Ep.4 アバター作成 ― 新しい器
「ひとつ質問があるんだけど、先に聞いていいかな?」
『もちろんでございます』
ここまでの説明で、まだ出ていない要素がひとつあった。ゲームなら、たいてい最初に気になる部分だ。
「ステータスってあるのかな? 今までの説明だと、その話が出てなかったけど」
『はい。ステータスは存在いたします』
「詳細を教えてくれる?」
ステータス。ゲームの中での身体能力や適性を数値として扱うものだ。人によっては、そこが一番大事だと考えるくらいには、基本になる要素でもある。
『まず、《Elemental Shadows》には、HP・MP・筋力・頑強・柔軟性・魔力・精神の七つのステータスが存在します。筋力・頑強・柔軟性・魔力・精神を基本ステータスとし、HP・MPは対応する基本ステータスをもとに内部算出されます。ただし、実数値は公開されません。システムUI上では、HPは緑色のバー、MPは青色のバーで表示され、現在の残量を把握する形式となります』
「HPとMPは、数値そのものは見えないんだね。わかった。それに、柔軟性があって、素早さや知力がないんだ。珍しいね」
『はい。柔軟性は、現実では思考や身体の柔らかさを指すことがありますが、《Elemental Shadows》では、アバターの操作性と、アバター自体の身体の柔軟性を数値化したものです。この値が低い場合、アバター操作時の反応にも影響いたします』
説明を聞いて、双葉は素直に頷いた。確かに、単に速く動けるかではなく、どれだけ扱いやすいかに寄せた数値なのだと考えるとわかりやすい。
『また、素早さは筋力による瞬発的な出力と近く、知力はその人物の知識量や思考力そのものを数値化する性質が強いため、《Elemental Shadows》では採用されておりません』
「なるほど、納得したよ。説明ありがとう」
礼を言うと、ナナミはわずかに表情をやわらげた。
『……それでは、説明を続けます。《Elemental Shadows》にはさまざまな種族が存在します。種族ごとに初期ステータスの配分は異なりますが、基本ステータス五項目の合計値は、どの種族も五十で統一されています。また、レベルアップ時の自動振り分けにも差異があります』
「ほうほう」
『自動振り分けされるステータスは、各種族において初期値が高い二項目に対して、それぞれ一点ずつ付与されます。さらに別枠で、任意振り分けポイントを八点獲得します』
ということは、レベルアップごとの上昇量は合計で十になるらしい。双葉は頭の中でざっと計算した。
『また、所持している魔法系統に対応したステータスには、追加の補正がございます』
「魔法系統でも補正があるんだ。補正値の詳細って見せてもらえる?」
『はい。魔法系統によるステータス補正を確認いたしますか?』
「うん、おねがい」
双葉が頷くと、目の前に【相生】と【相剋】の魔法系統が一覧で表示された。その横に、対応するステータスへのプラス補正が並ぶ。
双葉に付与された系統で見ると、金は筋力と魔力。雷も筋力と魔力。水は頑強と精神。氷は頑強と魔力。木は柔軟性と精神。風は柔軟性と魔力。
頭の中で順に足していく。筋力が二。頑強が二。柔軟性が二。精神が二。魔力は四。
どの項目にも補正は入っているが、ひときわ大きいのは魔力だった。
『これらの補正値が各種族の基本値に加算され、アバターの初期ステータスとなります。さらにレベルアップ時には、対応する補正値がそのまま加算されていきます』
「……ほぇ~~~」
思わず間の抜けた声が漏れた。
普通のプレイヤーなら、所持する魔法系統は四つだ。補正は合計で八。そこにレベルアップ分の十が乗るなら、上昇量は十八になる。けれど、自分は六系統ある。補正だけで十二。合計では二十二だ。
レベル1の時点でも差があり、レベルが上がるごとに開きは広がっていく。そう考えた瞬間、さすがに頭が追いつかなかった。
「『十二影座』……強すぎない?」
『その疑問は自然なものだと思います。ただし、そこには明確な制約もございます。『十二影座』は、最大でも十二人しか存在いたしません』
「……そっか。プレイヤーはもっとずっと多いんだ」
一人ごとの性能では、『十二影座』が強いのだろう。けれど、それで全体が覆るとは限らない。
『その通りでございます。ステータス差があっても、数は大きな力になります』
双葉は、ナナミの番号を思い出す。No.773。その数字が単純に割り振られた順番だとしたら、自分より前にこのゲームを始めた人が、少なくとも七百七十二人はいることになる。
もちろん、一度にその全員と向き合うわけではない。けれど、数の差がどれだけ大きいかを考えるには、それで十分だった。
「……なら、補正値がこれだけ大きいのも納得したよ」
『ご理解いただけたようで何よりです』
双葉はひとつ息を吐いて、気持ちを切り替える。
「よし。アバター作成といこうか」
今度は少しだけ声を張ってそう言い、続きを促すようにナナミを見た。




