248、新たな旅立ち
朝起きて、窓を開ける。
風が通り抜け、私の体を光が照らした。
「んーっ!」
私は大きく背伸びをする。
肩を回し、腰をひねる。
うん、いい感じ。
九星剣を腰に携え、お気に入りのポーチをつける。
最後に着替えなどの荷物を背負えば完璧である。
「いこう! 南デルパシロへ!」
南デルパシロへの交通手段は、徒歩と馬車があるが、私達は飛んで行った方が数倍も早い。
とりあえず徒歩で街の外へと向かおうと、検問所を通ろうとした。
するとそこで声をかけられる。
「南デルパシロへと向かうのか?」
「ああ、そうだが?」
アナスタシアがそう答えると、検問兵は険しい顔をしてしまう。
私たちが互いの顔を見やり、怪しんでいると、検問兵は小声で話し始めた。
「……行くのをやめた方がいい。これからすぐに戦争になる」
「知っている。知り合いに会いに行くだけだ」
「…………それでもだ。今年は南デルパシロが劣勢と言われているんだ」
私はその答えに首を傾げた。
「なんで、そんなことわかるの?」
「既に南デルパシロは包囲されつつあるらしい。本来ならここの先の草原が戦場になるんだが、何故か今年は違った。このままでは、南デルパシロの城下町が戦場になる可能性が高いだろう」
その情報は、既にナルリース達が集めていた。
事実、南デルパシロ方面に行く人は私達だけだ。
「なんで教えてくれるの?」
そういうと検問兵は照れたように軽く笑い、
「そりゃ……君たちは僕たち兵士の間でかなり噂になってるからね……」
……なるほど。
照れてる検問兵を見て私はすぐに理解した。
チラチラとアナスタシアのことを見ているので、きっと、そういうことなのだ。
「なに……噂だと? それはどういった噂なんだ! もしや私たちに害をなすことなのか!?」
アナスタシアが検問兵に詰め寄る。
検問兵は顔が真っ赤になりながら否定する。
「ち、ちちがいます! そういった事じゃなくて……」
検問兵が助けを求めるように、私に視線を送ってくる。
「ま、まさか、リーリアに対するものなのか!? ならば許さんぞ!」
アナスタシアは剣を抜く。
さすがに私も姉の暴走は見過ごせなかった。
「お姉ちゃん、ダメ」
怒ったように言うと、アナスタシアはしゅんとして、剣を収めた。
「うぅ、宿屋にいたときは、お姉ちゃんにすごく甘えてくれてたのに……悲しい」
シクシクと泣くアナスタシアを横目に、私は検問兵に話しかける。
「心配してくれてありがとう。でも私たちは行かないといけないから」
「そうですか……気をつけて、そしていつかまたここに帰ってきてくださいね」
「――うん」
――
南デルパシロはすぐに見えてきた。
実際は徒歩で1ヶ月、馬車で一週間の道のりだが、私たちは1日でたどり着いた。
南デルパシロ王国は、豊かな土地にあった。
北には大河が流れて、南には肥沃な土地。
中央には街道が通っている。
私たちは街道沿いを飛行して来たが、人が本当に少なかった。
通り過ぎる馬車は大きく揺れ、倒れそうなほどだ。急いでいるのがわかる。
途中、山賊らしき一団がみえた。
もしかしたら馬車はこの一団から逃げていたのかも。
アナスタシアが黙ってられず、山賊を蹴散らしていた。
……やっぱり戦争が近づくと、それに乗じて悪さをするやつがいるんだ。
お父さんも言ってた。人は追い詰められると本性を出すって。
…………お父さんのことを思い出して、少し胸が苦しくなる。
――ダメだよね。
私は追いかけるって決めたんだから。
「ここからは歩いていきましょう」
ナルリースがそう提案すると、みんなは地面に着地する。私も頭を振り、みんなに続く。
南デルパシロの北側には大きな川がある。
立派な橋を渡りながら、人々の様子を観察しようとした。
…………うん。
全然いない。
南デルパシロに入る人はおろか、そこから出てくる人もほとんどいない。
唯一出て来た人も、不安そうな表情をしている。
「本当に戦争が起こりそうな雰囲気ね」
ナルリースがいうと、シャロが頷いた。
「うん、僕の感がいってるねぇ。さっさと中央大陸に帰ろうって」
軽口を言いながらも警戒は怠っていない。
正直にいって、私も嫌な予感がしている。
いつもより口数が少ないまま、南デルパシロの検問所へとたどり着く。
そこにいた兵士は私たちを見て驚いている。
「もしかしてあなたはリーリア様では?」
その言葉を聞いた瞬間、私たちは警戒モードとなる。
腰の剣に手を添えて様子を窺った。
すると、兵士は慌てて手を振った。
「ああっ! 違うのです! 魔王サリサ様から貴方たちがきたら城まで案内しろと言われているのです」
「なんで私をリーリアだと思った?」
「それは……」
兵士は私たちを4人を見渡して言った。
「美しい女性が2人と、可愛らしい女の子が2人の4人組と聞いてましたので……」
私は納得すると剣から手を離した。
しかし1人だけ納得してない者がいた。
「……僕はリーちゃんと同じ分類なんだねぇ……分かってはいたけど……なんか、納得できない……」
シャロのぼやきは虚空に消えていった。




