星国の姫とペガサス
仕事を終え、お風呂に入りベッドへと横になり、今朝の出来事を思い出していた。具合が悪いわけではないけれど、今日は色んな意味で胸がいっぱいで、食事が喉を通りそうに無く、こっそりと自室へと戻って来たステラアーチェ。体制を変えて仰向けになり、ぼんやりと王太子の言葉を思い出していた。思い出しては顔を赤くさせたり、枕を抱き締めてじたばたしたい衝動にかられたりしていたのだが、王太子のある言葉が気になっていた。
-ペガサスって、何?どう言う事なのかしら。
頭に角を生やし、馬の背に翼の生えた馬だと言う事は認識しているけれど、ペガサスと私に何の関係があるのだろうか。
『ペガサスが見つかれば、それは君が星の王国の王女としての証になる』
-そもそもペガサスと王女としての証って···。
考えれば考える程、不思議と瞼が重たくなって来る。体もふわふわしてきて、眠りへと誘われるように、ステラアーチェはゆっくりと瞳を閉じた。
♢ ♢ ♢ ♢
キィィィーンッッ···。
キィィィーンッッ···。
『ねぇ、起きて···』
『ねぇ、起きて···プリンセス』
どこかで、柔らかな優しい子供の声がする。続いて、ティンシャの音が心地よい波動で耳元を掠めて行く。夢の中だと気がつくのに時間がかからなかったのは、きっと今住んでいる環境とは、恐ろしくも噛み合わなかったせいだろう。
目を開けば、夜の闇に宝石を散りばめたような星空に、真っ白な星の王国の宮殿。神殿のように造られた宮殿への道の端には柱が建てらり、その柱の上からは噴水のように水が溢れ、やがてそれは道の端に造られた浅い川がに流れていく。
ちらり、ちらりと、どこからか白い薔薇の花弁が舞い散る中で、ステラアーチェは普段のメイドの姿では無く、おしり辺りまである星色の長い髪をそのままに流し、純白のドレスに身を包んでいた。
-ここは、どこ···?
静かに佇んで、見た事のない景色。しかしどこか懐かしく、胸の奥が熱くなる。
『プリンセス!』
『わぁ!プリンセスだぁ!やっと会えた』
「ッッ!!?、な、えぇっ!?···リアル、ティンカー〇ル!?」
ステラアーチェがどこか懐かしく思っていると、"ソレ"は何処と無く現れた。ステラアーチェは目を丸くして驚いていた。
『ティンカー?なぁにそれ。私達は星の精霊···。この星国に住む精霊なの!』
「喋った!?」
星の精霊は人形のようで、それはまるでバレエの"くるみ割り人形"に出てくる、金平糖の精のような姿をしていた。クラシック·チュチュや、ロマンティック·チュチュを連想させる。ふわふわのスカートの生地に、金色の刺繍。もちろん足には、トゥ·シューズを履いている。背中には蝶のように羽があり、白く半透明で、飛べば金粉が舞い、やたらと幻想的で。
『ねぇ、こっち』
『こっちだよー!』
『もう、ずぅーっ、と待ってる』
『早く行ってあげて!』
精霊の1人が、ステラアーチェの指先を持ち上げて引っ張る。
「ぇ、っ、あのっ!」
精霊に言われるがままに、引っ張られるままに、ドレスの裾を握られていない方の手でたくしあげて、裸足のまま走る。
「!···、あれはっ」
やがてたどり着いたのは、森に囲まれた林の中。森の中の、澄んだ湖の中に···白い白馬。ペガサスがいたのだ。
酷く美しい、白銀の長い角。金色の鬣と尾。
ペガサスはステラアーチェに気が付いて、その瞳に写すと、バサリと翼を広げてひと鳴きすると、ゆっくりと水の上を歩いてステラアーチェに近づい行く。湖はペガサスが水の上を歩く度に、湖に描かれた星空に波紋を広げていった。
「ぁ、···」
無意識に、ステラアーチェは後ろへ1歩下がってしまう。
『大丈夫、怖がらないで』
直接耳に届く声、否。
頭の中で響く少年のような声。
「この声は、あなた?」
『うん。そう···、やっと見つけた。私のプリンセス』
ペガサスはステラアーチェの目の前までやって来ると、問に応えるように1度頭を下げた。よく見れば、瞳には星が写っているようで。ステラアーチェはペガサスの美しさに、ため息を零した。
ティンシャ:小さなシンバルのような浄化アイテム。




