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叶意の具現者  作者: 32Q2


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第三話

 そして予定当日、七海に連れられて、目的地まで二人で歩いていた。


「セレクトショップって初めて」


「そうでしょ!私もこの前は初めて行ったんだけど、店長がイケおじでびっくりで」


 相変わらずの七海を見て、涼香はやっぱり来て正解だなと歩く足も軽やかになった。


「なにそれ。でもそれはちょっと気になるかも。」


 今日は精一杯気分転換しようと改めて決めた涼香は会話に乗り、目的地まで七海との会話を楽しむのだった。


「着いたよ。ここが目的地」


 そう七海から言われ涼香が目にしたのは古民家だった。表はガラス張りで中が見える様になっていて改装したのだろう。造りは古いが中は広そうに見え入り口には『セレクトショップ叶』と書いてあった。


「おはようございます。店長いますか?」


 七海を先頭にお店に入ると、店内は古い木製の椅子や財布、誰が買うのかと外国製のお面など様々なものが置かれていてセレクトショップ初体験の涼香にとっては新鮮だった。


「こんにちは、いらっしゃい」


 奥の方から低音の声が聞こえ、パーマを七三分けにし、口ひげを少々蓄えたエプロンを着た男性が現れた。おそらく店長なのだろう。七海は颯爽と近づいて話始めた。


「この前のお守りのおかげで点数上がりました。ありがとうございます。」


「それはよかった、丁寧に作ってたもんね」


 自分と七海のイケオジ像に少しずれがあったためか、楽しく話をする七海の事をよそに店内のものを見ていた。


「それで、後ろの方はお友達かな?」


 いきなりの事でびっくりした涼香は、思わず姿勢を正し、男性の前へ行き少し頭を下げた。


「この娘は、幼馴染の涼香。それで店長、お願いがあるんですけど、この前のお守り作りのワークショップやらせてもらえませんかね?」


 店長は、少し考えた後、奥の部屋をのぞきこちらに帰って来た。


「予定にないけど今日も暇だと思うし、いいよ」


 その言葉を聞いた涼香は、七海の言う噂ってどうなのかと不安になっていた。


「じゃあ、ちょっと用意するから待っててね」


「やったー。ありがとうございます。涼香入ろう」


 先ほど店長がのぞきこんだ部屋に七海と入って行くと、室内は机と裁縫道具がおかれているだけのシンプルな部屋だった。


「作成の手順はこんな感じ。それじゃあ、たまに見に来るけど、困ったら声を掛けてね」


 店長の説明を聞き、家庭科の授業でやった範囲内だという事に安心して早速ハサミを持った。


「あー、大事な事を言い忘れてた」


 部屋を出た店長が、すぐに帰って来たのでおもわず手を止め、店長の方を向いた。


「物には念が宿るからね、ちゃんと願いや、祈りを込めて丁寧に作るんだよ」


 笑顔でそういうと店長はまた部屋から出ていった。父や母の顔が思い浮かんだ。そして、ここに連れて来てくれた七海の顔を見た。目の前にある赤色の無地を手に取りハサミを入れる刃先が揺れ、自分の心を写している様だった。それとは対照的に、元気よく返事をした七海は勢いよく布を切り始めていた。


 制作を開始してから、店長の言葉がどうも心に残っていて手元に気を付けながら父や母の事を考えていた。


「可愛いお守りじゃん。何をお祈りしたの?」


もうすでに、七海の目の前にはもう完成間近のお守りが置いてあった。


「もちろん勉強の事。あと最近の悩みとか」


勉強で悩む涼香のためにと、七海がこの店に連れて来てくれたのは理解していた。しかし、手元に集中していたためか何とも曖昧な返事をしてしまった。


「えっ、涼香。好きな人でもできたの?」


その言葉にびっくりして思わず顔を上げてしまった。目の前の七海は、優しいまなざしで頬杖をつきながら完成間近のお守りを手に取り眺めていた。


「違うわよ。それなら、七海はどうなのよ?」


「私は違うわよ。これはね……」


そういいながら七海は、優しい笑顔を浮かべながら再度お守り作りに集中し始めた。


「二人ともお疲れ様。宮本さんは、前より上手にできたね。橘さんも初めてに見えないくらい綺麗な出来栄えだ。」


七海は緑色で毘沙門亀甲文様、涼香は赤色で無地のお守りを作成した。初めてだからと柄までこだわらなかったが完成してみると、愛着がわいてきて少し後悔するのだった。それとは反対に、七海は二回目という事もあってか、柄は前回と違うものになっていて、完成したお守りを手に優しい笑顔をしていた。


「ありがとうございました。叶うといいね。頑張って」


店長からの言葉に、七海と御礼を行ってお店を後にした。


「さぁて、七海。次はどこにする?」


作ったお守りを大事にカバンにしまい、じゃんけんで決めた次の目的地のクレープ屋に行くのだった。お店に入る時とは違い、足も軽やかで、カバンを掛けた左肩も少し軽いような気がした。

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