3 消えた辞職願
(もう我慢の限界だ……早く……早く『ガルディア使節団』とかいう奴らを追い返して、速攻で辞職願を叩きつけてやる!)
自室に帰ったユージンは、時間のない中で必死に書き溜めて入れておいた厚みのある辞職願を取り出そうと執務室の引き出しを開けた……。
「……‼」
ない……。念のために作った予備すらも辞職願は全て消えさり、代わりに真っ赤なバラの花が一輪。
『お仕事ご苦労様 愛をこめて レティシア』のカードが一枚。
(……ちくしょう!あの女にまんまとやられたっ!)
詩を詠まされそうになった時に、引き出しから取り出した辞職願を、レティシアはしっかり見ていたのだった。彼が辞職願に費やした時間は全て……無駄になってしまったということだ。
ユージンの恐ろしく静かなる怒りは収まるはずがない。……そこへモランが、静かに入って来た。
「おお、お身体の変化が……丁度良い具合に現れましたな」
『ゼノス再来』……収まっていた体の変化が静かに高まってゆく。瞳の色、体中の刺青、オーラが変わる……。
「姫様のお部屋は修復工事を急がせておりますが、謁見室の惨状はそのままにしておきましょう……全てあなたがされたことにするのです。……先般、あの大きな評議会場を破壊し床の大理石を粉砕した時のように……ああ、あの時は全てを謀反貴族全員に賠償させましたから、貴方の責任ではありませんでしたね。……うむ、良かったですね、終身雇用にならなくて」
「……ぐっ……」
相変わらず、口の悪いモランである。
「……モラン、それなら、その謁見室を壊した張本人の『あれ』(レティシア)に『魔王』を演じてもらった方が早いと思うぞ」
「そんな吞気なことを言っている場合ではありませんぞ。いいですか?ガルディアは本気でこの国を獲りにかかってきています。……アルベール殿、エレナ殿……そして養成所がこれからどうなるか……」
ユージンにとっては、人質に取られているようなものである。
「相変わらずだな……じいさんは」
ユージンは苦笑いをした。
「……『魔王』を演じて……俺は本当に養成所に帰ることが出来るのか……?……なあ、モラン。俺の仕事は『あれ』の専属騎士だったよな?……それも一兵卒の……」
「そうでしたっけ?……そういう話もあったかもしれませんなぁ」
「……はぁ……ちくしょう……」
モランの惚ける仕草に、溜息しか出ないユージンであった。
話がどんどん進んできました。




