軍師のスパルタ忍者塾と、全自動地形ハメ(概要)
「いいか、他種族連合の諸君。大前提として、正面から泥臭い肉弾戦など絶対にさせん」 魔改造された他種族連合の演習場。
私は大きな黒板の前に立ち、チョークで巨大な✕印を書き殴っていた。
「異界のバケモノどもは、呼吸するだけで周囲を汚染する生物兵器だ。近づいて剣で斬る? 返り血を浴びたらどうする? 息を吸ったらどうする? 泥泥の殴り合いなんてものは、知性のない木偶の坊がやることだ。我が軍の基本戦術は――【隠密一択(スパルタ+忍者)】。
絶対に当たらず、姿を見せず、完璧に受け止め、内側から一方的に暗殺する」
私の言葉に、エルフの総司令ガルディエル伯爵や、ドワーフの族長ブロッグ、さらにはライダースジャケットを羽織った古代竜オニキスまでが、真剣な目で黒板を凝視している。
「具体的には、風の精霊シルフの力とエルフの魔法を組み合わせ、音・匂い・生体の気配まで完全に遮断する【精神ステルス迷彩】を全軍に常時展開。万が一、広範囲攻撃が飛んできた場合は、人間の金(ツケ払い)で魔石をこれでもかと埋め込んだドワーフの大盾を並べ、すべての物理・魔法を百パーセント反射する【絶対防壁】を組む。ここまではいいな?」
「うむ……徹底した隠密と防衛。だがリク殿、それだけでは数万の大群を捌ききれんのではないか?」
ブロッグが髭をいじりながら尋ねる。
「だからこそ――【地形ハメ】と【クロスファイア(十字砲火)】を組み合わせる」
私はチョークで、戦場の立体図を描き出した。
「敵がどこを戦場に選ぼうが関係ない。どこに出現しようが、こちらの意図したキルゾーン(処刑場)へ完璧に誘導できる体制を二年間で構築する。極端に言えば、敵の兵種に合わせた自動ハメ殺しトラップの設置だ」
私は図面をトントンと指で叩いた。
「まず、巨体で重量のある汚染獣。あんなものは正面から受け止めるな。ドワーフの土魔法と人間の国費で買った爆薬をあらかじめ仕込み、通り道に超巨大な『落とし穴』を作って自重で潰せ。次に、空を飛ぶ飛行型のバケモノ。あいつらにはエルフの精密風魔法を網の目のように配置し、エリアに入った瞬間に自動で叩き落とす『局所的巨大竜巻』の檻を用意しろ」
「では、地中から潜り込んでくるタイプはどうするのだ?」 ガルディエル伯爵が身を乗り出す。
「水の精霊ミーナと植物の精霊フローラの出番だ。地面をあらかじめ、底の抜けた『ゲル状の底なし沼』に変化させておく。
地中を突き進んできたバケモノは、地上に出る前にその粘着ゲルに絡め取られ、身動きが取れなくなって窒息死する」
あまりにも冷徹で、悪魔的かつ合理的なハメ殺し戦術。
「そうして足止めし、身動きが取れなくなったバケモノどもを、死角からエルフの精密風刃とドワーフの結紮銃が『クロスファイア(十字砲火)』でミリ単位の血管を縛ってショック死させる。
……姿なき暗殺者(忍者)が、一歩も動かずに全自動で大群を『殲滅』する。これが二年間で我々が完成させる、究極の防衛システムだ」
演習場に、ゾッとするような静寂が落ちた。
他種族連合の将軍たちは、ゴクリと唾を呑み、戦慄の表情で黒板を見つめている。
『……おい勇者。お前、本当に人間か? 邪悪さの桁が、異界の連中より遥かに上な気がするのだが』
オニキスが引いた目で私を見つめ、シルフは「完全に悪の組織の作戦会議じゃない……」と頭を抱えている。
「褒め言葉として受け取っておくよ。……さあ、講義は終わりだ。他種族連合軍、これより二年間、死ぬ気でこの【地形ハメ暗殺連携】のスパルタ特訓を開始する! 人間の金で買い占めた最高級の栄養剤とプロテインは山ほどあるからな、全員死ぬ気で体へ叩き込め!」
「「「「はっ!!」」」」 エルフもドワーフも精霊も、私の怒号に応えて一斉に動き出した。
人間の財布という無限の燃料を注ぎ込まれ、他種族連合はただの軍隊から、最も効率的に命を刈り取る【全自動ハメ殺し要塞】へと変貌を遂げていく。
バカな王宮が「勇者様が素晴らしい防衛計画を進めておられる!」と貢ぎ物を送り続けている裏で、異界のバケモノたちを絶望のどん底へ叩き落とすための『最悪のチェス盤』が、完璧に磨き上げられていくのだった。




