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剋生の孔雀  作者: 氷炎
新しい世界 定めた目標

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Ep.8 魔法創造 ― 最初の構築式

 


(たぶん後でマッチーと合流することになるんだろうけど、一旦ここから離れよう。……さっきからチャットログ、ちょっとうるさいや)


 この建物の中も少し見て回りたい気はした。けれど、それは今でなくてもいい。エーテルはまず、この喧騒から離れることにした。


(ナナミ、聞きたいことがあるんだけどいいかな?)


『はい、なんでしょうか?』


 思考で呼びかけると、ナナミは間を置かずに返してくる。その反応の速さにひとまず安心する。利用規約の内容を思い出せば、ナナミは今この瞬間も、行動を記録し続けているのだろう。


(魔法を作りたいんだけど、どこか適した場所はある?)


『中枢域にある結晶柱へアクセスすることで、闘技場への転移が可能です。転移後、南へ進むと、少し歩いた正面に訓練場がございます。なお、結晶柱へのアクセスは現地点からでも行えます』


(そこなら、誰にも邪魔されずに魔法を作れるのかな)


『はい。訓練場は特殊インスタンスエリアとなっております。隔離された個別空間へ移動し、MP自動回復が付与されます。訓練場内では、一分でMPが最大値まで回復いたします。ただし、訓練場内では経験値の取得は一切ございません。ご留意ください』


 《ES》では、基本的にHPもMPも自然には回復しない。


 HPを戻すなら、回復魔法か魔法薬。MPは魔法薬で補うしかない。そこで関わってくるのが食事アイテムだった。


 このゲームには空腹や水分のステータスがない代わりに、食事アイテムを使うと、ゲーム内時間で二時間、HPとMPの自動回復効果がつく。その効果が切れている間は、時間経過だけではHPもMPも戻らない。


 しかも食事アイテムだけは、【相生】【相剋】に関係なく、全プレイヤーがマイナス補正なしで作れる。さらに、作成者の五行属性に応じた能力上昇効果までつく。たとえば火属性を持つプレイヤーが作ったものなら、筋力に補正が入るという具合だ。


 ただし効果は重複せず、後から食べたものに上書きされる。


(じゃあ、とりあえず訓練場に行こうかな。《ES》って、魔法は自分で作るか、誰かに教えてもらうしかないしね。戦いながらでも作れないことはないんだろうけど、先に作っておくのは大事だよね)


『おっしゃる通りかと思われます』


(さっさと訓練場に行って、マッチーから返信が来るまでに、魔法作成をぱぱっとやっちゃおう)


 ナナミの案内通り、今いる建物の中心にある結晶柱へアクセスする。すると、転移可能施設の一覧に闘技場が表示された。たぶん探索を進めるごとに、こういう行き先も増えていくのだろう。


 エーテルはUIから「闘技場に転移する」を選ぶ。



 一瞬の浮遊感のあと、目の前の景色が切り替わる。


 そこには闘技場があった。少し見て回りたくなるが、今は魔法作成が先だ。エーテルは気を切り替えて、背を向ける。


 歩き出してすぐ、『訓練場はこちら』と書かれた看板が目に入った。案内に従って進むと、大きな扉がある。その前には、兵士らしい姿の男が立っていた。


「こんにちは。ここが訓練場であってますか?」


「やあ、こんにちは。異邦人の方かな? ここが訓練場で間違いないよ。利用するのかい?」


 声をかけると、兵士は人当たりのいい笑顔で返してくる。


 異邦人というのは、この世界でのプレイヤーの呼び方らしい。


「入場料って必要ですか?」


「いや、無料で使えるぞ」


「そうなんですね。じゃあ、訓練場を利用したいです」


「訓練場の中では怪我はしないが、普通に時間は進むからな。夢中になりすぎないようにするんだぞ?」


「はい、説明ありがとうございました」


 エーテルが軽く会釈をすると、兵士も気持ちよく手を振り返してくる。こちらもそれに小さく手を返してから、門へ触れた。


 目の前に『訓練場へ入場しますか?』というUIが出る。


 エーテルが(はい)を選ぶと、軽い浮遊感とともに視界が暗転した。



 暗さが晴れる。


 そこには、半径五十メートルほどの空間が広がっていた。中央より少し奥に寄った位置に、かかしが十体、ボウリングのピンみたいに並んで立っている。どう見ても的だ。


「よし、作るとしますか」


 《ES》では、魔法はすべてプレイヤーが作る。


 それは事前公開されていた情報の中でも、かなり印象に残っていた要素だった。


 魔法は、効果と規模によって消費MPが変わる。しかも、その二つが大きくなるほど、必要なMPは加速度的に跳ね上がるらしい。


 だからエーテルは、どの属性で何を作るか、ほかのゲームで触れてきた魔法を下敷きにしながら、ある程度は前から考えてきていた。


 自分が持っている魔法系統は、金、雷、水、氷、木、風の六つ。


 とりあえず、一系統につき二つずつ作る。それを目標にする。マッチーから返信が来るまでを、いったんの区切りに決めた。


 魔法を使うには、必ず詠唱がいる。詠唱のあとに魔法名を口にして、そこで初めてMPが消費され、現象として発現する。


 MPが足りなければ、魔法は発現すらしない。ただ不発に終わる。それ自体が、このゲームではかなり大きい隙になる。


 なら対人戦では、存在しない詠唱をあえて口にして揺さぶるような駆け引きも出てくるのだろう。そういう使い方まで含めて、この仕様は面白い。


 詠唱省略も、無詠唱もない。


 それもまた、《ES》らしい特徴のひとつだった。


 この、エピソード後から投稿を隔日投稿とします。

投稿時間は、20時半を予定しています


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