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君と僕が統べる夜  作者: 愛猫


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4/7

第4巻「始原の王」

プロローグ ――世界が生まれる前

第1話「透明な王冠」

第2話「五つ目の王冠」

第3話「クロノスの罪」

第4話「始原の力」

第5話「四王の誕生」

第6話「消された第五王」

第7話「王の記憶」

第8話「夜王の過去」

第9話「始原の王の願い」

第10話「王冠の代償」

第11話「始まりを超えて」

第12話「始原の王」

エピローグ ――朝の向こう側

プロローグ ――世界が生まれる前


何もなかった。


空もない。


大地もない。


光もない。


闇すら存在しない。


ただ――


《無》だけがあった。


そこに、一つの光が生まれる。


黒でもない。


白でもない。


あらゆる色を内包した、不思議な光。


その光から、一人の少年が生まれた。


少年は周囲を見渡す。


「……何もない」


少年は手を伸ばした。


すると。


世界が生まれた。


空。


大地。


海。


そして――


《夜》。


黒い夜から、一人の少年が生まれた。


次に。


夜を照らす《月》。


生命を司る《白》。


そして――


新しい一日を告げる《朝》。


四人の王が生まれた。


始原の王は、四人を見つめる。


「これで世界は完成した」


しかし。


四人の王は問いかける。


『あなたは?』


始原の王は笑った。


「僕は――」


「君たちより、ずっと前からここにいる」


「だから僕は、王じゃない」


「《始まり》そのものだ」


その瞬間。


世界に、最初の夜が訪れた。



第1話「透明な王冠」


ヨルたちの前に現れた巨大な扉。


その向こう側から、一人の少年が歩いてくる。


黒い髪。


透明な瞳。


そして――


頭上に浮かぶ、透明な王冠。


「……お前が」


ヨルが身構える。


「《始原の王》か?」


少年は頷く。


「そう」


「僕の名前は――アイン」


始原の王、アイン。


彼は四人の王冠を見つめる。


「夜」


「月」


「生命」


「朝」


そして。


ヨルを見る。


「久しぶりだね」


ヨルの表情が変わる。


「……俺と会ったことがあるのか?」


「あるよ」


アインは静かに笑った。


「何度もね」



第2話「五つ目の王冠」


アインが手を上げる。


空中に五つの王冠が現れた。


黒。


銀。


白。


青。


そして透明。


アリスが驚く。


「五つ……?」


アインは答える。


「この世界には、最初から五つの王冠が存在した」


「でも、どうして私たちは四人しか知らなかったの?」


「五つ目が消されたから」


ミナが尋ねる。


「誰に?」


アインはヨルを見る。


「彼に」


「……俺?」


ヨルの影が揺れる。


クロノスが現れる。


『違う』


アインが笑う。


「まだ嘘をつくんだね、クロノス」


クロノスは何も答えなかった。



第3話「クロノスの罪」


ヨルはクロノスを問い詰める。


「何を隠してる?」


『……』


「俺たちに言えないことなのか?」


クロノスは目を伏せる。


『百年前』


『いや――もっと昔』


『我々は、始原の王と戦った』


アリスが尋ねる。


「どうして?」


『アインは世界を終わらせようとした』


アインは否定しない。


「そうだよ」


ヨルが睨む。


「なんで?」


アインは答えた。


「世界は苦しみを繰り返すから」


「争い」


「憎しみ」


「悲しみ」


「それなら――」


アインは透明な王冠に触れる。


「最初から、何もなかったことにすればいい」



第4話「始原の力」


アインが指を鳴らす。


世界が一瞬で変わった。


ノクティスが消える。


学院が消える。


街も消える。


そこには何もない。


ヨルたちはただ、無の中に立っていた。


「……何をした?」


「戻しただけだよ」


アインが答える。


「世界が生まれる前に」


ヨルは拳を握る。


「ふざけるな!」


黒い夜が広がる。


だが。


アインが手を振る。


夜が消える。


「夜は僕から生まれた」


ヨルが驚く。


「だから僕には勝てない」


しかし。


アリスが銀の光を放つ。


「一人ではね」


銀の光が夜を包む。


ミナの白い光。


レイの青い光。


四つの力が重なる。


アインは初めて驚いた。



第5話「四王の誕生」


アインは過去を見せる。


世界が生まれたばかりの頃。


夜。


月。


生命。


朝。


四人の王が生まれた。


ヨルが尋ねる。


「俺たちは……どうして作られた?」


アインは答える。


「僕だけでは、世界を維持できなかったから」


「だから四人を作った」


アリスが聞く。


「私たちは道具だったの?」


「最初はね」


ミナが悲しそうに俯く。


だが。


アインは続けた。


「でも、君たちは僕の想像を超えた」


「自分で考え」


「自分で選び」


「自分で未来を望むようになった」


レイが言う。


「じゃあ……僕たちは」


「もう、あなたのものじゃない」


アインは静かに笑った。


「そうだね」



第6話「消された第五王」


アインが手を伸ばす。


透明な光が広がる。


そこに映ったのは――


五人目の王。


しかし。


その姿だけは、はっきりしない。


ヨルが尋ねる。


「誰なんだ?」


「《世界の王》」


アリスが息を呑む。


「世界の王……?」


アインは首を横に振る。


「違う」


「彼は僕より後に生まれた」


「世界を管理するために作られた存在」


レイが聞く。


「じゃあ、始原の王と世界の王は別?」


「そう」


アインは答える。


「僕は世界を作った」


「彼は世界を動かす」


ヨルの顔が険しくなる。


「じゃあ、今まで俺たちを操ってたのは……」


アインは答えなかった。



第7話「王の記憶」


突然。


四人の王冠が光る。


ヨル。


アリス。


ミナ。


レイ。


それぞれの過去が、一つに繋がっていく。


何度も生まれ変わるヨル。


何度もヨルと出会うアリス。


生命を守り続けるミナ。


朝を作ろうとするレイ。


そのすべてを――


一人の存在が見ていた。


ヨルが気づく。


「俺たちが転生してきたことも……」


アリスが続ける。


「永夜が始まったことも……」


ミナ。


「全部、誰かに仕組まれてた?」


レイが空を見る。


「じゃあ、暁神も……」


クロノスが呟く。


『……その可能性が高い』


アインが言う。


「ようやく気づいたね」



第8話「夜王の過去」


ヨルの前に、過去の自分が現れる。


黒い王冠。


黄金の瞳。


それは、かつての《夜王》。


「俺は……こんな顔だったのか」


過去のヨルが言う。


『世界を夜にする』


『すべての争いを終わらせる』


現在のヨルが問いかける。


「どうして?」


『誰も傷つかない世界を作るためだ』


「でも、それじゃ何も残らない」


過去のヨルは答えない。


やがて。


アリスの前に、過去の月姫が現れる。


彼女はヨルと戦っていた。


だが。


最後には剣を下ろす。


『あなたを倒すことは、世界を救うことじゃない』


『あなたを変えることが、世界を救う』


アリスは目を閉じる。


「……昔の私も、同じことを考えてたんだ」



第9話「始原の王の願い」


アインは戦うのをやめた。


「僕は世界を終わらせたいわけじゃない」


ヨルが驚く。


「じゃあ何なんだ?」


「最初からやり直したい」


「同じだろ」


「違う」


アインは空を見る。


「世界を作ったとき、僕は失敗した」


「なら――」


「次は失敗しない世界を作る」


ヨルは首を横に振る。


「そんな世界、作れるわけない」


「どうして?」


「失敗するからこそ、人は変われる」


アリスが頷く。


「過去は変えられなくても」


ミナ。


「未来は変えられる」


レイ。


「だから朝がある」


アインは黙った。



第10話「王冠の代償」


突然。


四つの王冠に亀裂が入る。


「うっ……!」


ヨルが膝をつく。


アリスも。


ミナも。


レイも。


アインが言う。


「王冠には代償がある」


「四人が完全に力を合わせれば――」


「王としての存在が消える」


ヨルが顔を上げる。


「また……犠牲か」


アインは答える。


「世界を維持するには必要だ」


ヨルは立ち上がる。


「違う」


「俺たちは――」


「誰かが消える未来なんて選ばない!」


黒い夜が爆発する。


アリスが続く。


「私も!」


ミナ。


「私も!」


レイ。


「僕も!」


四つの王冠が輝く。



第11話「始まりを超えて」


四人はアインと対峙する。


《夜》


《月》


《生命》


《朝》


四つの力が一つになる。


《四王・終夜共鳴》


アインは透明な王冠を掲げる。


《始原》


五つの力がぶつかる。


世界そのものが揺れる。


アインが叫ぶ。


「なぜ終わらない!」


ヨルが答える。


「俺たちが――」


「未来を選んだからだ!」


アリス。


「過去に縛られない!」


ミナ。


「今を生きる!」


レイ。


「明日へ進む!」


四つの光が透明な王冠を包む。


アインの力が崩れていく。


だが。


アインは笑っていた。


「……そうか」


「君たちはもう――」


「僕の作った王じゃないんだね」



第12話「始原の王」


透明な王冠が砕ける。


アインの姿が薄れていく。


ヨルが叫ぶ。


「待て!」


アインは振り返る。


「何?」


「お前は……消えるのか?」


アインは笑う。


「始まりは消えない」


「いつか、また何かが始まる」


そして。


最後にヨルを見る。


「君は夜」


アリスを見る。


「君は月」


ミナを見る。


「君は生命」


レイを見る。


「君は朝」


そして。


「四人で、この世界を選んで」


光が消える。


世界が戻る。


ノクティス。


学院。


街。


すべてが元に戻った。


そして。


空に太陽が昇る。


「……朝だ」


レイが呟く。


人々が歓声を上げる。


百年間、失われていた朝。


それが――


本当に戻った。


ヨルはアリスを見る。


「やっと見られたな」


「うん」


二人は空を見上げる。


だが。


クロノスは何も言わない。


ヨルが振り返る。


「クロノス?」


『……ヨル』


「何?」


『始原の王は――』


クロノスが空を見る。


『最後に、一つだけ嘘をついた』


「……?」


その瞬間。


空に巨大な亀裂が走った。


太陽の向こう側。


そこに――


巨大な瞳が開く。


『――世界は、まだ終わっていない』


クロノスが呟く。


『《世界の王》が目覚める』


ヨルは拳を握った。


「……なら」


アリスが隣に立つ。


「うん」


ミナとレイも並ぶ。


四人の王冠が輝く。


ヨルが笑う。


「今度も四人で行こう」



エピローグ ――朝の向こう側


初めての朝。


人々は太陽を見上げていた。


しかし。


誰も知らない。


太陽の向こう側。


世界の果て。


そこに一つの王座があることを。


王座に座る影が、ゆっくりと目を開く。


「始原の王が敗れたか」


その手には――


黒でも。


銀でも。


白でも。


青でも。


透明でもない。


未知の色をした王冠。


「ならば、僕が世界を統べる」


影が立ち上がる。


「夜王」


「月姫」


「白の王」


「朝の王」


そして――


「始原の王」


五つの王冠を見つめる。


「すべて、僕の世界のために」


その瞬間。


世界中の空に亀裂が走った。


太陽が一瞬だけ赤く染まる。


ヨルは遠くからそれを見ていた。


「……まだ終わってない」


アリスが言う。


「うん」


ヨルは笑った。


「だったら――」


「また戦おう」


夜と月。


生命と朝。


四つの王が、再び空を見上げる。


そして。


世界のどこかで――


五つ目の王冠が輝いた。


次巻予告


第5巻「始まりの夜」


始原の王との戦いは終わった。


そして。


百年間失われていた朝が戻った。


――しかし。


それは本当の終わりではなかった。


ヨルの影に現れた、見知らぬ王冠。


アリスに蘇る、さらなる過去の記憶。


ミナとレイが感じ取った、世界の異変。


そしてクロノスが語る。


「ヨル、お前は《夜王》ではない」


「お前自身が――《夜》なんだ」


明かされるヨルの本当の出生。


そして。


四人の王を生み出した《始原》よりも、さらに深い場所に存在する――


《世界の王》。


「僕は世界を壊すんじゃない」


「僕が――世界そのものになる」


朝が来た。


だが。


その朝の向こうには――


新たな夜が待っている。


『君と僕が統べる夜』


――世界の真実が、ついに動き始める。

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