星国の姫とペガサス Ⅱ
深い夜の森の奥。
葉や多い茂る木の隙間から差し込む月の光が、ペガサスと精霊とステラアーチェを照らしていた。辺りには星の光のような金色の粒が、日の光を受けた朝露のように輝いている。
あまりにもかけ離れた幻想的な風景に、ステラアーチェは再び「ほぅ···」と、小さく息を零した。
「初めまして、プリンセス。私の名はユリウス。そして、ここは"夢の泉"」
「ユリウス。夢の···泉?」
ステラアーチェは辺りを見渡して、小さな声で呟いた。ペガサスの足元の泉はとても澄んでいて、青とはまた違う、泉の色を例えるならば"蒼"、又は"碧"と表現した方がシックリ来る色をしていた。
-まるで、モネの池みたいだわ···。
泉には無いはずの色とりどりのサンゴ礁に、見た事の無い美しい魚たちが、長い尾を優雅に揺らして伸び伸びと泳いでいる。所々に真珠のような宝石粒が、星の光に反射して輝いていた。しばらく泉を見つめていたステラアーチェだが、ペガサスに向き合う体制になる。
「私は、ステラアーチェ。私はどうしてここに···?」
「君が、私の存在に気づいたから、こうして"君の夢"の中を通じて、私が君を呼んだから」
「いいえ、違うわ。私は王太子様に、貴方の存在を教えて貰っただけだもの。···、それにここは、私の夢の中と言う事かしら?」
「あぁ。それでいいんだ。きっかけは何であれ、1つでも私の事に気がついてくれるなら。そしてここは、君が持ってる心の中の夢の中。君の心は澄んでいて、そしてこんなにも美しい。ここは君の星の力の源となる所」
「私の、心って···」
なぜだか、急にステラアーチェは羞恥心を覚えて、頬を赤くした。心の中を覗かれてしまっているようで。
「本当に純粋だ。無垢で穢れを知らない。そんな君だからこそ、私は君を守りたい。けれど、残念ながら今の私は実体を持つことが出来ない」
「どうして?」
「それは、まだ君が私の事を信じきれていないから」
「!···、ごめんなさい」
「大丈夫、謝らないで。私は君の半身でもあるから、異世界から現れて来た事はわかっているし、信じられないのも無理はないと思うから」
「···、ユリウス」
「名前を呼んでくれるんだね。ねぇ、ステラアーチェ。両手を出して、胸の前で手のひらを軽く合わせてみて」
「は、はい···」
ステラアーチェはユリウスに言われた通りに、胸の前で両手を合わせた。ユリウスはステラアーチェの両手の前に顔を近付けると、両目を閉じて呪文を唱える。
すると、両手の中が光だし、パァァァァッッ!、と眩い光を放つ。
「!···ッッ、ユリウス?!」
「大丈夫。そのまま、光が収まるのを待って。ゆっくり手のひらを開いて」
ステラアーチェはどこか温かく、強い力を感じていた。ユリウスの言葉の通り、光が収まってから手のひらを開くと、そこには···。
「···、綺麗。まるで、雫の中に星が入っているみたい」
手の中には、ドロップ型の宝石の中に、金色に輝く粒子が散りばめており、キラキラと輝くペンダントが収まっていた。
「それは私からの贈り物。そして、ステラアーチェと私を繋ぐ"鍵"になる」
「鍵?」
「そう。私を探して、ステラアーチェ」
ユリウスの瞳が細められた時、急に朝日が森に注ぎ込まれ始めた。ステラアーチェの目覚めは近いと確信したユリウスは、言葉てを伝える。
「うん、必ず見つけるわ。ユリウス、ありがとう。大事にするから···」
ステラアーチェもまた、己の目覚めを確信し、力強く頷いた。ユリウスの顔に手を伸ばし、やんわりとひと撫でしたその時、朝日に包まれて辺りは真っ白な光に呑み込まれた。
-夢。じゃなかったんだ。
朝日に包まれた自室で目を覚ましたステラアーチェは、手の中の違和感にゆっくりと手のひらを開いて、ユリウスから貰った星の雫のペンダントを確認したのだった。




