笑う。
「よし、これで次の冒険も安心……って感じ?」
「完全に安心できるとは言えないけど、準備は万端だな」
ガルドが肩を叩く。
「この三日間、休むもよし、準備もよしってわけか」
「うん、あと仲間探すのもこの間にやる」
アイリスが決意を込めて言う。
「回復魔法使えて、補助もできる付与術師……絶対仲間にする!」
リーナも小さく頷く。
「それが加われば、戦闘も長期探索もぐっと安定するね」
こうして、三日間の自由は始まった。
休むもよし、料理するもよし、仲間探しもよし――三人にとって、この三日間は体力回復だけでなく、次の冒険への布石でもあるのだった。




