↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sランク盗賊(※ギルド内評価)だった俺、ロックな男に憧れて"アッシュ"と名乗り始めた ~キャラ作りは全部バレています~  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/60

第四十話 俺はもう違う

 四度目とも五度目ともつかない帰郷だったが、ボドにとって、地元メルダに戻ることは、もはやすっかり日常の一部になっていた。


「聞いてくれよ、俺、ガルシオンと仲良くなったんだよ」


 ハンスの家に集まるなり、ボドは開口一番、そう切り出した。


「ガルシオンって、あの有名な」


「そう、あのガルシオン。連絡先交換して、今度また会う約束もしてる」


「へえ、すごいじゃん」


 ハンスが素直に驚いた声を上げたが、隣でカインがにやにやしながら口を挟んだ。


「仲良くなったっていうか、ストーカーみたいに背中撫で回したんだろ」


「なんでそれ知ってんだよ」


「レオンから聞いた」


 ボドは一瞬、言葉に詰まったが、すぐに気を取り直した。


「まあ、多少アプローチが強引だったのは認めるけど、結果的に印象には残ったわけだから」


「印象に残るって、キモい奴として、だろ」


 ジークが酒をあおりながら、容赦なく突っ込んだ。


「うるさいな。とにかく、俺はもうお前らとは違うステージにいるんだよ」


「ステージって何だよ」


「有名人と繋がりがある人間と、そうじゃない人間の差だよ」


 ボドはそう言いながら、ますますテンションを上げていった。


「これがきっかけで、俺、本当にスターになれる気がしてきてるんだよな。ガルシオンみたいに、いつかステージに立って――」


「その前に、彼女と激しすぎて姉貴の家追い出されたんだろ、お前」


 ゴランツが、水を差すようにそう言った。


「な、なんでそれも知ってんだよ」


「カインが言ってた」


「お前、色々喋りすぎだろ」


 ボドがカインを睨むと、カインは悪びれる様子もなく肩をすくめた。


「別に、面白い話だったから」


「うるさい。とにかく、俺は今、確実に上に向かってるんだよ。地元にいた頃とは、もう格が違う」


「その割には、暇な時期にオナホ洗おうとして、水道管詰まらせてなかったか」


 ハンスが、思い出したように、あっさりとその話を投下した。


「なんでそれまで知ってんだよ!」


「カインが言ってた」


「お前、本当に何でも喋るのな」


 ボドが頭を抱えると、部屋の中に、堪えきれない笑いが広がった。


「つーかそもそも」


 ジークが、笑いを堪えながら口を挟んだ。


「あれって、洗って使い回すものなのか?」


「知らねえよ、そんなこと」


「知らねえのに洗おうとしたのかよ」


「うるさい黙れ」


「いや、でもさ」


 ジークが、笑いながらも続けた。


「スターになる話してる横で、水道管の話出てくるの、なかなか壮絶だぞ」


「うるさい、黙れ」


「格が違うんだろ、俺らと」


「うるさいって言ってんだろ」


 ボドは不貞腐れたように酒をあおったが、その顔は、怒りというより、諦めに近い表情をしていた。


 どれだけ胸を張って新しい自分を語ろうとしても、この輪の中では、すぐに過去の恥ずかしい話が引っ張り出されてくる。その構図だけは、何年経っても変わらないらしかった。


「まあでも」


 ハンスが、ひとしきり笑ったあとで、ぽつりと言った。


「ガルシオンと繋がれたのは、普通にすごいと思うぞ」


「だろ」


「その前後の話がアレなだけで」


「うるさい」


 結局その夜も、ボドの「格の違い」は、地元の面々には、最後まで正しく伝わることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。