表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクはロリなスライムじゃないよ。イケメンになりたいだけなんだ  作者: アザとー
『姉貴』と書いて向かうところ敵なし
PR
43/194

12

「平和ではないです!」

 スライムによって中庭に連れ出されたヤヲは、無理やりに木刀を握らされた。

「いきなり剣術指南ってどういうことですか。しかも、いくら強いとはいえ、一介の一主婦が……」

 既に木刀での素振りを始めていたサクテは、にやりと笑う。

「魔王直下軍、特別室所属。剣術指南役、サクテ=ウェ=ツンニーク……アタシの昔の肩書きさ。」

 ギャラリーはユリとスライム、そして、珍しく難しい顔をした中年ノームだけ……

「まあ、今日の指南役は、姉貴じゃないがな。」

 ぷるんと体揺らすスライムは、小さいおっさんをずりりと指した。

「師匠御自らのご指導だ。有難く思えよ。」

「師匠? 鍛冶屋サンじゃないんですか。」

「ああ、鍛冶屋だ。それも生粋のな。」

 サクテの怒号が飛ぶ。

「無駄口叩いてんじゃないよ! さっさとかかってきな。」

「良く解りませんが、行けば良いんですね!」

 ヤヲは大きく脚を踏み出し、一気に間合いを詰める。木刀がびゅっと風切った。

「馬鹿が! 正面から突っ込むんじゃないよ!」

 かっつーんと攻撃の一閃が弾きあげられる。

「ぐっ、姉弟そろって、同じことを!」

 両腕の力だけで刀道を大きく変え、斜め上から無理やりな攻撃をねじ込む。だが、サクテの木刀は既に音もなくそのわき腹に打ち込まれ、ヤヲの体は横に大きく弾かれた。

「ごちゃごちゃと考えすぎなんだよ! 頭を空っぽにして、ただ打ち込んできな!」

 ヤヲが咆哮にも似た声をあげ、力任せに、ただひたすらに剣閃を打ち込む。

「それでいいんだよ。それがあんたの本来の剣筋だ。」

 その全てを右へ左へと自在に流しながら、サクテがにやっと笑った。

 傍で見ているスライムは、隣で腕を組む師匠を見下ろす。

「どう思う?」

「ふむ、強いな。全てを斬り捨て、ねじ伏せる『覇者の筋』だ。あ奴、まだまだ強くなるぞ。」

 イェはヤヲに向かって小さな体には似つかわしくない、重厚な大声で言葉を与えた。

「剣を振るな! それは道具にあって道具にあらず。自分自身を振れ!」

 攻撃の熱気にぼんやりとしたヤヲが呻く。

「良く解らないことを……」

「とりあえず、剣を持っていることを忘れろ。相手に当てるべきは己の拳! 剣は自ずと主に着いてくる。」

「ああ、それならなんとなく……」

 ヤヲの振る木刀の音が、ひゅおっと心地よく当たりに響いた。かつんと弾き返すサクテの音が、心なしか余裕を失ったように感じる。

「相手の防御など気にするな! それすらも叩き伏せるが覇者!」

 がつっ、ごつっと、ぶつかりあう木刀の音が重たく変化した。

 今まで黙ってたユリが、驚きを小さくつぶやく。

「ヤヲ、強い。(お兄ちゃん、かっこいい(ノ `・∀・)ノ)」

 妄想力を上乗せされたヤヲの木刀が、ついにサクテの防御をこじ開けた。

「しまった!」

 ぐっと身を縮めるサクテの、まさに鼻先三寸に振り下ろされた木刀は、それ以上動くことはなかった。

「私の勝ち、で良いですね?」

 肩を呼吸で揺らしながらも、ヤヲは自信に満ち溢れて立っている。その姿にスライムが賞賛の叫びをあげた。

「やったなヤヲ! マヂかっこいいぞ!」

 


おまけ


 井戸端でもろ肌を脱いだヤヲは、白い手ぬぐいを冷たい水に浸して己の体を拭った。

「派手に……やられちゃいましたね。」

 痣と傷で汚れた白い肌を見下ろして苦笑する。

「ヤヲ、後ろにもだ。」

 ぷるんと這いよったスライムは、その手ぬぐいを取り上げて、背中の傷にそっと置いた。

「無理させたな。」

「このぐらい……おかげで、もっと強くなれるような気がしますよ。」

「ヤヲ……」

「スラスラ……」

 その様子を傍らで見ていたユリが、ぽそりとつぶやく。

「びーえる?」

 二人の男がぐあっと、拒絶に身悶えた。

「違うからっ!」

「ありえませんっ!」

「誰だ、ユリに変なことを教えた奴はっ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ