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君と僕が統べる夜  作者: 愛猫


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第3巻「欠けた月」

プロローグ ――月が、欠けた日

第1話「第四の王」

第2話「朝の王」

第3話「暁神の残骸」

第4話「四王共鳴」

第5話「百年前の四人」

第6話「レイの記憶」

第7話「月の異変」

第8話「月姫」

第9話「夜王の真実」

第10話「最後の敵」

第11話「朝を選ぶ」

第12話「欠けた月」

エピローグ ――始原の王

プロローグ ――月が、欠けた日


百年間。


空に浮かぶ銀色の月は、一度も姿を変えなかった。


満ちることも。


欠けることも。


ただ世界を照らし続けていた。


それが――


《永夜》の象徴だった。


だが。


その夜。


月に、小さな亀裂が入った。


「……え?」


ノクティスの街にいた人々が、一斉に空を見上げる。


銀色の月。


その一部分が――


欠けていた。


そして。


世界中の王冠が同時に震え始める。


黒。


銀。


白。


青。


まだ存在しないはずの――


四つ目の王冠。


ヨルは胸を押さえた。


「……何だ、これ」


影の中からクロノスの声が響く。


『……始まった』


「何が?」


『第四の王だ』


その瞬間。


空から、一人の少年が落ちてきた。


白い髪。


青い瞳。


そして――


頭上に浮かぶ、青白い王冠。


少年はゆっくりと目を開ける。


そして呟いた。


「……朝を、知らないんだね」


ヨルは息を呑んだ。


「お前……誰だ?」


少年は答える。


「僕は――」


「《朝の王》」




第1話「第四の王」


少年の名前は――


白夜レイ。


年齢はヨルたちとほとんど変わらない。


だが。


彼は明らかに普通の人間ではなかった。


「俺たちの前に、四人目の王が現れた……」


ヨルが呟く。


アリスはレイを警戒して剣を構える。


「あなたは敵?」


「分からない」


レイは正直に答えた。


「僕自身、自分が何なのかよく分からないんだ」


ミナが近づく。


「でも、あなたから変な力を感じる」


「うん」


レイは空を見る。


「僕は――朝を持っている」


その瞬間。


空が一瞬だけ青く染まった。


人々が驚く。


太陽はない。


それでも。


確かに空が明るくなった。


ヨルは呟いた。


「これが……朝?」


レイは首を横に振った。


「違う」


「これは、朝の力の一部」


「本当の朝は――まだ来ていない」



第2話「朝の王」


レイは語った。


自分は目覚めるまで、ずっと暗闇の中にいた。


そこには一つの声があった。


『目覚めてはいけない』


『お前が目覚めれば、世界が壊れる』


その言葉だけを覚えている。


ヨルが尋ねる。


「誰の声だ?」


レイは首を横に振る。


「分からない」


その時。


クロノスが姿を現した。


『……レイ』


レイが驚く。


「君を知ってる」


『当然だ』


「どうして?」


クロノスは答えない。


アリスが問い詰める。


「クロノス。何を隠してるの?」


『……』


その瞬間。


レイの王冠が輝いた。


クロノスの表情が変わる。


『まさか……』


「何?」


『第四の王は――』


『《朝》そのものだ』



第3話「暁神の残骸」


その夜。


ノクティスに異変が起きた。


空から白い光が降り注ぐ。


人々の感情が少しずつ薄れていく。


「これは……!」


アリスが剣を抜く。


ヨルの影からクロノスが現れる。


『《暁神》の残骸だ』


「暁神は倒したはずだろ!」


『本体はな』


空に巨大な顔が浮かぶ。


かつてヨルたちが戦った暁神。


しかし。


今のそれは完全な存在ではない。


ただの残骸。


『朝の王を渡せ』


レイが震える。


「僕を……?」


『お前が存在する限り』


『世界は完全な朝を迎えられない』


ヨルは一歩前へ出る。


「だったら――」


「渡さない」



第4話「四王共鳴」


戦いが始まった。


ヨルの黒い夜。


アリスの銀の月。


ミナの白い生命。


レイの青い朝。


四つの力が初めて同時に放たれる。


《四王共鳴》


黒と銀。


白と青。


四つの力が重なり、巨大な光となる。


暁神の残骸が崩れていく。


『なぜ……』


『なぜ四人が揃っている……』


ヨルは叫ぶ。


「俺たちは、誰かを犠牲にするために王になったんじゃない!」


レイも続く。


「僕は朝を作る!」


アリス。


「私は月を守る!」


ミナ。


「私は生命を守る!」


そしてヨル。


「俺は――夜を守る!」


四つの王冠が輝く。


暁神の残骸は消滅した。


しかし。


その最後に残した言葉。


『……四人では……終わらない』


ヨルは眉をひそめた。


「何?」


『まだ――』


『《始まり》が残っている』



第5話「百年前の四人」


学院地下の禁書庫。


そこに、古い記録が残されていた。


アリスがページをめくる。


「……これ」


そこには四人の人物が描かれていた。


黒い王冠。


銀の王冠。


白い王冠。


青い王冠。


ヨルたちと同じだった。


しかし。


記録には奇妙な文章があった。


――四王は世界を守るために生まれた。


――だが、第四の王は存在しなかった。


レイが驚く。


「僕が……存在しなかった?」


クロノスが答える。


『正確には違う』


『存在を消された』


ヨルが聞く。


「誰に?」


クロノスは沈黙する。


そのページの最後。


黒く塗り潰された名前があった。


そこには――


《第五王》


と書かれていた。



第6話「レイの記憶」


その夜。


レイは夢を見た。


そこには――


百年前の世界。


四人の王がいた。


そして。


自分もいた。


「……僕?」


かつてのレイは、朝の王だった。


そして。


目の前にはヨルと同じ黒い王冠を持つ少年。


アリスと同じ銀の王冠を持つ少女。


ミナと同じ白い王冠を持つ少女。


四人は世界を守ろうとしていた。


だが。


朝を作るには、大きな力が必要だった。


レイは一人で決断した。


『僕が消えれば――朝が生まれる』


ヨルが叫ぶ。


『やめろ!』


だが。


レイは笑った。


『いつかまた会おう』


そこで夢は終わる。


レイは目を覚ました。


「……僕は」


「昔、一度……消えたんだ」


ヨルはレイの肩を叩く。


「今度は一人で消えるな」


レイが顔を上げる。


「……うん」



第7話「月の異変」


月の欠けが大きくなっていた。


アリスの力も急速に弱くなっている。


「月が……消えていく」


ヨルが心配する。


「アリス、大丈夫か?」


「うん」


そう答えながら。


アリスの手は震えていた。


月が完全に消えれば――


月姫の力も失われる。


そして。


永夜を支えていたものの一つが消える。


クロノスが言う。


『月が消える前に、《月姫》の力を完全に覚醒させる必要がある』


「どうすればいい?」


『記憶を取り戻せ』


アリスは目を閉じる。


そして。


最後の記憶が開かれる。



第8話「月姫」


アリスが見たのは。


過去の自分だった。


月姫。


彼女は夜王と共に、世界を守ろうとしていた。


しかし。


ある日。


夜王が暴走した。


世界中を夜で覆い尽くそうとしたのだ。


それを止めたのが――


月姫だった。


「私が……夜王を止めた」


アリスは呟く。


ヨルが答える。


「それは昔のお前だ」


「でも……」


「今のお前は違う」


アリスが顔を上げる。


ヨルは笑った。


「俺は今のお前を知ってる」


「だから、それでいいだろ」


アリスは涙を拭く。


「……ありがとう」


その瞬間。


銀色の王冠が完全に輝いた。


《月姫》覚醒。



第9話「夜王の真実」


クロノスが語る。


「ヨル」


「何?」


『お前は、かつて本当に世界を滅ぼそうとした』


ヨルは黙って聞く。


『夜王は、世界を夜で覆い』


『すべての争いを消そうとした』


『だが月姫は、それを止めた』


アリスが尋ねる。


「どうして?」


クロノスは答えた。


『夜だけでは、世界は生きられない』


『朝だけでも、世界は生きられない』


『月と生命が必要だった』


ヨルは拳を握る。


「じゃあ、昔の俺は間違ってた」


『そうだ』


「なら――」


ヨルは空を見る。


「今度は間違えない」


その言葉に。


クロノスは初めて笑った。


『それでいい』



第10話「最後の敵」


突然。


空が暗くなる。


太陽が消える。


月も消える。


そして。


巨大な存在が姿を現した。


『――ようやく、ここまで来た』


四人の王が見上げる。


それは暁神だった。


だが。


以前とは違う。


その姿は王冠を持っていた。


「……王冠?」


アリスが驚く。


暁神は言った。


『私は王ではない』


『私は――』


『《世界の王》』


四人が息を呑む。


『夜も』


『月も』


『生命も』


『朝も』


『すべて私が作った』


ヨルが叫ぶ。


「嘘だ!」


『ならば見せよう』


空に巨大な亀裂が走る。


その向こうには――


何もない世界。


始まりの前の世界が広がっていた。


『四人の王よ』


『お前たちは私が作った』


そして。


世界が揺れた。



第11話「朝を選ぶ」


レイの王冠が消え始める。


「僕が……消えれば」


「朝が完成する」


ヨルが振り返る。


「やめろ」


「でも――」


「絶対に駄目だ」


アリスも言う。


「誰か一人が消えるなんて、もう終わりにしよう」


ミナが頷く。


「四人でやればいい」


レイは目を見開く。


「四人で……?」


ヨルが笑う。


「俺たちは王だろ?」


「だったら――」


四人の王冠が輝く。


「一緒に世界を変える」


レイは笑った。


「うん」


「一緒に朝を見よう」



第12話「欠けた月」


四人が手を伸ばす。


黒い夜。


銀の月。


白い生命。


青い朝。


四つの力が重なる。


《四王・終夜共鳴》


巨大な光が世界を包む。


《世界の王》が叫ぶ。


『なぜだ!』


『お前たちは、私が作った存在だ!』


ヨルは叫ぶ。


「だったら――」


「俺たちが自分で選ぶ!」


アリス。


「過去じゃなく――」


ミナ。


「今を!」


レイ。


「そして――未来を!」


四つの力が一つになる。


《世界の王》の姿が崩れていく。


だが。


完全には消えなかった。


『……まだだ』


『世界には――』


『始まりがある』


最後の言葉とともに。


巨大な光が消える。


そして。


空に戻った月を見る。


月は元に戻っていた。


だが。


ほんの少しだけ――


欠けている。


ヨルが呟く。


「……終わったのか?」


クロノスが答える。


『いや』


『始まったんだ』


その瞬間。


月の欠けた部分から。


一筋の光が差し込んだ。


それは――


太陽の光だった。


「……朝?」


レイが呟く。


ヨルは笑う。


「まだ見たことないけどな」


アリスが空を見る。


「きっと、もうすぐだよ」



エピローグ ――始原の王


夜が明けようとしていた。


世界中の人々が空を見上げる。


だが。


ヨルだけは、自分の影に違和感を覚えていた。


「……何だ?」


影の中。


黒い王冠の隣に――


透明な王冠が浮かんでいる。


クロノスが息を呑む。


『……ありえない』


「何が?」


『これは《第五の王》じゃない』


ヨルが振り返る。


『もっと古い』


『もっと深い存在だ』


透明な王冠がゆっくりと回る。


そして。


世界のどこかで――


扉が開く音がした。


ゴゴゴゴゴ――


ヨルたちは一斉に振り返る。


空間に巨大な扉が現れる。


扉には一つの文字。


《始》


クロノスが呟く。


『……《始原の王》』


ヨルは拳を握る。


「また……王か」


アリスが隣に立つ。


「でも、今度も一緒だよ」


ミナとレイも並ぶ。


四人の王冠が輝く。


そして。


扉の向こうから声が響いた。


『――ようやく』


『四人の王が揃った』


『ならば――』


『次は、私の番だ』


扉が開く。


物語は――


さらに深い場所へ進んでいく。


次巻予告


第4巻「始原の王」


四人の王が揃った。


朝への光も見え始めた。


しかし。


ヨルの影に現れた――


《透明な王冠》。


それは、これまでの王とは違う。


世界が生まれるより前から存在していた王。


《始原の王》。


そして明かされる。


ヨルたち四人の王が、なぜ存在するのか。


なぜ永夜が始まったのか。


そして――


ヨルが何度も生まれ変わってきた理由。


「お前たちは、世界を守るために生まれたんじゃない」


「世界を――」


「選ぶために生まれたんだ」


夜。


月。


生命。


朝。


四つの王が、始まりの王と対峙する。


『君と僕が統べる夜』


――世界の真実が、今明かされる。

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