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ボクはロリなスライムじゃないよ。イケメンになりたいだけなんだ  作者: アザとー
『姉貴』と書いて向かうところ敵なし
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11

「不審者?」

 イェの前にどさりと鉄鉱石の袋を下ろしたスライムは、ギガントの姿をずるりと解いた。

 鉄打つ音が賑やかに響く工房の片隅で、イェは声を潜めることすらなく、世間話のような気安さでその話を続ける。

「組合の中では既に有名な話だ。一人の女が何件かの工房を訪ね、『あるもの』の修理を依頼している。」

「もしかして、その女ってのは乳のでかい美人で、『自分』を修理してくれって言うんじゃねぇのか?」

「やはり知り合いか。フタマタはいかんぞ、フタマタは。」

「馬鹿な事言ってねぇで、その女はどうなったんだよ。」

「組合の連中には、妖しい仕事を迂闊に引き受けるような馬鹿者はいない。だがこの村には、金さえもらえればどんな仕事でも引き受けるような、節操無しだっている。」

「まだ村の中にいるってことか。」

「おそらくはな。」

「ああ、もう、面倒くせぇなぁ。車輪は? あとどのぐらいかかるんだよ。」

「まあ、三日って所だろうな。」

「車輪の完成が先か、あいつの修理が先か、ってことだな。」

 ずるりとギガントを模るスライムに、イェが振り向いた。

「どうする。姫サンをどこかへ隠すか?」

「この家より安全な場所が他にあるかよ。だが、すまねぇ。多分騒がせることになる。」

「ふん、不肖の弟子の尻拭いも、『師匠』の仕事のうちだ。気にするな。」

「不肖ついでに、俺のお願いを一つだけ聞いてもらっても良いか?」

「面白いことなら、な。」

 ちっさいおっさんが、にやりと笑った。


 鍛冶屋しょくにんに必要なものは腕の良さ、ただそれのみ。鍛冶屋向きの種族と言うものは確かにあるが、彼らが皆、鍛冶屋の道を望むわけではない。このミジホまでたどり着く者は鍛冶屋を望み、研鑽を積み、確かな経験と腕を身につけた生粋の職人。種族など関係あろうはずがない。

 それゆえ小さな村であるにもかかわらず、ここミジホは実に多様な種族が集まっていた。

庭先でユリと遊んでいる子供達も、バラエティに富んでいる。イェ家の小さなノームから、見上げるほどに大きな単眼巨人サイクロプスまで。もちろん人間の子供も入り混じって、きゃあきゃあと甲高く叫びながら走り回っている様は、実に楽しげであった。

 子供達は、家から出てきたギガント姿の彼を見て叫ぶ。

「ロリコンが来た~!」

「きゃあ~、食べられちゃう~!」

 からかい半分で逃げてゆくちびっこどもに、スライムは苦笑した。

「ロリコンじゃねぇって。」

 ただ一人残ったユリをひょいと肩に上げる。

「楽しかったか?」

 姫君であるユリの周りには、大人しかいなかった。他の王族の子供と顔を合わせる機会はあっても、高貴な子として育てられている彼らは、騒々しくはしゃいだり、汚れるような遊びをしたりはしない。

「友達、楽しい。」

「そりゃ、良かった。」

 ユリの微笑みは微かではあるが、確かに満足しきったものである。そのことを見てとったスライムは、にっこりと笑い返してやった。

「ヤヲを呼びに行くんだが、一緒に行くか?」

「行く。」

 キュッとしがみついてくる小さな体を支えながら、スライムはほわっと溜息をこぼした。

「平和だな……」



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