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君と僕が統べる夜  作者: 愛猫


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第2巻 「第三の少女」

プロローグ ――第三の鍵

第1話 「白雪ミナ」

第2話 「三人の王」

第3話 「白の王」

第4話 「夜教団」

第5話 「学院襲撃」

第6話 「偽物」

第7話 「王の資格」

第8話 「アリスの記憶」

第9話 「約束」

第10話 「永夜核」

第11話 「君を選ぶ」

第12話 「夜明けの光」

エピローグ ――四人目

プロローグ ――第三の鍵


第1巻の事件から、一か月。


世界はまだ、夜の中にあった。


巨大な銀色の月。


終わることのない夜。


そして、人々の影から生まれる夜獣。


何も変わっていない。


――ただ一つを除いて。


「……またか」


夜狩士養成学院。


屋上で、黒瀬ヨルは空を見上げていた。


彼の隣には、月城アリス。


二人の手には、黒と銀の紋章が浮かんでいる。


《月蝕契約》。


あの日、暁神と戦ったことで目覚めた力。


しかし――


あれ以来、ヨルは妙な夢を見るようになっていた。


暗闇の中。


誰かが自分を呼んでいる。


『――ヨル』


『――こちらへ』


そして最後には、必ず同じ言葉が聞こえる。


『三人目を探せ』


ヨルは頭を掻く。


「……意味わかんねえ」


アリスが尋ねる。


「また夢?」


「ああ」


「何て言ってた?」


「三人目を探せ、だって」


アリスが黙る。


その瞬間。


――ドン。


遠くで爆発音が響いた。


二人は同時に立ち上がる。


学院の外。


ノクティスの東地区から、黒煙が上がっている。


警報が鳴り響く。


《夜獣襲撃》


《東地区、壊滅的被害》


ヨルが走り出す。


「行くぞ!」


「待って!」


アリスも追いかける。


二人が東地区へ到着したとき。


そこには――


夜獣の群れがいた。


しかし。


様子がおかしい。


夜獣たちは誰かを襲っているのではない。


何かを――


守っている。


その中心に、一人の少女が立っていた。


白い髪。


白い服。


そして――


赤い瞳。


少女はヨルを見る。


「……やっと来た」


ヨルが警戒する。


「お前……誰だ?」


少女は微笑む。


「白雪ミナ」


そして。


彼女の影に――


白い王冠が浮かんだ。


「あなたたちの……三人目です」


第1話 「白雪ミナ」


学院に戻ったヨルたちは、ミナを取り調べることになった。


「私は敵じゃないよ」


ミナは椅子に座ったまま笑っている。


アリスが睨む。


「なら、なぜ夜獣に守られていたの?」


「私が命令したから」


「……夜獣を?」


「うん」


ミナが指を鳴らす。


窓の外にいた夜獣が、一斉に頭を下げた。


ヨルは絶句する。


「マジかよ……」


クロノスの声が響く。


『白の王』


ヨルの表情が変わる。


「クロノス。知ってるのか?」


『当然だ』


『彼女こそ、第三の王』


ミナが笑う。


「あなたの中にいる人、まだ全部は教えてくれてないんだね」


「どういう意味だ?」


ミナはヨルを見る。


「クロノスは、嘘をついてる」


第2話 「三人の王」


ミナは語る。


世界には三つの王位がある。


《黒の王》。


《月の王》。


そして――


《白の王》。


黒は「夜」。


月は「記憶」。


白は「生命」。


三つの王が揃えば、永夜を終わらせることができる。


だが。


そのためには一つの条件がある。


「三人のうち、一人が王位を捨てなければならない」


ヨルが尋ねる。


「王位を捨てる?」


「つまり……」


アリスが呟く。


「その人は、存在そのものを失う」


ヨルの顔が険しくなる。


「そんなの、誰が決めたんだ?」


ミナは答えない。


ただ静かに言う。


「百年前の私たち」


ヨルとアリスが凍りつく。


第3話 「白の王」


ミナは自分の過去を語る。


百年前。


彼女は《白の王》だった。


しかし、夜王と月姫とは違う。


白の王には、特殊な力があった。


――人間の生命を操る力。


傷を癒やすこともできる。


夜獣を生み出すこともできる。


そして――


死者の魂を呼び戻すことも。


「だから私は、暁神に狙われた」


ミナの表情が曇る。


「暁神は私の力を利用して、人間から心を奪おうとした」


ヨルが拳を握る。


「……またあいつか」


ミナは首を横に振る。


「違う」


「え?」


「暁神は、私たちを利用しただけ」


ミナが空を見る。


「本当の敵は――まだ眠ってる」


第4話 「夜教団」


その頃。


ノクティス地下。


《夜教団》の残党が集まっていた。


中央に立つ男。


名は――


黒崎レイヴン。


元・夜狩士。


現在は夜教団の新たな指導者。


「黒の王、月の王、白の王」


三人の名前を並べる。


「ついに揃った」


部下が尋ねる。


「では、殺すのですか?」


レイヴンは笑う。


「逆だ」


「彼らには、王として完全に覚醒してもらう」


そして。


巨大な装置が起動する。


《永夜核》。


「王たちが完全に覚醒したとき――」


「この世界は、本当の夜になる」


第5話 「学院襲撃」


夜。


学院が襲撃される。


敵は夜教団。


大量の夜獣が校内へ侵入する。


ヨルが戦う。


アリスも戦う。


ミナも戦う。


三人の力は圧倒的だった。


黒い影。


銀色の光。


白い炎。


しかし。


敵の中から一人の少年が現れる。


黒い制服。


銀色の髪。


ヨルと同じ金色の瞳。


「……お前」


少年は笑う。


「初めまして、黒瀬ヨル」


「誰だ?」


「君と同じ――」


少年の影から黒い王冠が現れる。


「《黒の王》だよ」


ヨルが凍る。


「……俺以外にも?」


少年は笑う。


「王は、一人じゃない」


第6話 「偽物」


少年の名は、神代カイ。


彼はヨルと同じ《黒の王》の力を持っていた。


だが、カイはヨルとは違う。


「僕は王になる」


「……」


「世界を支配する」


ヨルが尋ねる。


「何のために?」


カイは笑う。


「簡単だよ」


「夜なら、誰も僕を傷つけられないから」


ヨルは黙る。


その言葉に、どこか自分と似たものを感じていた。


カイが襲いかかる。


二人の黒い影が激突する。


アリスが援護しようとする。


だがミナが止める。


「駄目」


「どうして?」


「これは――ヨル自身の戦いだから」


第7話 「王の資格」


ヨルとカイの戦い。


力は互角。


しかし。


ヨルは勝とうとしない。


カイを殺すこともできない。


「どうして攻撃しない!」


「お前を殺したくないからだ」


「甘い!」


カイが怒りを爆発させる。


「王になるなら、すべてを捨てろ!」


ヨルは答える。


「嫌だ」


「……!」


「俺は王になりたいんじゃない」


「俺は――」


アリスを見る。


ミナを見る。


「こいつらと一緒に生きたい」


その瞬間。


ヨルの影から黒い王冠が現れる。


だが、今回は違った。


王冠はヨルの頭上に浮かぶのではなく――


ヨルの手の中へ落ちてきた。


クロノスが呟く。


『……王の資格を得たか』


第8話 「アリスの記憶」


戦いの後。


アリスが倒れる。


彼女の記憶が暴走していた。


百年前の記憶。


夜王。


月姫。


白の王。


三人が一緒にいた。


そして――


夜王がアリスに言う。


『俺が死ぬ』


月姫が答える。


『駄目』


『なら、君が死ぬ』


『それも嫌』


白の王――ミナが泣いている。


『……じゃあ、私が』


記憶が途切れる。


アリスが目を覚ます。


「……違う」


ヨルが尋ねる。


「何が?」


アリスは震えながら答える。


「百年前の私たちは――」


「誰か一人を殺すために戦ってたんじゃない」


「三人とも、生きようとしてた」


第9話 「約束」


ミナが二人に謝る。


「ごめんね」


「私、最初から知ってた」


「何を?」


「三人の王の運命」


ミナは涙を浮かべる。


「三人のうち、一人が消えれば永夜が終わる」


「でも――」


「本当は違う」


ミナは白い王冠を外す。


「王位を捨てる必要なんてない」


ヨルが驚く。


「じゃあ、何が必要なんだ?」


ミナは答える。


「三人全員が、自分の力を誰かのために使うこと」


「それが本当の条件」


つまり。


永夜を終わらせる鍵は――


犠牲ではなく、三人の意思だった。


だが。


そのとき。


地下から巨大な音が響く。


第10話 「永夜核」


ノクティス地下。


夜教団が《永夜核》を起動する。


都市全体の月が赤く染まる。


夜獣が大量発生。


レイヴンが叫ぶ。


「今こそ、王を完全に覚醒させる!」


ヨルたちの体から力が溢れ出す。


黒。


銀。


白。


三つの王冠が浮かぶ。


だが。


ヨルの意識が奪われていく。


『王になれ』


『世界を支配しろ』


『すべてを闇に沈めろ』


ヨルの瞳が金色に染まる。


「……俺は……」


アリスが叫ぶ。


「ヨル!」


ヨルは振り返る。


そこにいるのは――


夜王だった。


第11話 「君を選ぶ」


完全に覚醒したヨル。


圧倒的な力。


夜獣すら彼に従う。


レイヴンが笑う。


「素晴らしい!」


「これが、本当の夜王!」


しかし。


アリスはヨルの前に立つ。


「戻ってきて」


ヨルは答えない。


「ヨル!」


「……俺は」


ヨルの手に黒い剣が現れる。


「夜王だ」


アリスは剣を構える。


「なら――」


「私があなたを止める」


第1巻で交わした約束。


「もしあなたが本当に夜王になったら――私が殺す」


ヨルが笑う。


「……頼む」


アリスの目から涙が落ちる。


「嫌だよ」


「え?」


「そんな約束……もう嫌」


アリスは剣を捨てる。


そしてヨルへ手を伸ばす。


「私は、あなたを殺さない」


「あなたを――選ぶ」


その言葉で。


ヨルの目に光が戻る。


第12話 「夜明けの光」


永夜核が暴走する。


都市全体が崩れ始める。


レイヴンが叫ぶ。


「なぜだ!」


ミナが白い力を解放する。


「生命は、奪うものじゃない」


アリスが月の力を解放する。


「記憶は、消すものじゃない」


ヨルが黒い王冠を握る。


「そして、夜は――」


三人が手を重ねる。


「誰かを支配するものじゃない!」


三つの王冠が砕ける。


黒。


銀。


白。


三つの力が一つになる。


《三王共鳴》


永夜核が崩壊する。


夜獣たちが消えていく。


赤く染まっていた月が、元の銀色へ戻る。


そして――


ほんの一瞬。


空の彼方から、


小さな光が差し込む。


ヨルは目を見開く。


「……あれ」


アリスも空を見る。


「……光?」


ミナが微笑む。


「朝の……光」


しかし。


その光はすぐに消える。


完全な朝にはならない。


だが――


百年間、一度も存在しなかった「光」が確かにあった。


ヨルは笑う。


「見たか?」


アリスが頷く。


「うん」


「いつか、本物の朝を見よう」


「……三人で?」


ヨルは笑う。


「ああ」


ミナも笑う。


「約束だね」


その瞬間。


空に巨大な亀裂が走る。


そして。


そこから声が響く。


『――三王が目覚めたか』


三人が空を見上げる。


『ならば、次は――』


亀裂の奥に巨大な瞳が開く。


『《第四の王》を目覚めさせよう』


エピローグ ――四人目


事件から一週間。


ノクティス。


復旧作業が続いていた。


ヨル、アリス、ミナの三人は、学院の屋上にいた。


「結局、朝は来なかったな」


ヨルが呟く。


アリスが月を見る。


「でも……少しだけ見えた」


ミナが笑う。


「だったら、いつかきっと来るよ」


三人が空を見る。


その頃。


ノクティスから遠く離れた場所。


誰もいない廃墟。


一人の少年が目を覚ます。


白い髪。


青い瞳。


そして――


四つ目の王冠。


少年は静かに呟く。


「……僕を呼んだのは、誰?」


背後から声がする。


『君だよ』


少年が振り返る。


そこに立っていたのは――


かつて倒したはずの暁神。


『四人目の王』


『君が目覚めれば――』


『永夜は完成する』


少年の目が青く輝く。


そして。


世界で初めて――


月が欠けた。


次巻予告


第3巻「欠けた月」


百年間、決して満ち欠けすることのなかった銀色の月。


その月が、初めて欠けた。


そしてヨルたちの前に現れた《第四の王》。


彼の正体は――


「朝」を司る王。


だが彼は敵なのか。


それとも――


永夜を終わらせる最後の希望なのか。


そしてヨルは知る。


自分たち三人の王には、まだ隠された「四人目の約束」があることを。

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